ホテルから「バスローブ会見」で停職6カ月+2階級降任は重すぎる?秋田県職員への懲戒処分の妥当性を検証
その処分は妥当だったのか。
報道機関向けのオンライン説明会にバスローブ姿でたばこを吸いながら出席し、その後の県の聞き取りにも虚偽の説明をしたとして、秋田県は8月14日、産業労働部の企業誘致推進監だった男性職員を停職6カ月の懲戒処分とし、あわせて主幹に2階級降任させた。
「停職6カ月は重すぎるのではないか」「管理職なのだから当然だ」。処分をめぐって、SNSではさまざまな意見が飛び交っている。
一般的な公務員の懲戒処分のルールに照らして、今回の処分をどう考えればいいのか。また、本人が処分に納得できない場合、どのような手段で争うことができるのか。
自治体内弁護士としての勤務経験があり、行政実務にくわしい中村健人弁護士に聞いた。
問題となった説明会は8月6日、県内で計画されている大規模なデータセンターの整備について開かれたもの。
男性職員は当初、県の聞き取りに「体調不良で自宅にいた」などと説明していたが、映像がネット上で拡散し「ラブホテルではないか」との指摘が相次いだことから、県が再調査した。
河北新報(8月14日付の記事)によると、実際にいたのは秋田市内のホテルで、隣に映り込んだ人影は配偶者ではなく、不倫相手の女性だったとされる。男性は「うそをついても判明することはないだろうと思った」と話したという。
処分をめぐっては「停職半年は重すぎる」「私生活まで処分の材料にするのはおかしい」といった声がSNSで上がる一方、「聞き取りに嘘をついたのなら妥当」「管理職なのだから責任は重い」といった受け止めもみられる。
報道によると、県は処分にあたり、県民の批判を招いて社会的に大きな影響を及ぼしたことや、聞き取りに虚偽の説明をしたことなどを考慮。前橋市長のラブホテル面会問題なども参考にして、処分の量定を決めたという。
河北新報によると、県には8月14日朝の時点で145件の苦情や問い合わせが寄せられていたという。
一方で、国家公務員を対象とする人事院の「懲戒処分の指針」が示す標準例では、「虚偽報告」も「勤務態度不良」も減給または戒告とされている。今回の「停職」はそれより重い処分にあたる。
では、今回の処分をどう考えればよいのか。
──全体として、今回の停職6カ月と2階級降任という処分は、妥当な範囲に収まっているでしょうか。それとも重すぎる、あるいは軽すぎると考えますか。
懲戒処分や降任処分の内容の選択については、任命権者の裁量の余地が比較的大きい分野であると言えます。もちろん、その裁量は無制限ではなく、前提となる事実関係を踏まえて、妥当な範囲であることが求められます(比例原則)。
よって、懲戒処分の内容の妥当性については、具体的な事実関係によって判断されるべきこととなり、事実関係の詳細がわからない第三者が判断することは難しいと言えます。
以上のことが前提とはなりますが、具体的な事実関係に基づき、影響などを総合的に勘案して今回のような処分をしたのであれば、それが重すぎるとか軽すぎるといったことにはならないだろうと思います。
──人事院の指針では、「虚偽報告」も「勤務態度不良」も、標準例は減給または戒告です。今回はそこから一段上の停職、しかも条例上の上限とされる1年の半分にあたる6カ月でした。
国家公務員を対象とする人事院の指針は参考にはなるものの、今回のケースは自治体職員の懲戒処分であり、あくまでその自治体が定めた指針・方針によって判断されるべきものです。
こうした自治体の指針・方針には、その自治体が定める標準例に基づいて処分の加重・軽減事由が定められていることがあり、今回の事案について、その加重事由に該当するということであれば、標準例に照らして重い処分がされることもあり得ると思います。
──報道によると、県は「県民の批判を招き社会的に大きな影響を及ぼした」ことを理由に挙げ、苦情が145件寄せられたことも公表しています。SNSでの拡散規模や苦情件数といった、行為そのものとは別の事情を量定に反映させることは、法的に許されるのでしょうか。逆に、同じ行為でも拡散しなければ軽い処分で済むということになれば、公平性の面で問題は生じないでしょうか。
地方公務員には、その職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならないという、いわゆる「信用失墜行為の禁止」に関する服務規定があります(地方公務員法33条)。
社会的に大きな影響を及ぼすということは、こうした信用失墜の程度が相対的に大きくなる可能性が高いことを意味します。
その意味では、社会的に大きな影響を及ぼしたことは、懲戒処分の加重事由として考慮され得ることになります。
なお、この点はあくまで加重事由であって、拡散しなければ軽い処分で済むという、逆方向の意味は持たない(=逆もまた真なりとは言えない)ことには留意が必要です。
──ところで、同じ行為について停職6カ月と2階級降任をあわせておこなうことは、実質的な二重処分にあたらないのでしょうか。
停職処分は地方公務員法29条に基づくものであり、降任処分は同法28条に基づくものであって、その趣旨および要件を異にします。
今回の各処分は、同じ行為に起因していますが、形式的には上記の通り根拠条文が異なりますし、実質的に見ても、停職と降任は性質が異なるため、二重に処分しているということにはならないだろうと思います。
この点については、刑事事件における「二重処罰の禁止」(憲法39条)とは意味合いが異なる点に留意が必要です。
──男性職員が処分に納得できない場合、どのような手続きで争えますか。実務上の注意点もあわせて教えてください。
県人事委員会への審査請求が考えられます(地方公務員法49条の2第1項)。
一般的な法的手段としては審査請求のほか、行政事件訴訟が挙げられ、多くの場合、いずれの方法を選択するかは自由です。
今回の場合、原則として、先に審査請求をして、その結論(裁決)が出た後でなければ、訴訟提起することはできません(地方公務員法51条の2・審査請求前置主義)。
また、男性職員が審査請求をする場合、今回の処分があったことを知った日の翌日から起算して3カ月以内にしなければなりません。
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