【分析】トランプ氏、自身の発言の火消しに走る側近の努力をまたも台無しに 今度は「選挙の国有化」
(CNN) 現時点では、トランプ米大統領の側近や補佐官が大統領の発言を翻訳しようとした場合、その人物は自身が話している内容を分かっていないと考えたほうがいい。 【映像】トランプ氏、女性記者に「ブタ、静かに」 ホワイトハウスのレビット報道官は、大統領は実際に発した言葉ほど物議を醸す意図はなかったかのように装おうとした。しかし、トランプ氏は3日にこの試みを完全に打ち砕いた。そして、これはすっかり見慣れた光景となっている。 トランプ政権で今まさに論争となっているのは、トランプ氏が選挙の国有化を示唆したことだ。 トランプ氏は2日に公開されたポッドキャスト番組で、連邦捜査局(FBI)で副長官を務めたダン・ボンジーノ氏に「共和党はわれわれが引き継ぐと言うべきだ。少なくとも15の場所で選挙を引き継ぐべきだ。共和党は選挙を国有化すべきなのだ」と主張した。 憲法は選挙の運営権限を州に与えているため、この発言は極めて非現実的だ。しかし同時に、不正投票があったとする虚偽の主張に基づいて選挙結果を覆そうとした大統領の発言という意味では挑発的でもある。そんな人物が選挙を掌握する状況を想像してみてほしい。 そこでレビット氏は、トランプ氏は実際には発言通りの意味を意図したのではないと示唆した。 レビット氏は、トランプ氏が言及していたのは、連邦選挙で市民権を持たない人々の投票を防ぐことを目的としたSAVE法案を議会に可決させることだったと主張した。非市民による投票はすでに違法であり、専門家によれば、ほとんど発生していない。 これはもちろん、筋の通らない説明だった。SAVE法案は有権者登録に連邦レベルの要件を追加する内容。トランプ氏は具体的に15カ所の投票を「引き継ぐ」ことについて話していたのであって、全米に適用される法律を通過させる話ではなかった。 そして案の定、トランプ氏は3日、自分が言ったことはそのままの意味だと明言した。CNNの記者から選挙を国有化するとはどういう意味かと問われた同氏はSAVE法案に触れることなく、連邦政府がより広範な形で統制を強めるべきだという考えを改めて示した。 「州が選挙を運営できないなら、私の後ろにいる人たちが何かをすべきだと思う」。トランプ氏は、大統領執務室にいた共和党議員らを指し、そう語った。 トランプ氏は、デトロイト、フィラデルフィア、アトランタであったとされる「選挙不正」を挙げ、「もし合法的かつ公正に票を数えられないなら、別の誰かが引き継ぐべきだ」と主張した。 これは、他の政権だったらスキャンダルになっていたであろう類いの矛盾だ。最側近の報道官が大統領の意図を説明したが、それが事実ではなかったことが明らかになったのだ。少なくとも報道官の信頼性にとっては致命的な打撃といえる。報道官の仕事は、文字通り大統領を代弁することにあるからだ。 しかし、これはほぼ平常運転だ。トランプ氏は側近や補佐官が翻訳を試みるたびにそれを否定してきた。 トランプ氏は2016年、イスラム教徒の移民に対する「入国禁止」を公約に掲げて選挙戦を戦った。ところが17年にイスラム教徒が多数を占める国々を対象とした渡航制限を実施した際、側近らはそれが実際には「入国禁止」ではないと主張した(法的防御の観点で、その言葉は役に立たなかった)。しかしトランプ氏はその後、措置は「入国禁止」だと再び言い放った。 19年には、米国がシリアに関心を持つ理由は石油を「確保する」ためだと述べた。これは国際法に違反しかねなかったため、エスパー国防長官は、トランプ氏の発言はイスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に油田へアクセスさせないという意味だと説明した。ところがトランプ氏は「我々は石油を確保している。石油のためだけに部隊を残した」と繰り返した。 20年に開かれた集会では、新型コロナの検査を減らすよう政権に指示したと発言した。これに対し、当時のマッケナニー報道官は「本気ではなかった」と述べ、別の補佐官も冗談だったと一蹴。しかしトランプ氏は後に「私は冗談を言わない」と述べた。 さらに昨年、トランプ氏は、中国、北朝鮮、ロシアが地下核実験を行っていることに触れ、「我々も実験をしなければならない」と語った。ライト・エネルギー長官はこの発言について、核兵器の部品の試験を指しているのであって、「核爆発」を意味しているのではないと説明したが、数日後、トランプ氏は「他国と同じように核実験を行う」と主張した(トランプ政権が実際に核兵器実験に着手したという証拠はない)。 こうした多くの事例では、誰が真実を語っているのかははっきりしない。過去の経緯は、トランプ氏が結実しない非現実的なことを頻繁に口にすることを示している。 それでもなお、側近がトランプ氏の本当の意図を説明しようとする場合、それを信用することはできないという点に変わりはない。 この点については、17年にグラム上院議員(サウスカロライナ州選出)がうまく言い表していた。 「トランプ氏がロシアと結託したとは思っていない」。グラム氏は米紙ワシントン・ポストにそう語った。「トランプ氏は自分のスタッフとさえ結託しないからだ」 ロシア疑惑におけるトランプ氏の責任という点では、それは安心材料かもしれない。しかし国家の運営方法としては、あきれた話だ。 ◇ 本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。