ウィニングパットで「神様、お願い!」 “黄金世代”の高橋彩華が耐え抜いた3年間

◇国内女子◇宮里藍 サントリーレディスオープン 最終日(15日)◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫)◇6558yd(パー72)◇曇り(観衆5928人)

ずっと見ずに来たリーダーボードを18番グリーンに上がって、確認した。2位とは1打差。バーディパットは池に向かって下りが入る8m。高橋彩華は「2パットで勝てる」と思った。自分よりピンに遠く、先に打つ佐久間朱莉のパットでスピードを確認するつもりだったが、佐久間が決めてしまった。

「それでもう全然わかんなくなった」。慎重なタッチのファーストパットは1m以上ショートした。「もう息もできないくらいになって…」。ウィニングパットは真っすぐなライン。「神様、お願い!」と念じて入れた。両手で顔を覆った。涙が噴き出してきた。

1998年度生まれ“黄金世代”の一人として飾った2022年4月「フジサンケイレディス」の初優勝は、3度の2位を経験後、プロ5年目で23歳の時だった。それまでの道のりも長かったが、その後の3年も長かった。メルセデスランキングは23年が23位、昨年は0勝ながら12位。それでも「試合を追うごとに苦しくなった。“今週もダメだった”“今年もダメだった”と…。両親やキャディさんは『勝つ力はあるから』と言ってくれたけど、それを信じられなくなってしまって」という。

26歳のいま、周囲が変わった。昨季までなら山下美夢有竹田麗央岩井明愛千怜姉妹らの台頭。「勢いがすごい」という後輩を「ゴルフが若い」と表現する。グリーンを外した時の怖さを知る自分が狙えないピン位置にも「平気でバンバン打ってくる」とこぼす。下からの突き上げを肌で感じながら、時間が過ぎてきた。

それでも、自分を信じた。初優勝後、ツアー110試合目にして初めて単独首位で迎えた最終ラウンド。最初のバーディは前半3番(パー3)の20ydチップインと派手だったが、ひたすらセーフティなマネジメントに徹した。3バーディ、1ボギーの「70」での逃げ切りは、今季パーオン率2位(75.19%)のショット力を生かした“安全運転”の結果だった。

表彰式は夢のようだった。大会アンバサダーの宮里藍さんにジャケットを着せてもらった。宮里さんの“国内引退試合”だった2017年大会、アマチュアとして予選2ラウンドを同組で回った。「やっぱり神様みたいな人。8年前に『これから頑張ってね』と言ってもらって…。きょう、プロになって本当に良かったと思いました」。苦しみの先に最高のご褒美が待っていた。

堅実なスタイルを貫いて、3年かけて手にした2勝目。“黄金世代”のシーズン初優勝が開幕13戦目になったのは、同世代が本格プロデビューした18年以降で最も遅い。時代の流れに抗って、高橋は自分を信じる力を取り戻した。(神戸市北区/加藤裕一)

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