牛乳やヨーグルトが糖尿病や高血圧のリスクを低下? 糖尿病の人の乳製品の上手なとりかた
牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品には、タンパク質、脂肪、ミネラル、ビタミンなどが多く含まれる。
日本人を対象に行われている多目的コホート研究である「JPHC研究」では、乳製品を食べる習慣のある男性は、全死亡と循環器疾患の死亡リスクが低いことが明らかになっている。
乳製品に含まれるカルシウム、リン、カリウムなどのミネラルの働きや、乳製品由来活性ペプチドの血圧を上昇させる酵素を阻害する働きなどが影響していると考えられるとしている。
乳製品をとる習慣のある人は糖尿病や高血圧のリスクが低い
乳製品をとる習慣のある人は、糖尿病や高血圧のリスクが低く、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを高めるメタボリックシンドロームのリスクも低いことが、大規模な国際研究でも明らかになった。研究成果は、「BMJ Open Diabetes Research & Care」に発表された。
研究グループは、アルゼンチン・ブラジル・カナダ・中国・インド・マレーシア・フィリピン・ポーランド・南アフリカ・サウジアラビア・スウェーデン・トルコ・アラブ首長国連邦などの21ヵ国の、35~70歳の成人11万2,922人を対象に調査した。
対象者の過去12ヵ月の食事を調査し、▼血圧[130/85mmHg以上]、▼ウエスト周囲径[男性:94cm以上、アジア人では90cm以上]、低HDLコレステロール[40mg/dL未満]、高中性脂肪(トリグリセリド)[150mg/dL超]、高血糖[空腹時血糖値が100mg/dL以上、あるいは経口血糖降下薬の服用]などのデータとの関連を調べた。
その結果、乳製品を1日2サービング以上食べている人は、高血圧のリスクが11%低く、糖尿病のリスクが12%低く、メタボリックシンドロームのリスクは24%低いことが示された。
「今回の研究は観察研究であるため、因果関係を特定することはできませんが、乳製品の摂取が、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、さらには心血管疾患のリスクの減少と関連していることが、欧米人だけでなくアジア人なども含めた大規模な国際的な調査で示された意義は大きいです」と、研究者は述べている。
ヨーグルトを食べる習慣は血圧などの低下と関連
ヨーグルトを食べる習慣が、血圧などの低下と関連していることは、南オーストラリア大学などの研究でも示されている。
「ヨーグルトなどの乳製品には、カルシウム、マグネシウム、カリウムなど、血圧の調節に関係するさまざまな栄養素が含まれており、血圧を下げる効果を期待できます」と、同大学で栄養学と心理学を研究しているアレクサンドラ ウェイド氏は言う。
米国のニューヨーク州で実施されているコホート研究に参加した地域住民915人を対象に調査した。うち564人が高血圧だった。
その結果、ヨーグルトを食べる習慣のある人は、食べない人に比べて、血圧値が約7ポイント低いことが分かった。
「ヨーグルトには、血圧を下げる代謝物をつくる細菌が含まれているという報告もあります。ヨーグルトの潜在的な効果を検証するために、さらに詳しい調査を行う必要があります」ウェイド氏は述べている。
乳製品に含まれる飽和脂肪酸などによる良くない影響により、カルシウムなどの死亡リスクを低下させる栄養の影響が打ち消された可能性が考えられるという。
また、牛乳やヨーグルトなどには、乳糖由来の糖が含まれているため、血糖値に影響を与える。
英国糖尿病学会(Diabetes UK)などは、牛乳コップ1杯(200mL)、あるいは無糖のヨーグルトを1杯(125g~150g)を、1日に3回まで摂取するのは、飽和脂肪酸や糖質などのとりすぎにはならないとしている。
英国糖尿病学会は、「ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品は、2型糖尿病のリスクを減らすことが、いくつかの研究で示されています。また、牛乳やヨーグルトにはカルシウムが豊富に含まれ、骨や歯を丈夫にする効果があります」と説明している。
「ただし、乳製品が体に良いからといって、大量にとると肥満の原因になる可能性もあります。肥満は2型糖尿病の重要なリスク要因になります。乳製品と体重の増減の関連を調べたこれまでの研究では、異なる結論が出ているため、乳製品が減量あるいは体重増加と関連していると断言する十分な証拠がありません」。
「健康的な体重を維持するために、健康的でバランスのとれた食事をとることが重要です。乳製品を適度にとる習慣を、2型糖尿病のリスクを軽減する、バランスのとれた食事の一部にすることは可能です。脂肪分や糖分が添加されていないヨーグルトなどを選ぶことも大切です」としている。