米下院委員会、エプスティーン元被告の電子メールを新たに公開 トランプ氏への言及や英アンドリュー氏とのやりとりも
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米下院監視委員会の民主党議員らはこの日、2019年に刑務所で死亡したエプスティーン元被告と、その元交際相手のギレイン・マックスウェル受刑者(2022年に人身売買罪などで禁錮20年の刑が言い渡され服役中)の間のやり取りを含む、3件の電子メール交換を公表した。
これに対し米下院の共和党議員らは、民主党が文書を「あちこちつまもう」としたと主張。これに対抗するために別途、大量の文書を公開した。共和党側はさらに、民主党が「トランプ大統領を中傷するため、偽の物語を作り出そうとした」と述べた。
トランプ氏は長年、エプスティーン元被告の友人だったが、元被告が初めて逮捕される2年前の2000年代初頭に仲違いしたと語っている。トランプ氏は一貫して、エプスティーン元被告に関連する自分自身の不正行為を否定している。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、これらの電子メールが「民主党議員によって選択的にリークされ、リベラル系メディアに渡され、トランプ大統領を中傷する偽の物語を作り出すために利用された」と述べた。
また、「事実は、トランプ大統領が数十年前、ジェフリー・エプスティーンをクラブから追い出したということだ。理由は、彼がジュフリーを含む従業員に対して不快な態度を取ったからだ」とした。
民主党が公開した最初の電子メールは2011年のもので、エプスティーン元被告とマックスウェル受刑者のやり取り。
その中で、エプスティーン元被告はマックスウェル受刑者に、「まだほえていない犬がトランプだと、承知してほしい(中略)。(被害者は)私の家で、彼と何時間も過ごした」と書いている。
さらに元被告は、トランプ氏について「一度も言及されていない」として、言及しなかった人物には「警察署長」も含まれると書いている。
これに対しマックスウェル受刑者は、「そのことについて考えていた」と返信している。
民主党が公開した電子メールでは被害者の名前は黒塗りされていたが、委員会が公開した黒塗りされていない文書には、「virignia」という名前が記されている。
ホワイトハウスは、この名前が著名なエプスティーン元被告の被害者の一人で、今年4月に自死したヴァージニア・ジュフリー氏を指すものだと述べた。
声明の中でホワイトハウスは、ジュフリー氏が「トランプ氏は一切の不正行為に関与していなかったと繰り返し述べ、限られたやり取りの中で『これ以上ないほど親切だった』と語っていた」と説明した。
ジュフリー氏は2016年の証言で、トランプ氏がいかなる虐待行為にも関与しているのを見たことがないと述べた。また、今年出版された回顧録でも、トランプ氏の不正行為を非難していない。
なぜ名前を黒塗りしたのかとの質問に対し、米下院監視委員会の民主党筆頭であるロバート・ガルシア議員は、党としては遺族の意向に沿って被害者の名前を決して公開しないと述べた。
民主党はまた、トランプ大統領に関する多数の著書を執筆している作家マイケル・ウルフ氏とエプスティーン元被告の間の電子メールも公開した。
エプスティーン元被告はウルフ氏とのやり取りの中で、初めての大統領任期に向けて選挙運動を行っていたトランプ氏との関係について語っている。
2015年にエプスティーン元被告に送った電子メールの中でウルフ氏は、米CNNが「放送中またはその後の囲み取材で」トランプ氏に元被告との関係について質問する予定だと知らせている。
エプスティーン元被告はこれに、「もし彼(トランプ氏)のために回答を用意できるなら、どういうものになると思うか」と返信した。
ウルフ氏は、「彼が自滅するのを、そのままにするべきだと思う。もし彼が飛行機や家に行ったことがないと言えば、それはあなたにとって価値ある広報と政治的な資産になる。あなたは彼をつるし上げてプラスの利益を生みだすこともできるし、もし本当に彼が勝ちそうなら、あなたが彼を救えば、向こうはあなたに借りができる」と書いている。
さらにウルフ氏は、「もちろん、彼が質問に対して、ジェフリーは素晴らしい人物で、不当に扱われている。トランプ政権が禁止するポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)の犠牲者だ、と言う可能性もある」と付け加えている。
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また2016年10月、米大統領選挙の数日前のやりとりでは、ウルフ氏はエプスティーン元被告に、トランプ氏を「おしまい」にできるインタビューの機会を提供している。
ウルフ氏はメールに、「今週、トランプについて発言し、大きな同情を集め、彼をおしまいにする、その一端となるような方法で人前に出る機会がある。興味はあるか」と書いている。
民主党が公開した3番目の電子メールは、トランプ氏の初任期中の2019年1月に送受信された。
その中でエプスティーン元被告はウルフ氏に、「トランプは私に辞任を求めたと言った」と述べている。これは、トランプ氏がフロリダ州に所有する邸宅兼プライベートクラブ「マール・ア・ラーゴ」の会員資格を指すものとみられる。エプスティーン元被告は、自分は「一度も会員だったことはない」と付け加えている。
一方でエプスティーン元被告は、「もちろん彼は少女たちのことを知っていた。彼はギレイン(・マックスウェル受刑者)にやめるよう頼んだので」と書いている。
ウルフ氏はこれらの電子メールについて、インスタグラムに動画を投稿。「これらの電子メールの一部はエプスティーンと私の間のもので、エプスティーンがドナルド・トランプとの関係について語っている」、「私はこの話を長い間語ろうとしてきた」と述べた。
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公開された文書には、英王室のアンドリュー氏に関するものもあった。アンドリュー氏は、マックスウェル受刑者から転送された電子メールに、エプスティーン元被告に宛てる形で返信している。
転送された電子メールは、エプスティーン元被告のために働いていたマッサージ師との性的行為の疑惑に関するもので、2011年3月に送信された。
アンドリュー氏は返信で、こう書いている。「おいおい! これは一体何なんだ? 私はこれについて何も知らない! 君もそう言ってくれ。これは私とは何の関係もないことだ。もうこれ以上は耐えられない」(編中:太字は原文で大文字)。
マックスウェル受刑者が転送したのは、同年3月4日に英タブロイド紙メイル・オン・サンデーから送られてきた、「反論の権利」を通告する電子メールだった。このメールには、マックスウェル受刑者、エプスティーン元被告、そして当時のヨーク公アンドリュー王子に関する多数の疑惑が書かれていた。
メイル・オン・サンデーは2011年3月6日、アンドリュー王子とヴァージニア・ジュフリー氏が共に写っている写真を含む記事を掲載した。
アンドリュー氏は一貫して不正行為を否定しており、起訴されたことはない。
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両者が最後に接触した時期については、これまでは2010年3月だと言われていた。マンデルソン氏が当時の英ビジネス担当相として、エプスティーン元被告から銀行取引について助言を受けた時だと報道されていた。
英紙デイリー・テレグラフは、2010年3月のこの件は、エプスティーン元被告が未成年を売春に勧誘・斡旋(あっせん)した罪での服役を終えた数カ月後のことだと伝えている。
2015年11月6日、エプスティーン元被告がマンデルソン卿に送った電子メールには「63歳だ。やったな」と記されている。
このメールにマンデルソン卿は90分以内に返信し、「かろうじて。私は人生を延ばすために、アメリカで過ごす時間を増やすことにした」と述べている。
エプスティーン元被告は続けて、「ドナルドのホワイトハウスで」と返信し、この週後半に予定されていた米大統領選挙に言及している。
さらに元被告は「アンドリューから距離を置くことについて、君は正しかった。リナルド(原文ママ)と一緒にいることについて、私は正しかった」と記している。これはマンデルソン卿の現在の夫、レイナルド・アヴィルダ・ダ・シルヴァ氏を指している。
マンデルソン卿は、元被告との関係を後悔していると繰り返し述べてきた。
BBCがコメントを求めたところ、マンデルソン卿は電子メールについての回答を拒否した。
マンデルソン卿はトニー・ブレア元首相とゴードン・ブラウン元首相の歴代内閣で複数の閣僚ポストを務めた。2008年に一代貴族の「マンデルソン卿」として叙勲され、上院(貴族院)議員となった。駐米大使としてもおおむね高く評価されており、特に、トランプ政権との関係構築における手腕が評価されていた。