TSMCの特例措置を米政府撤回、中国への半導体機器出荷に不確実性

米政府は中国本土への半導体関連機器出荷に関し、台湾積体電路製造(TSMC)に付与していた特例措置を撤回した。TSMCはこれによって、旧世代施設での生産能力が低下する可能性がある。

  米政府当局者は最近、TSMCの南京施設に付与していた「認証エンドユーザー(VEU)」と呼ばれるプログラムにおける特例措置を撤回すると伝えた。先週にはサムスン電子SKハイニックスに対し、同様の決定を下している。特例措置は約4カ月で失効する。

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  TSMCは声明を出し、「TSMC南京に対する当社のVEU認可が2025年12月31日をもって撤回される旨、米政府から通知を受けた」と述べた。「当社は状況を評価し、米政府との連絡を含め適切な措置を講じており、TSMC南京の継続的な運営を確保することに引き続き全力を尽くしている」と続けた。

  米株式市場ではTSMCの米国預託証券(ADR)が下落。ニューヨーク時間2日午前の取引で、一時2.3%下げた。

  ワシントンの動きは半導体セクターのトップ企業にとって、中国事業を脅かすものだ。これらの企業が拠点を置く半導体大国は、いずれも米国と緊密な関係にある。米政府は生産に必要なライセンスを都度発行する意向だとしているが、申請から承認までの待機期間といった不確実性が生じる。事情に詳しい関係者によれば、米当局は既存のライセンス申請に関して著しい処理の遅れが生じていることを踏まえ、官僚的な負担を軽減するための解決策に現在取り組んでいる。

TSMCの特例措置解除について伝えるブルームバーグテレビジョン

  中国での生産比率が高いサムスン電子とSKハイニックスとは異なり、TSMCの中国生産は比較的規模が小さい。同社の南京施設は2018年に稼働を開始し、昨年は会社全体の売上高に対する寄与度は小さかった。同施設で使用されている技術で最も進んでいるのは、10年余り前に商業利用が始まった16ナノメートル技術などだ。

  半導体の輸出規制を監督する米商務省の産業安全保障局(BIS)にコメントを求めたが、現時点で返信はない。

  半導体は電子レンジからスマートフォン、人工知能(AI)アルゴリズムの学習に使われるデータセンターに至るまで、幅広い製品や施設で不可欠な部品だ。このサプライチェーンに米政府がいかに影響を与え、かつ制御できるかが今回浮き彫りになった。外国企業が米国外で営業する事業が対象であっても、それは変わらない。

原題:US Pulls TSMC’s Waiver for China Shipments of Chip Supplies (1)(抜粋)

(第4段落にTSMCのADRについて、最終段落に背景説明を追記します)

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