マイラン氏、FRB「第3の責務」に言及-米長期金利に影響及ぼす意図も
グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の時代から今のパウエル議長の時代に至るまで、ウォール街では何世代にもわたり、米連邦準備制度のデュアルマンデート(二つの責務)、すなわち物価安定と最大限の雇用が米金利設定の指針になるという事実が、幾度となく引き合いに出されてきた。
トランプ米大統領がFRB理事に指名し、上院が人事を承認したマイラン経済諮問委員会(CEA)委員長が「長期金利の抑制」というサードマンデート(第3の責務)に言及した際、それが一体何を意味するのかアナリストの間で議論を呼び、債券トレーディングデスクの話題となった。
多くの人々を驚かせたのは、マイラン氏が単に長い間忘れられていた連邦準備制度の規定の一部を引用したに過ぎないという事実だ。しかしアンドリュー・ブレンナー氏のような金融市場のベテランにとって、その重要性は明らかであり、ポートフォリオを一変させかねない警戒すべきサインと受け止められた。
ブレンナー氏の見解によれば、ドル安誘導の多国間取り決め「マールアラーゴ合意」のアイデアを提唱したマイラン氏が、上院の指名公聴会でサードマンデートに言及したことは、トランプ政権が連邦準備制度の規則を隠れみのに金融政策を行使し、長期債利回りに影響を及ぼそうとする意図を示す最も明確な兆候の一つだ。
それはトランプ氏が自らの目標達成のため、何十年も続く制度的規範を覆し、連邦準備制度の長年の独立性を損なうことにいかに意欲的かも浮き彫りにする。
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ナットアライアンス・セキュリティーズのバイスチェアマン、ブレンナー氏は「明確に定義されたものではないが、(トランプ政権は)連邦準備制度の長期金利への影響力を大幅に強化できる条項を原本で発見した。これは今のトレードではないが、間違いなく考えるべきことだ」と9月5日のリポートで指摘した。
そのような政策は現時点で実施されておらず、最近は必要とされてもいない。労働市場の悪化が連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ再開に道を開く状況で、米国債利回りは全ての年限で年初来の最低水準に向け低下しつつある。さらにサードマンデートはここ数年、むしろインフレ制御の当然の副産物と見なされていた。
それでも、長期金利への過度な注目は、何らかの動きを債券市場の計算式に織り込むには十分だと一部の投資家は考えている。一方、ロングエンド(長期ゾーン)の金利を抑制する非伝統的手法がどの程度政策の一部になるかによって、特にインフレといった悪影響のリスクが高まり、公債管理と連邦準備制度の仕事が結局、一層難しくなると警戒する声もある。
ベッセント米財務長官は、米経済と住宅所有コストにとって長期金利が持つ重要性をたびたび強調してきた。ベッセント氏は米紙ウォールストリート・ジャーナルに掲載された最近の論説で、マイラン氏と同じように三つの法定目標を引き合いに出し、連邦準備制度のミッションクリープ(責務からの逸脱)を批判した。
シュローダー・インベストメント・マネジメントの米債券責任者リサ・ホーンビー氏はブルームバーグテレビジョンに対し、トランプ政権は住宅市場を活性化させたいと考えており、「これは明らかに優先事項だ」と語った。
DWSアメリカスの債券責任者ジョージ・カトランボーン氏によると、FOMCが利下げを続けても長期利回りが高止まりするようなシナリオが、行動のトリガーポイント(引き金)になり得る。
カリフォルニア大学アーバイン校のゲーリー・リチャードソン教授(経済学)によれば、トランプ氏が試みようとしていることを確かに連邦準備制度は過去に実行し、議会もこれを認めてきたが、それは主に戦時か経済危機の時期だった。同教授は「今は大規模な戦争状態になく、深刻な恐慌にも陥っておらず、そうした事情は当てはまらない」と見解を示した。
原題:Fed ‘Third Mandate’ Forces Bond Traders to Rethink Age-Old Rules(抜粋)
— 取材協力 Alex Harris and Ben Holland