松山英樹スタート前の“54打”に密着 パター練習の進化が止まらない

松山英樹のパター練習の内容が、年々アップデートされているのをご存じだろうか。スタート前の練習、とりわけグリーン上が注目されることは少ない。だが、ここ数年の松山のパッティングの向上は、地道な練習の積み重ねの結果にほかならず、そう思わせるような“パタ練”の変化が見られた。

首位と4打差で迎えたメジャー前週のシグニチャーイベント(昇格大会)「トゥルーイスト選手権」最終日。朝のパット練習をじっくりと観察してみたので、その全容をお伝えしよう。

松山は練習グリーンに現れると、早藤将太キャディが事前に練習器具などを用意していたカップ方向へ移動。真っすぐのラインにセットされていた鏡の器具の前に立った。早藤キャディからパターを受け取り、シャフトにレーザーをつけてスタンバイ完了。まずは左足一本立ちでストロークを始めた。今まで見たことのないドリル。最下点を左にもっていきたいのだろうか。

左足一本で何球か打ったあと、右足をついて通常の構えで球を転がす。鏡でアライメントを確認しながら、レーザーでストローク軌道のチェック(シャフトがねじれるとレーザーの線がゆがむ仕組み)。時に右手一本で打ち、タッチを出す決め手となる“右手の感覚”を確かめていた。

しばらくすると、こちらも鏡の付いた一回り小さいパッティングプレートの所に移動。ヘッド幅と出球部分に計4本のティを挿し、再びストロークを始めた。“ヘッド軌道と出球の管理の練習”だろう。ひとしきり打った後、シャフトに取り付けていたレーザーを外した。

続けて早藤キャディが事前に用意していたティに向かって球を打つ。あらかじめフックライン、スライスラインの場所に準備された、“曲がるラインの練習”だ。各ライン10球近く打ち、終わったらティを抜いた。

続いてカップから歩測を始め、5歩のところで止まってボールを落とした。3球打って、再び5歩遠ざかる。また3球打って、さらに5歩遠ざかる。最終的に約15ydのところからロングパット。これは“距離感の練習”だ。

それを終えるとグリーン上を歩き回り、とあるカップの前で足を止めた。カップから2mぐらいの所にボールを置き、ラインを読み始め、ラインが決まったところでアドレス。すると早藤キャディがボールをどかして、代わりにパッティングプレートをセットした。すると松山はアドレスをほどいて、もう一度、後ろからラインを確認。そして練習器具の上にボールを置いて球を打った。

一見、何の練習か分かりづらいが、おそらく、読んだラインに対するアライメントと、ストローク&タッチを合わせた“実戦的な練習”ではないか。早藤キャディも後ろからプレートの向きを見て、松山とラインの読みが一致しているかを確認していた。プロとキャディのラインの読みがズレることは往々にしてあるが、この練習ならそうした誤差もだいぶ減ってくるはず。

最後の練習が終わると、パターにヘッドカバーを被せて、打撃練習場に向かっていった。球数にして54球。無駄な球は一球たりともなかったように見えた。ストローク、アライメント、読みとタッチのチェック…必ず意図をもって全てのパットを打っていた。適当にポーンと転がして、入った、入らないに一喜一憂するような練習ではないということだ。

また、この週に入ってから弾道計測器「GC4」をグリーン上に持ち込んで、データを計測する姿が見えた。過去、GC4を練習グリーン上で使っているプロは、ブライソン・デシャンボー以外に見たことはない。進化する松山のパター練習。またアップデートされたら、皆さんにお伝えしたい。(ノースカロライナ州シャーロット/服部謙二郎)

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