「汗水流して働く中国青年」と「レジ金を盗む日本人」…コンビニ夜勤で痛感した「外国人を優遇しすぎ」と叫ぶ社会への違和感(SPA!)

世の中は「ブラック企業」や「人手不足」という言葉に代表される、仕事への悲壮感に溢れている。しかし、本当の絶望はそんな優しいものではない。「石の上にも3年」という通説は嘘で、3日で逃げるべき仕事はたくさんある。はりぼての労働基準法は、多くの労働者を強固に守ってはくれない。実態は公的な数字にも表れている。 厚生労働省が公表する「労働基準関係法令違反に係る公表事案」では、過去に2455件の企業が掲載され、現在も400以上の企業が掲載され続けている。劣悪な労働環境から逃げたくて、人は必死に自分だけの生き方を模索するが、大抵は努力実らず、行きたくない職場にしぶしぶ足を運ぶのだ。 僕も理不尽な状況下で疲弊し、さまざまな職種を転々としてきた。ハローワークから大手求人誌、日雇いサイト、電柱の求人まであらゆる媒体で応募し、実際に働いたものだ。

さて、東京に住んでいた頃、外国人を見かけない日はなかった。牛丼チェーンやコンビニ、工事現場、オフィスビルに至るまで、あらゆる場所で彼らは働いている。彼らがいなければ、店の24時間営業も、建物の建築やリフォームも成り立たない。 僕も現場で、様々な国から出稼ぎや留学に来た外国人労働者と働いた。日本に来ている時点で、どの国の出身であれ能力は高いはずだ。しかし、バイト程度の仕事においては、規律への意識や倫理観は個々人で異なる。勤務先のオーナーは、その管理の難しさを「外国人ガチャ」と表現していた。 今回は、僕が某コンビニチェーンの夜勤で共にした、印象深い同僚たちの話を書いていく。

日本に来る外国人の中には、国内の紛争から逃れてくる人もいる。元同僚のアウン君はその一人だった。生まれ故郷のミャンマーをこよなく愛する、おっとりした性格の愛されキャラだ。仕事のルールにはルーズだったが、不正や盗みは絶対にせず、しんどい深夜や早朝を共にする中ではありがたい存在だった。そんな彼は、僕が入って1年ほどでクビになってしまった。 発端は、外国人に難癖をつけて「日本人を出せ!」と怒鳴り散らす常連客のマエダというおじさんだった。夜勤の日本人は僕だけだったので大抵は僕が対応したが、彼が怒鳴る正当な理由は一度もなかった。ただ外国人が気に食わなかったのだろう。店で外国人店員を見つけるたびに「国へ帰れ!」などと根拠のない呪詛を平気で吐く姿に、僕らもうんざりしていた。だが、店の売り上げには貢献している客だったため、オーナーも僕らもマエダに「来ないでくれ」とは言えなかった。 ある日、アウン君にレジを任せてバックヤードで発注をかけていると、またマエダの怒鳴り声が聞こえた。覗くと、カタコトの日本語で応戦するアウン君の姿があった。止めに入ろうとした瞬間、アウン君の右ストレートがマエダの鼻に炸裂した。殴り合う二人を必死に止めたが警察を呼ぶ事態となり、アウン君はその日を最後に出勤しなくなった。 泣きじゃくるアウン君に理由を尋ねると、彼はこう答えた。 「あいつ、私だけじゃなくミャンマーを馬鹿にした」 当時ミャンマーは内戦の最中で、国の話題には僕すら気を遣っていた。マエダはデリケートな聖域をぶち破り、「ミャンマー人が馬鹿だから同族で戦争をする」という趣旨のことを言ったらしい。傷害事件として処理され、本国に強制送還されてしまったアウン君のことを思い出すと少し胸が痛む。彼がどこかで元気でいることを祈るばかりだ。


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世間はやたらと外国人に厳しい。「国に帰れ」「迷惑だ」「外国人優遇が過ぎる」という過激な言論ばかりがよく目立つ。だが、彼らの力なしに店や産業が回るだろうか。東京から離れた今も、旅館や飲食店で懸命に働く外国人を見かけて胸が痛くなる。 文化の違いによって目が曇ることもあるが、人間の善悪は国籍ではなく、その人個人の性質(ネイチャー)によるものだ。差別や排外の矢を放てば、それは巡り巡って自分の頭に突き刺さる。 自分が不自由なく利用している店、建物、道路に至るまで、彼らの力添えがあって初めて存在している。その事実を思い出すことが、心ない言葉を吐いてしまう社会の冷たさを溶かす一歩になると信じている。 <TEXT/千馬岳史> 【千馬岳史】 小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788

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