「AQUOS sense10」で見せる“半歩先”の進化 それでもあえて外観をsense9から変えなかった理由
「AQUOS sense10」で見せる“半歩先”の進化 それでもあえて外観をsense9から変えなかった理由 【画像】あえてAQUOS sense9から外観を変えなかった理由 シャープは10月31日、スマートフォンのミッドレンジモデル「AQUOS sense10」を発表した。発売日は11月13日で、NTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル、J:COM MOBILEが11月13日より順次取り扱う。 オープンマーケット向けSIMフリーモデルはCOCORO STORE(ココロストア)にて販売する。COCORO STOREでの価格は、6GB/128GBモデルが6万2700円、8GB/256GBモデルが6万9300円となっている。 発表会場では通信事業本部長の中江優晃氏が事業内容やスローガンを語り、パーソナル通信事業部長の川井健氏がAQUOS sense10のコンセプトや機能などの詳細を説明した。
AQUOS senseシリーズは毎年5~6月に発表されるフラグシップのハイエンドモデルではない。川井氏によると、AQUOS senseシリーズは10機種目を迎え、「より多くの方に快適な日常を提供する主力モデルなった」そうだ。 開発コンセプトは「日常を、ひとつ上の体験へ」だ。「ハイエンドモデルをより身近な存在にすべく」(同氏)、ありふれたミッドレンジモデルではなく、使う人のニーズを捉えた設計となっている。川井氏はsense10の特徴が「クラス越えのスペック」「誰でも簡単に使えるAI」「個性を引き立てるデザイン」の3つあると紹介する。
AQUOS sense10は、プロセッサに最新のSnapdragon 7s Gen 3を採用した。前機種比でCPU性能が約20%、GPU性能が約40%、AI処理性能が約30%向上した。省電力化も進み、電池効率は12%向上している。ディスプレイには6.1型のPro IGZO OLEDを搭載し、LTPO駆動による240Hz駆動と高輝度(ピーク輝度2000ニト)表示に対応。屋外でも高い視認性を確保した。 5000mAhの大容量バッテリーと高効率SoCの組み合わせにより、1日10時間の使用でも2日間持続する電池寿命を実現。連続動画再生は最大39時間に達する。「伝家の宝刀」もとより「senseの宝刀」といえるバッテリー持ちは10でも健在だという。重量は166gと軽量で、長時間の操作でも疲れにくい設計となっている。「薄さや軽さの本質は、長時間使っても疲れないこと。そこにこだわりました」と川井氏は話す。
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カメラ性能も進化した。ハイエンドモデル、Rシリーズの技術を受け継ぐ新画質エンジン「ProPix」を採用し、暗所でもノイズを抑えたクリアな撮影が可能となった。また、料理撮影などで写り込む影を自動で除去する機能や、ガラス越し撮影時の反射を軽減する「ショーケースモード」も搭載。AIが被写体や環境を自動で認識し、編集いらずで最適な写真を生成する。 さらに、フォトグラファー監修による8種類のフォトスタイルフィルターも追加。アートフィルターを活用して、撮影後の表現幅を広げられる。
通話機能では、新開発のAI「Vocalist」が注目を集めた。周囲の騒音の中でも登録した本人の声だけをAIが識別し、クリアに通話できる仕組みだ。川井氏はデモンストレーションとして、発表会中に新幹線を利用する人に電話をかける演出を行い、「Vocalistをオンにすると、騒がしい駅のホームでも声がはっきり聞こえる」と紹介した。標準の電話アプリだけでなく、リモート会議アプリなどでも利用可能という。 川井氏は「カメラの機能の一部はアップデートで提供できるのではいかと検討している。Vocalist機能については、作り込みが必要といったところがあるため、今のところアップデートによる他の機種への提供は予定してない」としている。 また、スピーカーにはシリーズ初のデュアルBOXスピーカーを採用し、sense9比で体感音圧は25%、低音域は約2倍向上した。動画視聴や通話時の音質も改善している。
一見するとAQUOS sense10はsense9から進化を遂げているように見えるが、外観はほぼ変わっていないようだ。あえてデザインを「大幅に変えなかった」理由はあるのだろうか? 通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部課長の清水寛幸氏は、「外観は引き継いでいる部分が多いが、現行デザインが多くのユーザーに受け入れられている手応えを感じているため」と回答した上で、「縦横や厚みも同じ寸法にしているため、sense9と同じケースをそのままお使いいただけるようにした」と話す。 ただ、全く変化がないわけではないという。細部のデザインアップデートについて、同氏は「カメラリング周りの意匠を変更し、よりカジュアルで個性のある印象にした」という。実際、カメラ台座のフチの部分は、AQUOS sense9よりも目立つよう配色を変えている。また、背面にあった「FeliCaマークの印刷を廃止したことで、背面デザインの完成度がぐっと高まっている」と語った。 外観を変えたなかったことは、コストの抑制にも効いている。プロセッサやカメラを進化させながら、6万円台というAQUOS sense9並みの価格を維持できたのは、「sense9の金型を流用できたことが大きい」(シャープ担当者)という。また、FeliCaロゴのプリントにもコストが発生するが、これを省き、グローバルモデルと同じデザインにすることでも価格維持に貢献しているそうだ。
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ボディーカラーは、ファッションから着想を得た、デニムネイビー、カーキグリーン、ペールピンク、ペールミント、フルブラック、ライトシルバーの6色を展開する。プロモーションカラーのデニムネイビーを中心に、カジュアルからベーシックまで幅広いテイストをそろえた。川井氏は「日常に自然に溶け込みながら個性を引き立てる色を目指した」と話す。 さらに、日本のクラフトマンシップとの協業も発表。ハンドメイドスニーカーブランド「SPINGLE」や、岡山県倉敷市児島発のデニムブランド「BLUE SAKURA」「児島ジーンズ」とコラボレーションし、素材や縫製にこだわった純正ケースを公式アクセサリーとして発売する。「日常を彩るものづくりの精神を共有するパートナーと、新しい価値を生み出せた」と川井氏は述べた。 清水氏は、カラーやケースについて、「ファッション性の高いカラーや、コラボアクセサリーと組み合わせることで、自分らしさを表現できる」とアピールし、1枚の板形状でありながらも、見た目の継承と新しさのバランスを大切にしていることを話した。
シャープは、法人分野においても新たなサービスを展開する。中江氏は、スマートフォンの導入から運用、アフターサービスまでを一貫して支援する「LINC Biz LCM」サービスの開始を発表。「スマートフォンは買って終わりではない。導入から回収までを一貫して支援し、業務効率やセキュリティの面で貢献する」と紹介する。 また、台湾市場での販売が好調であることにも触れ、現地ユーザーの声を積極的に製品開発に反映し、「2024年の出荷台数の2倍を目指している」と意気込みを示した。今後はAIソリューション、パーソナルUXデバイス、次世代データ通信の三本柱で事業を拡大し、通信技術を軸に新たな価値創出を目指すとしている。
中江氏が発表会の中でシャープの新しいスローガンである「ひとの願いの、半歩先。」を示した。その言葉通り、AQUOS sense10はユーザーの身近な生活の中に小さな驚きと快適さを届けることを目指したモデルのようだ。特にカメラの機能については、四半世紀にわたり携帯端末の進化をけん引してきたシャープだからこそ生み出せるはずだ。 もし、次の25年に向けた“半歩”がAQUOS sense10だとするならば、シャープが次の半歩先ではどのような景色を見せてくれるのだろうか? 今後に期待したい。
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