メルカリのジレンマ Switch 2問題と出品禁止の狭間【Watch+】

10月9日メルカリが、「出品禁止」を強化する方針を発表しました。

きっかけとなったのは、「Nintendo Switch 2」の発売直後のメルカリでの不正出品問題でした。「Yahoo!オークション」などは当初からSwitch 2の出品を禁止していましたが、メルカリは出品は制限せず、結果として不正出品や誹謗中傷が多数発生し、メルカリのサービス自体が”荒れて”しまったものです。

Nintendo Switch 2発売時にメルカリで発生した問題

そのため、今後はメルカリのサービス上で「安心・安全が損なわれる」場合には、個々の商品について、出品禁止措置を行なうことになりました。「経営判断」として、個々の商品の出品停止を判断していきます。

簡単に言うと、問題が起きそうな場合、あるいは問題が発生したら早いタイミングで経営判断で出品を停止できるようにしたということです。これ自体は「当たり前」に思えますが、メルカリは、5年ほど前に「マーケットプレイスの基本原則」という運営方針を策定しており、この方針に則ると、Switch 2においても「出品を止める理由もなかった」のだそうです。

確かに転売自体は法律に違反しているわけではありません。多様で自由な取引の場所としては、ルールがわかりやすく、なるべく制限をかけたくないというのもわかります。しかし、今回のように「Switch 2の箱だけ出品」、「絵や写真の出品」など明らかに悪意ある誤認を誘うような出品が誘発されては、メルカリが安心して取引できる場所ではなくなってしまいます。そのために新たな制限を設けるとのことです。

今回の会見で面白かったのは、対応について議論したアドバイザリーボードにおけるコメントで、「Switch 2におけるメルカリの対応は基本原則の運用の観点からは評価できる」とルールの運用を守った点を認めていること。ある意味、(外部有識者を交え)自分たちで作ったルールはしっかり守ったが、それ故に問題が起きてしまっている、とも聞こえました。

「メルカリの対応は基本原則の運用の観点からは評価できる」が「会社の評判を守るという観点では、他の対応もあり得たかもしれない」

一方で、「会社の評判を守る」という点では明らかにマイナスであったため、「マーケットプレイスの基本原則」は変えずに、例外措置を加えることで対応することにしたそうです。

なお、今後どのような商品が制限されるかは、外部からはわかりません。判断のポイントとしては「不正出品の急増」、「トラブルの急増」、「誹謗中傷の急増」、「極端な価格の乱高下」などを総合的に判断するとのことですが、先日問題になったマクドナルドの「ハッピーセット」の転売などは適用されないと思われます。利用者からみたわかりやすさには課題はありますし、今後の運用も未知数ですが、「安心できる・使いやすいメルカリ」に向けては一定の前進と言えると思います。

なお、今後の運用方針や対応判断については「ホワイトペーパー」を公開し、その中で報告していくそうです。前回のアドバイザリーボードの経緯もまとめられており、「転売問題」でよく話題になる論点も整理されています。この問題に興味がある人にはご一読をおすすめします。

「マーケットプレイスの基本原則」の考え方と議論の経緯に関するホワイトペーパー

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