トヨタとホンダは合格点!? 決算から見えた自動車4社の苦境の乗り切り方とは?
/ コラム
自動車メーカー4社の決算が明らかになった。トランプ関税や為替変動といった不確定要素が多い中、それぞれの決算には各社の状況や戦略の違いがハッキリ出た。はたして4社は今後の荒波をうまく乗り切れるのだろうか!?
文:国沢光宏/写真:トヨタ、ホンダ、マツダ、日産
【画像ギャラリー】4社の違いがはっきり出た! 各社の決算の様子を見て!(5枚)マツダの決算説明会。赤字要因が複数あり状況は厳しい
トヨタ、マツダとホンダ、日産の2024年度決算が発表された。トヨタについては多数報道されている通り、増収ながら10%ほどの減益になったとはいえ今までが良すぎた。最後の四半期は円高傾向になった為替レートなど考えれば順当だと思う。2025年度の見通しも、関税や一段と円高になるだろう為替を想定した上で、2024年度より20%減の3兆8千億の営業利益としている。強い。
マツダはトヨタと同じく2024年度について増収である。日欧中市場で台数を減らしたものの、アメリカで台数を伸ばし増収。ただ全体の営業利益は26%減の1860億円になった。アメリカでの販売コスト増加が理由となってます。2026年度の見通しは未定としている。普通、未定と発表された場合、赤字を意味すると考えていいだろう。マツダの赤字要因は3つほどあり、どれも深刻。
順に挙げると1) 日本からの輸出が多いため今まで2.5%だった関税を上げられる可能性が大きい。2) 2025年度の為替レートを153円と依然として円安の方向で想定しているが、すでに150円を大きく上回る動きになっている。3) 2025年度はアメリカで20%の販売増を見込んでいるが、関税と為替が不利になれば値上げを余儀なくされる。4) アメリカの工場投資が必要になってくる。
以上の1~3までは、1つでも1860億円くらいすっ飛ぶ。3つ重なれば最大で5千億円規模のマイナスになる可能性を持つ。前述の通りトヨタは厳しい見込みを想定して20%減という見込みなのに対し、マツダは1つでも赤字になってしまう。当然ながら2026年度の見込みなど出せないと思う。決算発表で言いたかったのは「2026年度は厳しいが、それ以降のための対策をしています」だろう。
ホンダの決算説明会。北米での現地生産に注力してきた強みが活かされている
ホンダの決算発表を見て感じたのが「なるほど財務が素晴らしい!」。後述する日産と違い、ゴールキーパーや戦略がしっかりしているから、攻めるチカラは落ちているものの失点しない。2025年度の営業利益見通しは2024年度の1兆2100億円から大幅ダウンになるが5000億円の黒字。ホンダの場合、日本からの輸出がほぼなし。何より素晴らしいのが為替想定。何と135円である!
この一点だけ見てもホンダ財務の強さが解る。為替と関税(カナダやメキシコ分)のマイナスだけで1兆1千億円も計上している。さらに大きな弱点になりそうだったカナダの工場建設を2030年まで延期したり、アメリカ工場の増強だと思われる設備投資を増やすなどの対応も見積もっている。だからこそ2025年度の見通しを出せた。2輪部門が順調という点も大きいと思う。
日産の決算説明会の模様。マイナス要因が払拭できたとはいいがたい?
さて日産である。財務はホンダと正反対で大甘。一方、最終赤字を7000~7500億円と直前にリーク&リリースしながらし、発表は6700億円にするなど単純な投資家を誘導する手腕は上手。肝心の2025年度見通しながら、赤字確実のため未定。ただ2025年4~6月期は2000億円の赤字になるとしている。2025年度の想定数字を見ると「う~ん」の連続で、誰でも「そら難しいでしょ?」。
例えば基本となる販売台数は中国だけ10万台の減少で、それ以外は2024年度と同じ。335万台/325万台になる。これといった新型車もないのに、どうやって売る? 販売奨励金を出したら利益率ダダ下がりになる。為替は145円を想定し1200億の減益(ホンダは4500億円の減益を想定)。さらに関税の影響は不明とし、2025年度予想に含まなかった。まぁお話になっていない。
それでも「2万人のリストラと世界に17ある工場のうち7つを廃止し、スカイラインに代表される日産ブランドの柱を中心にスピード感を持って取り組めば復活する」そうな。関税や為替。設備投資などホンダと同じくらい厳しい想定をすれば、甘く見て2024年度並みの赤字。厳しい条件が重なることで1兆円を超える赤字になるだろう。遠からず日産を抜本的に改革するための第2幕が上がると思う。