トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税を拡大-ベビー用品やオートバイも対象

トランプ米大統領は15日、鉄鋼とアルミニウムに課している関税を拡大し、オートバイや食器など、これらの金属を含む400品目超の消費財を新たに対象に加え、物流業界に衝撃を与えた。米国内の通関業者や輸入業者が対応するための猶予もなく、追加関税は18日に発効した。輸送中の商品も例外にはならない。

  新たな関税対象品目の一覧は、週末に入るタイミングで税関・国境警備局(CBP)によって公表され、19日付の連邦官報にも掲載された。これにより、貿易の現場では新たな混乱が生じている。とりわけ、既に米国に向けて輸送中の商品に関しては公式な指針が曖昧で、また今回の金属関税が国別に課される関税と重複して適用されるのかどうかも明確ではない。

  トランプ氏の貿易戦争が半年にわたって続いており、また新型コロナウイルス流行による大規模な供給網の混乱も経験してきたことで、国境を越えた商取引を支える貨物輸送業者や荷主、仲介業者たちは、そう簡単には動じなくなっていた。だが、今回の発表の対象範囲と実施の速さには、多くが不意を突かれた。

  ミシガン州を拠点とする通関業者のシャノン・ブライアント氏はインタビューで「2025年にはこうした土壇場での実施が何度もあったが、今回の件は私の顧客全てに非常に大きな影響を及ぼしている」と語った。

  貿易コンプライアンスに関する助言サービス、トレードIQの代表でもあるブライアント氏は、「これまでの発表には、少なくとも一部に輸送中の貨物が対象外となる猶予措置があった。そのため輸入業者も一定の判断材料を持って仕入れを決めることができた」が、「今回はそうした点がまったくなく、まさに『してやられた』という印象だ」と語った。

  今回の新たな関税対象リストには、自動車部品や化学製品、プラスチック、家具の部材などが含まれており、トランプ氏が業種ごとの関税措置に用いる権限の広範さを浮き彫りにしている。いわゆる相互関税に用いた大統領権限とは別のものだ。

  物流大手キューネ・アンド・ナーゲル・インターナショナルで米国の通関部門を統括するブライアン・ボールドウィン副社長はリンクトインへの投稿で「基本的に、光沢があって金属っぽいもの、あるいは鉄鋼やアルミニウムに少しでも関係しているものは、ほぼ確実に今回のリストに載っている。これは単なる新たな関税ではなく、鉄鋼・アルミニウムの派生製品をどう規制するかという戦略の転換だ」と記した。

コンプライアンスコストの増大

  派生製品に関税を適用する難しさは、それぞれの製品に含まれる対象金属の割合をどう判断するかにある。

  デジタル貨物輸送業者のフレックスポートはブログ投稿で、「多くのブランドにとって、これはサプライヤーに対し、アルミニウムの重量、関税評価額に占める割合、鋳造・製錬の国といった詳細なデータの提供を求めなければならないことを意味する」と解説。

  こうしたコンプライアンス対応の負担は「非常に大きい」と指摘した。

  今回の関税措置は対象範囲がとりわけ広く、オートバイや貨物取り扱い機器、幼児用ブースターシート、食器、さらには金属製の容器や包装に入ったパーソナルケア製品まで含まれている。

  ミシガン州立大学でサプライチェーン管理を専門とするジェイソン・ミラー教授は、2024年の輸入データに基づき、今回の金属関税の対象となる品目は控えめに見積もっておよそ3280億ドル相当に上ると試算した。同教授はブルームバーグ・ニュースに宛てた電子メールで、関税拡大前の対象額1910億ドルからも大きく跳ね上がったと指摘した。

  今後、関税のさらなる拡大の可能性も高い。トランプ政権は7月末に、150億ドル超に相当する半製品の銅輸入に対して50%の関税を課した。同時に、銅を多く含むその他の製品群にも関税をかける計画の策定を当局者に命じている。

  国際物流大手DSVの通関責任者ピート・メント氏は18日、「まだ終わっていない。次のリストは恐らく銅製品になる。今回と同じくらい厄介なものになるだろう」とSNSに投稿した。

原題:Trump Widens Metal Tariffs to Target Baby Gear, Motorcycles(抜粋)

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