ECB、2会合連続で金利据え置き-インフレ沈静化と経済堅調で
欧州中央銀行(ECB)は11日の政策委員会会合で、中銀預金金利を2%に据え置いた。据え置きは2会合連続。インフレ圧力が抑制され、景気が堅調に推移しているとの認識から金利を現状で維持した。これを受けて投資家の間では、今後の追加利下げはないとの見方が強まった。
据え置きはブルームバーグの調査に参加した全アナリストの予想通りだった。政策委員会は今後の金融政策の方向性について明言を避け、引き続き経済指標を踏まえて会合ごとに判断する姿勢を示した。
ラガルド総裁はフランクフルトで記者会見し、「基調的なインフレの指標は、ECBの中期的な目標である2%と一致する状態が続いている」と指摘する一方で、貿易環境の不透明を背景に「物価見通しは通常よりも不確実性が高い」と強調した。
「経済成長に対するリスクは、より均衡した」と述べた上で、「最近の貿易協定によって不確実性は和らいだものの、貿易関係が再び悪化すれば、輸出が一段と冷え込み、投資や消費にも下押し圧力がかかる可能性がある」と続けた。
ラガルド総裁の発言を受け、市場では追加利下げの見込みが後退。金利先物の動向は、利下げサイクルが終了した可能性を示唆している。
関連記事:ECB利下げ見込みが短期金融市場で後退、利下げサイクル終了を示唆
ECBは最新の四半期経済予測で、2026年のインフレ率を1.7%と予想。前回予測の1.6%から引き上げた。一方、27年の予想は1.9%に引き下げた。
今年の成長率見通しは1.2%に引き上げ、26年は1%に引き下げた。
ラガルド総裁は新たなインフレ見通しについて、「ECBの戦略の中ではっきりと示したように、目標からのわずかかつ一時的な乖離(かいり)であれば、必ずしも何らかの行動を講じる必要はない」と述べ、ECBは「引き続き良好な状況にある」と語った。ディスインフレの進行は終了したとの見方も示した。
ECBは7月に利下げを停止するまでに、1年間で8回の利下げを実施した。これにより政策金利は4%のピークから、景気を抑制も刺激もしないとされる水準まで低下した。
政策委は追加利下げ不要と確信-関係者
政策委員会メンバーは追加利下げが不要だと確信していると、会合後に関係者は明らかにした。 新たな四半期経済見通しは向こう2年間にインフレ率が目標を下回ることを示唆したが、金利を現水準で維持しても2%のインフレ目標を達成できると政策委員らはみているという。
この関係者によれば、ユーロ圏が大型の衝撃に見舞われない限り、金利は当面、現水準で据え置かれる見通し。関係者は部外秘の協議内容だとして匿名を要請した。
10月会合の利下げは事実上排除され、2028年の予測を含む新たな四半期見通しが出る12月は、方向性の再評価を行う機会になるだろうと、関係者は述べた。
ECBの報道官はコメントを控えた。
ユーロ圏のインフレ率は、中期的に2%から大きく乖離することはないと見込まれている。大半の当局者は、ロシアによるウクライナ侵攻後に急騰した物価も安定を取り戻したとの認識を示している。
同時に、経済は底堅さを見せている。米国との貿易協定により欧州連合(EU)の製品に課される関税率は15%で落ち着き、景況感が改善。数年にわたった製造業の低迷も、ようやく終わりが見え始めた。
原題:ECB Keeps Interest Rates on Hold and Traders Rule Out More Cuts、ECB Inclined to Keep Rates Unchanged Barring Economic Shock(抜粋)