ブラックホールは「ねじれた7次元時空に情報を保持する極小の残骸」を残す可能性が示される(sorae 宇宙へのポータルサイト)

まずは本題に入る前に、この研究の重要な前提である「ブラックホール情報パラドックス」について解説します。このキーワードを知っている方は、次の章まで飛んでいただいても構いません。 この宇宙に存在するモノ、例えば1個のリンゴには、「形」「色」「位置」「質量」「温度」などの様々な「情報(量子情報)」があります。「リンゴ→細胞→分子→原子→素粒子」などのように統合可能な情報はあっても、統合できない個々の情報だけでも無数に存在します。この情報は、光のように、日常的な感覚ではモノ扱いされないようなものにも含まれています。 物理学において情報とは、「数値が変化することはあっても、失われることはない」と考えられており、重要な前提となっています。私たちが過去や未来の様子を予測できるのは、物事の発展が因果的に繋がっているからであり、その因果的な繋がりは、情報が決して失われないという性質を持っていることと強く関連しているからです。もしも情報が失われるならば、過去と未来は因果的に繋がっているという重要な前提が、雲散霧消してしまいます。 しかし、そのような情報の消失が起きている現場が宇宙にはあるかもしれないという懸念があります。それは「ブラックホール」です。100年以上の研究で、その存在が確実視されているブラックホールですが、ブラックホールを構成する情報は「質量」「電荷」「角運動量」のわずか3つしかないことが知られています。 では、ブラックホールにモノを落としたら、そのモノが持っていた無数の情報はどうなるのでしょうか? 質量・電荷・角運動量の3つはブラックホールの情報に足されますが、それ以外の情報をブラックホールは持ち合わせていないため、一見すると消失してしまいます。モノが持っていた無数の “毛” が消えてしまうことから、この性質は「ブラックホール脱毛定理」(あるいはブラックホール無毛定理)と呼ばれています。 また、決して消失しないはずの情報と、情報が消失して見えるブラックホールという矛盾は「ブラックホール情報パラドックス」と呼ばれており、物理学における最大の謎の1つとなっています。このパラドックスが指摘された当初は、ある意味で “臭い物に蓋をする” 解決策が提案されていました。「ブラックホールの内部からはどんな情報も逃げ出さない」という性質から、外側の宇宙との因果律からは切り離されており、影響はないと考えていたのです。 しかしその後の研究で、ブラックホールからは何の情報も出ないのではなく、表面(事象の地平面)から熱放射の形で情報が漏れだすという「ホーキング放射」という性質が発見されたことで、話がややこしくなってしまいました。熱放射は情報の “質” が悪く、ブラックホールの3情報以外の情報が含まれていたとしても、復元不可能な完全にランダムな状態になっているはずです。これでは実質的に情報が失われ、因果律が破綻していることと変わりがありません。 また、ホーキング放射という熱放射のエネルギー源は、ブラックホールの質量に由来するため、ブラックホールは少しずつ小さくなるはずです。理論的には、ホーキング放射が止まることは無いため、やがてブラックホールは全ての質量を吐き出して蒸発し、消えてしまうはずです。結局のところ、ブラックホールに落ちた情報は、因果律が破綻しているという問題を抱えたまま、外側の宇宙に放たれることになってしまいます。これがパラドックスと呼ばれる理由であり、物理学における重大な未解決問題の1つです。

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