豪海軍、我々にとって改良もがみ型フリゲートはゲームチェンジャー

豪海軍のヒューズ少将は改良もがみ型フリゲートについて「能力面から見ればゲームチェンジャーだ」「高度に自動化された艦艇運用や乗組員のローテーションにおいても艦艇技術を一世代分飛躍的に向上させるだろう」「我々は豪海軍の運用に最も適合した最良の艦を選んだ」と述べた。

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オーストラリアのマールズ国防相は入札の勝者に選ばれた改良もがみ型フリゲートについて「調達スケジュール上のリスクを減らすため海自向けからの変更点は最小限にする」「戦闘システムも日本製のまま」「主な変更点はオーストラリアの規制要件を満たす部分」「例えば艦内の標識などが英語表記に変更される」と述べていたが、Janesは2025年11月「豪海軍向けの改良もがみ型フリゲートには12式地対艦誘導弾能力向上型ではなくNSMが搭載されると三菱重工業が明かした」「この点が海自向けと豪海軍向けの大きな違いだ」と報じた。

出典:Photo by Seaman Recruit Thomas Stangnes / Royal Norwegian Navy

Naval Newsも「Janesは豪海軍向けの改良もがみ型には12式地対艦誘導弾能力向上型の代わりにNSMが搭載されると報じたが、三菱重工業は我々の取材に対して『豪海軍向け改良もがみ型は23式艦対空誘導弾ではなくESSMを運用する』と明かし、さらにMk.32魚雷発射管も97式魚雷ではなくMk.54魚雷を使用することを確認した」「日本は非イージス艦へのESSM統合に関する入札を行っており、これは豪海軍向け改良もがみ型に関連している可能性が高い」「改良もがみ型は日本独自の戦闘管理システム=OYQ-1が搭載される」「三菱重工業は興味深いことに『日本の政治的原則に基づき国産兵器は輸出しない』と強調した」と報じている。

ただし「オーストラリア海軍向けの改良もがみ型にOYQ-1が搭載される」という部分は、コンロイ防衛産業相が「改良もがみ型に搭載されるOYQ-1はLockheed Martin製である」と、豪海軍のヒューズ少将が「三菱電機が製造する戦闘管理システムは伝統ある米国設計だ」と述べたことに基づいており、Naval Newsも「どういった経緯で(OYQ-1がLockheed Martin製と)発言したのか不明だ」と指摘しているが、基本的には「日本が採用するOYQ-1をそのまま搭載する」と解釈する場合が多い。

豪国防省は今月18日「オーストラリアが汎用フリゲート(改良もがみ型フリゲート)3隻の建造契約を締結した」「今回の契約締結に際し、マールズ副首相兼国防相と日本の小泉進次郎防衛相が『もがみ覚書』に署名し、汎用フリゲートの確実な引き渡しと防衛産業協力に関するコミットメントも再確認した」と発表、Defense newsも27日「今回の契約は日本にとって過去最大の武器輸出であり、日本の造船産業にとって大きな後押しとなるだけでなく両国間の戦略的連携をさらに強化するものだ」と報じた。

豪海軍のヒューズ少将もDefense newsの取材に「能力面から見れば改良もがみ型はゲームチェンジャーだ」「豪海軍にとって改良もがみ型は戦闘システムだけでなく、高度に自動化された艦艇運用や乗組員のローテーションにおいても艦艇技術を一世代分飛躍的に向上させるだろう」「改良もがみ型はアンザック級よりも大型かつ遥かに高性能で年間300日もの海上稼働率を誇る」「オーストラリアが独自の改修を極力抑えるのは艦の引き渡しが遅れることになるからだ」「我々は豪海軍の運用に最も適合した最良の艦を選んだ」と言及。

Defense newsも「既に下請け契約は締結済みで、NECにはソナーやUNICORN統合マストなど9種類の機器、Rolls-RoyceにはMT30ガスタービンが発注されている」「豪海軍向けの改良もがみ型にはMk.41 VLS×32セル、ESSM Block2、NSM、SeaRAM、Mk.54軽魚雷が採用され、戦闘管理システム、ソナー、統合マストなどは日本製のものを搭載する」「最終的にオーストラリアと日本は計35隻のもがみ型フリゲートを運用することになるだろう」と報じている。

豪国営放送は別の角度から、海外では一般的なサプライチェーンやエコシステムの視点で改良もがみ型フリゲートについて報じており、ABCは27日「防衛産業の主要関係者の一部、そして日本政府関係者の一部では改良もがみ型フリゲート調達の規模や複雑さから、豪Austalが予定期日までに8隻の建造準備を整えることができるか疑問視している」「それでもオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のアレックス・ブリストウ氏は『国内建造が予定通り進むかどうかに関係なく西オーストラリア州ヘンダーソン防衛特区は大きな可能性を秘めている』と主張する」と報じた。

NATO大使30人が防衛省に来られました。防衛省からブリーフィングをする前に私が歓迎のスピーチを行いました。「インド太平洋も欧州・大西洋の安全保障は一体不可分」との認識を共有する素晴らしい機会になりました。3年前は10ヵ国の参加が今年は32ヵ国中30ヵ国になったことからも日本への期待と関心の… pic.twitter.com/NMkMPORv3x

— 小泉進次郎 (@shinjirokoiz) April 17, 2026

“日本は長年続いた防衛輸出規制を緩和した。これは待望の変更であり武器売却をさらに加速させるものだ。アナリストらはワシントンの混沌とした予測不能な行動を背景に「オーストラリアを含む一部の米同盟国は日本に主要防衛装備を求める動きが強まるだろう」と予測している。ASPIのブリストウ氏は「もがみ型が日本にとって防衛輸出パートナーシップのネットワーク構築に向けた戦略の重要な一部となり得る」と指摘した。ニュージーランド、インドネシア、潜在的にインドももがみ型フリゲート購入や現地生産を検討しているという”

“ブリストウ氏は「もがみ型はF-35が築いた同盟国・パートナー国のグローバルネットワークに似た形で地域的な能力になるかもしれない」「もしそうなればオーストラリアはもがみ型供給ネットワークの主要ノードとなるのに適した位置だ」「国内建造が予定通り進むかどうかに関係なく、ニュージーランド、インドネシア、インドに近い西オーストラリア州ヘンダーソン防衛特区は南インド太平洋地域におけるもがみ型の整備拠点として極めて優れた立地になるだろう」「中国や第一列島線上のホットスポットからも距離が離れていることも強みの1つだ」「そのためヘンダーソン防衛特区は経済的利益を大きく伸ばす可能性がある」という”

出典:Australian Defence Force/Jay Cronan

“日本は長年続いた防衛輸出規制を緩和し、攻撃兵器の輸出や防衛輸出全体の拡大に扉を開いたが、政策研究大学院大学の岩間陽子教授は「日本国内のもがみ型建造能力は限界に達している可能性がある」「韓国のような産業ハブも含めてパートナー国と生産能力を再編成する必要がある」「同盟国間で『誰が何を得意とするか』を整理して分業体制を構築しなければならない」「日本は過去にこうしたことをあまり行ってこなかったため、多くの再考と再学習が必要であり時間がかかるだろう」「さらに世界的な価格高騰などの影響を受けて物事は簡単に進まない」「多くの浮き沈みを覚悟しなければならない」と指摘した”

ニュージーランド、インドネシア、インドがもがみ型フリゲート購入や現地生産を本気で検討しているかどうかは不明で、ニュージーランドは改良もがみ型フリゲートの調達を検討しているという報道もあるが、このニーズにはBabcockが主導するコンソーシアムがBabcock Australasiaを通じてアローヘッド140を提案しており一筋縄ではいかない。

さらにインドネシアも英国、イタリア、トルコが艦艇需要を分け合っている状況で、Babcockは2021年9月にインドネシア国営企業=PT PALとアローヘッド140フリゲートのライセンス契約を締結し、1番艦は2025年12月に進水、2番艦も建造中で、Babcockは2026年1月「インドネシアと40億ポンド相当の海洋パートナーシップ計画に基づく初の契約を締結した」「アローヘッド140フリゲートのライセンスを追加で2隻売却する」と発表。

Fincantieriも2024年3月「インドネシア国防省とパオロ・タオン・ディ・レヴェル級哨戒艦(PPA)供給に関する契約を締結した」と発表、納期を短縮するため建造中だったイタリア海軍発注のPPAを移転し、2025年7月と12月に引き渡しが完了し、イタリア政府も2026年2月「インドネシア海軍に対するガリバルディ無償譲渡に関する法令案」を議会に提出して「この無償譲渡はPPA級艦2隻の売却によって開かれたインドネシアとの協力機会をより強固にできる可能性がある」「具体的なイタリア防衛産業に対する波及効果としてDGK級潜水艦6隻、M-346、海上哨戒機3機の供給契約に結びつく可能性がある」と説明。

出典:Marina Militare

インドネシアは2025年7月にトルコとイスタンブール級フリゲート調達に関する契約も締結しているため、インドネシア海軍はアローヘッド140フリゲート×4隻、イスタンブール級フリゲート×2隻、パオロ・タオン・ディ・レヴェル級哨戒艦×2隻を確保した格好で、アローヘッド140とイスタンブール級の戦闘管理システム、レーダー、センサー、VLS、ミサイルなどは全てトルコ製で統一されており、ここに日本が食い込むにはトルコ製システム統合が求められるかもしれない。

さらに言えば日本メディアは「インドネシアが日本の中古潜水艦に関心を示している」と報じているが、スコルペヌ型潜水艦の最新バージョン=フルリチウムイオン電池駆動のスコルペヌ型Evolved-Full LiBの現地建造が2026年6月に開始される予定で、インドネシアへの艦艇輸出も一筋ではいかないだろう。

出典:Naval Group Scorpene Evolved

インドについては現地メディアのTimes Nowが今月19日「日本がもがみ型フリゲートの設計をインドに提供した」「この艦艇はインド国内の造船所で建造でき日本は一部の資材を提供する」「これは日本がインドとの関係を強化する取り組みの一環だ」と報じたことがあり、このことをブリストウ氏は言っているのかもしれないが、2024年に発表されたインド海軍向けのUNICORNを日本とインドで共同開発・共同生産する話はほぼ音沙汰がない。

インド国防省は2025年9月に発表したTechnology Perspective Capability Roadmap=TPCR(将来戦闘技術とインド軍のニーズに関する展望)の中でELINT、COMINT、V/UHF及びLバンド送信機を統合した50基~70基の統合型マストを要求、Naval Newsは「統合型マストとUNICORNアンテナの関連性」を指摘しているものの「統合型マストは二段階プログラムとして開発されている」と述べているため、この統合型マストは「日本からの技術移転によるUNICORNアンテナ」と「UNICORNアンテナで得られた知見を反映させた独自バージョン」に分かれるのかもしれないが、根本的にTPCRは長期的な視点における展望に過ぎない。

出典:海上自衛隊

要するにTPCRは正式な調達計画ではなく「インド軍が長期的に何を必要としているか」を内外に示し、防衛企業が「インド市場に何を持ち込むか(何を売り込んでいくのか)」を判断する手がかりに過ぎず、インド海軍向けのUNICORNが何に搭載されるのかなども一切決まっていない。

改良もがみ型の採用がオーストラリア、ニュージーランド、インドネシア、インドに広がって同盟国やパートナー国間のグローバルネットワークが形成されるかどうかはさておき、政策研究大学院大学の岩間教授の言及は非常に興味深く、日本国内のもがみ型建造能力は限界に達している可能性があるという指摘は「造船所の建造能力」ではなく「もがみ型/改良もがみ型建造に際して構築されたサプライチェーン全体」を指しており、これを海外輸出するならサプライチェーン全体の見直しと再構築、エコシステムへの新規参入を解放するなど日本にとっては未経験の試練が待ち構えている。

出典:GlobalCombatAir

英伊日の次世代戦闘機=GCAP開発で露呈したように、日本の社会や世論は武器輸出に対する認識や理解の不足、対等な立場と権利を主張する国際共同開発の仕組み、経済力でゴリ押ししてきた防衛産業における国内サプライチェーン脆弱性、国産装備に対するアフォーダブル性の欠如など様々な面で驚くことが多かったが、これからも改良もがみ型輸出を通じて海外への技術移転、現地生産や建造の立ち上げ、オフセットの実施、現地企業を巻き込んだサプライチェーンの構築など様々な試練(というより、武器輸出に対する認識不足からくる驚き)を目撃することになるだろう。

ただし、改良もがみ型の輸出は日本の防衛装備の中で最も可能性を秘めており、これを武器ビジネスとして成功・拡大させられるかどうかが焦点だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Australian Defence Force/POIS David Cox

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