岩屋氏の中国に対する「日中共同声明の再確認提案」は無駄 習近平が何を狙っているのかをわかっていない

 10月9日の共同通信によれば<岩屋氏「軍国主義」の批判に苦言 中国に日中共同声明の再確認提案>したとのこと。「高市発言」の撤回は難しいので、その代替案として提案したようだが、あまりに習近平が何を狙っているかを理解していないと言わざるを得ない。

 習近平が狙っているのは、10月7日のコラム<習近平の「米中露戦後秩序の構図」は、日本を「新型軍国主義」と指摘することによって何を狙っているのか?>あるいは10月1日のコラム<WWⅡの同盟国・米中の敵国は日本 そこに潜む中国の恐るべき「新型軍国主義・日本とG2」構図>に書いたように、「米中露戦後秩序の構図」を構築することによって台湾統一を成し遂げることだ。その構図の「ド壺」の中に飛び込んできた「高市発言」は、むしろ習近平にとっては都合がいい。

 そのことを理解せずに日本政治を遂行するのは無理がある。

◆岩屋毅前外相と王毅外相・何立峰副首相との会談

 9月27から30日にかけて、岩屋毅前外相は日本国際貿易促進協会の会長として約50人の経済界代表を率いて訪中し、王毅外相や何立峰副首相らと会談した。王毅との会談に関する中国側の公式発表によれば、王毅は「日本国際貿易振興会は設立以来、中日友好のために尽力してきた著名な市民友好団体の一つである」と述べて高く評価した上で、 「日本にとって緊急の課題は、台湾問題に関する指導者たちの誤った言動を迅速に正すことであり、重要なのは歴史的問題に対して正しい姿勢を取ることだ」と厳しく断罪した。

 また何立峰は岩屋氏との会談で、「中国と日本は重要な経済貿易パートナーである」、「中国は常に日本企業の中国進出と市場機会の共有を歓迎してきた」、「日本国際貿易促進協会が正しい歴史的方向性を捉え、中国に対する友好の伝統を継承し、日中経済貿易協力の促進においてより大きな役割を果たすことを期待する」などと述べている。

 何立峰は経済貿易担当の副総理として日中経済貿易協力の推進を唱えてはいるが、日中の外交関係に関しては王毅が厳しく釘を刺し、台湾問題に関して一歩も譲らない姿勢を見せている。

◆中国側が拒んだ岩屋氏の「日中共同声明再確認」という提案

 冒頭に書いたように、このような中、岩屋氏は中国が現在の日本を「軍国主義」と称することに対して苦言を呈し、高市首相が高市発言を撤回するのは困難であることから、「1972年の日中共同声明を再確認してはどうか」と提案したのだという。すなわち、日中政府が共同声明を再確認することを以て、「高市発言の事実上の撤回とみなしてはどうか」という提案をしたということになる。

 中国側からすれば、それは虫が良すぎるのではないか、ということになるのだろう。

 高市首相は自らの発言に真正面から向き合い、自分が現在の国際情勢の中で、「何を言ったのか」を正視し、「それが、どのように間違っていたか」を述べて、撤回謝罪する。

 これが、中国が日本国首相としての高市早苗に求めている姿勢だ。

 10月7日、時事通信社は<中国外相「高市首相が解決を」=台湾答弁問題、岩屋氏へ伝達―72年共同声明「再確認」案応ぜず>の中で、王毅は「あいまいなやり方では良くない。中国には『問題を解決するのは問題を起こした人であるべきだ』という言葉がある」として応じなかった、と書いている。

 この情報がなかったとしても、中国側がそのような提案を受け入れるはずがない。

◆習近平の狙いをわかっていない日本

 なぜなら、くり返しになるが、10月7日のコラム<習近平の「米中露戦後秩序の構図」は、日本を「新型軍国主義」と指摘することによって何を狙っているのか?>あるいは10月1日のコラム<WWⅡの同盟国・米中の敵国は日本 そこに潜む中国の恐るべき「新型軍国主義・日本とG2」構図>に書いたように習近平は第二次世界大戦の「戦後秩序の構図」を構築することによって、「台湾統一」を成し遂げようとしているからだ。

 習近平にとっての唯一最大の政治課題は「台湾統一」である。

 政治生命を懸けて、在位中に何としても「台湾統一」を成し遂げなければならない(なぜなのかに関しては拙著『G2構想』で詳述)。

 そのために(今のところ習近平を絶賛している)トランプを活用し、ウクライナ戦争で

負い目のあるプーチンを利用する。

 米中「G2構想」を最大限活用し、「戦後秩序」を形成してきた「敵国条項」を持ち出すことによって「敵国・日本」、そして「日本と戦った米中露側」という構図を浮き彫りにすることによって、「新型軍国主義」を突き進もうとしている日本は「敵国条項」に抵触する行動を取ろうとしていると、言いたいのである。

 こうすることによって、戦後秩序形成の軸となったカイロ宣言やヤルタ会談の中で、「台湾」がどのように位置づけられているかを明確に突き付けていくというのが、習近平の戦略だ。

 台湾有事を日本有事とするのは、「中国大陸が中国の一部であると主張し続けている台湾への侵略行為であり、この侵略行為は敵国条項に抵触する」という論理構築で、いま中国は動いている。その習近平路線にプーチンはもとより、あのトランプが「乗っかってしまっている」ことを無視してはならない。

 中国にとっては、「高市発言」同様、「岩屋提案」は又しても「飛んで火に入る夏の虫」となって、日本に中国の主張を突き付ける良い機会となった側面を見落としてはならないのである。

 そのためにも、一民間団体である日本国際貿易促進協会の会長の訪中に対して、外相と副総理というハイレベルの人物が対応したと言えるのかもしれない。岩屋氏を通して、「高市発言」の撤回要求とともに台湾問題に対する中国側の姿勢を再強調する機会と位置付けたと見るべきかと思う。

 日本は、習近平の「戦後秩序」戦略を甘く見ない方がいい。

 習近平の戦略が正しいか否かは別として、いま日本は少なくとも如何なる国際的構図の中に追い込まれているのか、そのことに気付かなければならない。その認識が、高市政権と必ずしも道を一つにしていない、石破政権下における外相であった岩屋氏にも欠如していることを発見して、暗澹たる思いだ。

 野党の中に、国際社会を俯瞰的に眺める眼力を持った議員がいるのか、それも疑問。

 総じて日本の国会議員は、自らの当落ばかりに心を奪われて、勉強が足りな過ぎるのではないかと憂う。

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