対米投資のうち出資は1~2%、「国売ったと勘違い多い」と赤沢再生相

日本が米国との関税交渉で合意した総額5500億ドル(約80兆円)の対米投資について、赤沢亮正経済再生相は、実際の出資は1-2%にとどまるとの見通しを示した。関税引き下げを通じて回避できた損失は約10兆円に及ぶとしている。

  赤沢氏は27日夜出演したNHKの番組で、今回設定したのは「出資、融資、融資保証を合わせて5500億ドルまで日本の政府系金融機関が枠を作る」ということであり、出資の部分は「全体の1-2%」だと説明。得られる利益の配分は当初5対5を提案したが、最終的に日米で1対9になると述べた。

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  関税を巡り米国と合意に達した他の国でも、国民に向けて合意内容を説明する動きが進んでいる。赤沢氏の説明によれば、日本側の実質的な負担は数字から受ける印象よりもかなり小さい可能性がある。

  赤沢氏は、5500億ドルがキャッシュで米国に行くわけではないと指摘。利益配分を50%から90%まで譲歩したことによる損失は「せいぜい数百億円の下の方」であり、「国を売っただのと言われているが、勘違いが多い」と理解を求めた。今回の枠組みに基づく融資で日本には金利収入が入り、融資保証についても、問題が生じない限り保証料を受け取るだけで、日本にとって利益しかないとしている。

  投資枠については、日米の企業に限らず支援対象とする方針で、一例として米国に工場を建設する台湾の半導体企業を挙げた。5500億ドルの実現について「トランプ大統領の任期中にできればいい」とも語った。

  もっとも、今回の日米合意の実施に関しては、関税率の適用開始時期や投資枠の具体的な運用開始時期など、依然として不明な点が多い。両国が署名した共同文書は存在せず、あるのはホワイトハウスが公表した資料のみだ。

  赤沢氏は、共同文書の作成などと言えば、米国側から「文書を作ってからで、関税を引き下げるのはその後でいいんだねと言われたら終わり」と指摘。早期の関税引き下げ実現に向けて、「文書はいいから、早く大統領令を出して関税を下げてくれということを徹底的にやる」と語った。

  赤沢氏は先週、米国は日本からの輸出品に対する関税を8月1日から15%に引き下げるとの見通しを示した。自動車関税についても可能な限り早期に15%に引き下げるよう求めていく考えを示したが、具体的な日程には言及しなかった。

  トランプ政権は、日米の合意を他国との交渉におけるモデルケースと位置づけている。27日には欧州連合(EU)と新たな合意を発表。EUの輸出品の大半に15%の関税を賦課する一方、EUは既存の対米投資に6000億ドルを上乗せすることを約束した。

原題:Japan Expects 1%-2% of $550 Billion US Fund to Be Investment(抜粋)

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