泥に埋もれたタバコの吸い殻が“無限に湧く”恐怖 渋谷駅前でヒーローが掘り出した「街の闇」にSNS騒然

渋谷の排水溝から出てきたのは大量のタバコの吸い殻/スミレンジャーZさん(@iijNWqUQ7i41630)提供

ヒーローのコスチュームを着た男性が、渋谷の排水溝から大量のタバコの吸い殻を取り除く様子がXに投稿され注目を集めています。投稿したのは、「スミレンジャーZ」と名乗る男性。「リアルライフヒーロー」としてコスチュームに身を包みボランティア活動を行っています。

「中学生の頃からボランティア活動をしてきました。成果とか実績ではなく純粋に誰かに感謝されることが嬉しいんです」

スミレンジャーZさんがヒーローとしての活動を始めたのは8年前。渋谷のハロウィンで、某キャラクターの仮装をしてごみ拾いをしたのが最初でした。

仮装が注目を集め、普段はスルーされがちなボランティア活動を街行く人々に楽しんで見てもらえたと話します。また、都心のポイ捨てごみの深刻な状況を知ったことも、大きな転機となりました。

その後はイベントに限らず継続的に活動するため、自作のオリジナルヒーローを考案。最初は「スラウザー」というダークヒーローとして活動していましたが、2025年5月から「スミレンジャーZ」として再スタートを切りました。

話題になった投稿には、渋谷駅前の排水溝から泥ごと掘り出された大量のタバコの吸い殻が写っていました。その情景には「ゾッとします」「恐るべき吸い殻の量だ」とのコメントが続々と寄せられていました。

「写真の場所だけでなく、周辺の排水溝10カ所以上が同じような状態です。表面だけでなく、底に埋まって泥と一体化し得体の知れない粘土のようになっていました。表面を綺麗にしても、奥を掘っても掘っても無限にタバコが湧いてくる。この現実を見るたびに、恐ろしいと感じます」

ヒーローのコスチューム姿で清掃活動をおこなう様子/スミレンジャーZさん(@iijNWqUQ7i41630)提供

スミレンジャーZさんは、活動中は常にヒーローのコスチュームを着用しています。

「1つは、普段スルーされがちなゴミ拾い活動や悲惨なポイ捨ての事実を強く印象付けて広めることができるから。もう1つは、自分のモチベーションのためです。小さい頃からヒーローが大好きで、今でも色々なヒーローを見て心を躍らせています。なので、見た目をヒーローに近づけることで無限に力が湧いてきます。いわゆる「オタクパワー」みたいなやつです(笑)」

活動の原点には、影響を受けた“師匠”の存在がありました。それが、ヒーローの姿で慈善活動を行っていた「ベビーカーおろすんジャー」さんです。

「自分と同じように、変身して慈善活動をしている先人はいないかと気になって調べた際、 『ベビーカーおろすんジャー』さんという方の存在を知りました。”お話をしたい”と思い伺ってから、彼が毎月開催している子どもイベント「おろすんまつり」のお手伝いをさせていただくことになったんです」

派手なことはせず、地域を支えるために地道に活動を続ける師匠の姿に尊敬の念を抱いていると言うスミレンジャーZさん。元々活動していた渋谷や歌舞伎町でのゴミ拾いも継続しつつ、現在は師匠が活動していた杉並区方南町を拠点にしているそう。毎日のように商店街やイベントに出没し、地域を盛り上げています。

ボランティアで街を救う姿はまさに子どもたちのヒーロー/スミレンジャーZさん(@iijNWqUQ7i41630)提供

しかし、その地道な活動は、常に心が折れそうになる瞬間との戦いでもあります。

「ゴミの現状は変わらないどころか年々悪化しています。正直、個人がゴミ拾いを頑張っても変わらないのも頭では分かっています。でも、じっとしていられないのが本音ですね。なんでやってんだろう?と自問自答する時もありますが、時間が経つと動いてるみたいな感じです」

ゴミのポイ捨てをなくすために、企業や行政と協力しようと試みるものの、現状を変えることはなかなか簡単ではないと言います。そのため、「今は自分が本当に信じられるヒーロー仲間や方南町の人々と共に、やれる範囲で活動することを選んでいます」とも話しています。

活動を続ける背景には、個人的な経験もあります。

「鬱病を経験したり生まれつき発達障害を抱えていたりするので、そんな私がゴミ拾いなどの”普通”のことで頑張る姿を見せて、同じ苦しみを持つ人を元気づけていきたい。活動を続けることでそんな効果を生み続けていきたいです。大きなゴールではなく、続ける意義を持ち続けることを心掛けています」

一緒にゴミ拾いをするイベントも開催/スミレンジャーZさん(@iijNWqUQ7i41630)提供

Xへの投稿には多くの応援や共感の声が寄せられました。

「『元気をもらった』『絶対にポイ捨てしない』といったコメントは特に嬉しかったです。一方で、いくら声が広がっても現実はなかなか変わらないのが現状です。SDGsがブームのようになっていて、企業や行政の社会貢献も増えてはいますが、それが本当に社会をより“良くするため”の行動なのか、事業を綺麗に見せるPRなのか、そんな不安を常に持ってしまいます」


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