EU加盟国、米国に「最も強力な対抗措置」への支持が増加-関係者

欧州連合(EU)加盟国の間では、米国との貿易協議で8月1日までに受け入れ可能な合意を結ぶことができず、トランプ大統領が示唆した30%の関税が導入される場合、通商上の最も強力な対抗措置の発動を望む国が増えている。

  事情に詳しい関係者によると、EUの「反威圧措置(ACI)」発動への支持がフランスを中心に拡大し、いまや6カ国を超えた。加盟国の一部はより慎重で、立場を明らかにしていない国もあるという。関係者は非公表の協議内容だとして、匿名を条件に語った。

  ACI発動については、14日のEU貿易担当相理事会で話し合われたと、関係者は述べた。

  フランスのアダッド欧州担当相は今週初め、EUの対応にはACIを活用する選択肢が含まれる必要があると発言。ACIが発動されれば、例えば米国のテクノロジー大手への新たな課税などがあり得る。

  ACIはこれまでに発動されたことはない。第一の目的はEUや加盟国に対する威圧的な行動の抑止だが、欧州委員会の提案を経て加盟国が承認すれば、関税引き上げや輸出入へのライセンス導入のほか、外国直接投資や公共調達へのアクセス、サービスの貿易に対する制限を課すことが可能になる。

  ただ、米国の利益を害する報復措置には一段と厳しい対応で応じるとトランプ氏が警告しているだけに、ACI発動は米欧貿易戦争の拡大を招く公算が大きい。

  アダッド氏は14日、ブルームバーグテレビジョンに対し、「この交渉では、強さを示す必要がある。力と団結、決心を見せなければならない」と主張。

  同氏は、欧州委員会が発表済みの、およそ1000億ユーロ(約17兆2700億円)相当の米国製品を標的とした対抗措置よりも「もっと踏み込むことができる」と述べ、ACI発動を示唆した。

動画:「もっと踏み込むことができる」と語ったフランスのアダッド欧州担当相

  貿易交渉に当たっている欧州委員会は、交渉が継続している現段階でACIの活用は時期尚早だとの認識を示している。フォンデアライエン欧州委員長は13日に記者団に対し、「ACIは特別な状況を想定して設計された」とし、「まだそこには至っていない」と説明した。

  EU加盟国の間では、交渉を継続し、行き詰まりを打開する解決策が見いだされることが依然として圧倒的に支持されている。一方で、米国の関税によって生じる損失に見合う対抗措置を打ち出す構えも崩していない。

  トランプ氏は先週末、EUからの大半の輸入品に30%の関税を8月1日から課すと書簡で通告。それでも交渉は継続しており、シェフチョビッチ欧州委員(通商・経済安全保障担当)は16日、グリア米通商代表部(USTR)代表、ラトニック商務長官と会談するためワシントンに向かった。

  マクグラス欧州委員(法の支配担当)は16日、ブルームバーグラジオで、8月1日までの合意成立を見込んでいるとしつつ、トランプ氏の書簡は「驚きと失望」をもってEUでは受け止められたと語った。

  交渉が停滞すると発言をエスカレートさせる傾向のあるトランプ氏は15日、8月1日までに一部の医薬品に関税を課す可能性が大きいと語った。これが実施されれば、欧州の製薬企業がとりわけ大きな打撃を被る恐れがある。

原題:France Adds Support for Using Most-Potent Trade Tool on US (1)、EU’s Sefcovic on Way to Washington for Trade Talks: Spokesperson(抜粋)

(第5段落に背景説明を挿入し、第10段落以降を加えます)

関連記事: