「居留守はしないで」 年末年始の帰省で話し合う、実家の防犯
居留守はNG、境界を明確にして縄張り意識をアピール――。
犯罪とは縁遠そうな地方や郊外の住宅が今、狙われているという。「闇バイト」による凶悪な犯罪も記憶に新しい。
防犯アドバイザーの京師(きょうし)美佳さんは「老親の住む実家は大丈夫か、離れて暮らす家族が集まる年末年始にこそ話し合ってほしい」と呼びかける。
Advertisement古い建具 現金を手元に置く高齢者
「昔は金持ちそうな家が狙われましたが、今はむしろ普通の一軒家です」と京師さんは解説する。過去に事件がなかったような場所ほど防犯カメラの設置は少なく、犯罪者にとっては「仕事」がしやすい。
古い住宅はなおさらで、建具を壊しやすい上に高齢者が住んでいる確率が高い。室内にある程度の現金も保管していそうだ。
警察庁の統計によると2025年上半期、窃盗や強盗を含む侵入犯罪の認知件数は2万9112件で、前年の同時期に比べ9・5%増加している。
「インターホンを鳴らされたらまず出る。居留守は絶対にしないこと」。京師さんはそう注意喚起する。
警察庁のウェブサイト「住まいる防犯110番」によると、侵入者の半数近くが留守を確認するためにインターホンを押している。居留守を使うと、留守だと思い込んで忍び込んだ侵入者が居直り強盗と化す恐れがある。
縄張りには踏み込ませない
インターホンを通して宅配なら宅配ボックスに入れるよう指示し、営業や点検など予定のない訪問は断る。そして、できる限り対面は避ける。
可能ならば、門扉とインターホンや宅配ボックスを1カ所に配置し、門の中に踏み込ませない構造が望ましい。門扉は道路と家の敷地のギリギリに設置するのが理想的だという。
「ここからは人の土地だという境界線、縄張り意識を示すことで、侵入者にプレッシャーを与えることができます」
それでも突破された場合、ガードすべきは玄関や窓など開口部だ。侵入者が一番嫌うのは、時間がかかること。補助錠や割れにくいガラスを使えば、時間を稼ぐことができる。
ただし、ガラスの性質を知ることが必要だ。よく見かける網入りのガラスは、火災時にガラスの飛散を防ぐが防犯性能はない。割れても音が小さくあまり飛び散らないため、あえて狙う窃盗団もいるという。
通常のガラスを高温で加熱し、急冷させた「強化ガラス」は、車のサイドガラスとしても使われる。風圧には強いが、実は硬いもので一点をたたくと粉々に割れやすい。
最も強いのは、2枚の板ガラスの間に特殊フィルムを圧着した「合わせガラス」。車のフロントガラスなどに使われ、「住まいる防犯110番」でも推奨している。
親が入院 在宅を装うために
実家から離れて暮らす家族が心配すべきポイントは、他にもある。親が入院や施設入所などで長期間、家を空ける場合だ。
京師さんは「空き家を狙った窃盗がはやっている」と指摘した上で、うまく在宅を装うようアドバイスする。
最近はスマートフォンで遠隔操作できる手軽な警備システムが販売されている。離れた家族が照明を点灯・消灯したり、侵入を検知した不審者に向けてスマホで声をかけたりすることも可能だ。
留守宅の草取り、郵便受けから郵送物を取り除くなどの民間サービスもある。
京師さん自身、離れて暮らす母親にほぼ毎日、電話していると明かした。たわいのない内容で構わない。日常的な会話の中に、防犯に役立つヒントが隠されているという。
「高齢者は生活リズムが一定で犯罪者に狙われやすいと言われるが、ムダ話から親の暮らしのリズムがつかめ、自然な流れで注意を促せる。『今日こんな営業マンが来た』など、ちょっとした変化にも気づけます」【太田敦子】