アングル:イラン指導部、暗殺の標的でも街頭に 統治能力を誇示
[ドバイ 3日 ロイター] - イラン指導部が暗殺の標的として付け狙われてから1カ月余り、彼らは統治を続けられていることを示す新たな戦術を採用した。政府高官たちがテヘランの街頭でイランを支持するために集まった小規模な群衆の中に混じって公然と歩き始めたのだ。
イランの大統領と外相はここ数日間、テヘラン中心部でそれぞれ数百人の群衆と交流した。国営テレビは3月31日、2人が自撮りに応じたり、公共の場に集まった市民に話しかけて握手をしたりする様子を放映した。
内部関係者たちやアナリストたちによると、大統領や外相が公の場に姿を見せるのは、米国とイスラエルの軍事作戦が続く状況で、イラン指導部が戦略的に重要なホルムズ海峡だけでなく国内の民衆に対しても支配が強固で権威を保っていることを誇示しようとする試みだ。
強硬派に近い関係者の一人は市民の前に姿を現すそのような行動について、イランが「空爆に動揺しておらず、統治を続け警戒を怠っていない」と示す意図があると述べた。
米国とイスラエルのイランに対する攻撃は2月28日、老練な最高指導者アリ・ハメネイ師と複数の軍司令官を殺害して始まった。戦争の開始以降、攻撃は現在も政府トップを標的として続いている。
新たな最高指導者モジタバ・ハメネイ氏は3月8日に父の跡を継いでから一度も公の場に姿を現していない。一方、アラグチ外相は先月、イラン政府と米政府が戦争終結を巡る交渉の席に着かせるようパキスタンなどが仲介に動いたために、イスラエルの殺害対象リストから除外された。
イラン側が米国側の和平案を「非現実的」と断じたために、この交渉はそれから停滞しているように見える。そうした中でのペゼシュキアン大統領やアラグチ外相の最近の公の場での動きは、国民的支持を強く印象づけるというより、強気な姿勢を示すことを狙ったものと受け取れる。
あるイラン政府の上層部は「体制が指導層を狙ったイスラエルの暗殺におびえていない」ことを証明していると語った。
<不屈の精神を示す毎夜の集会>
イラン側は、数週間に及ぶ激しい攻撃を耐え抜いたため、勢いづいているように見える。イランは米軍を駐留させている湾岸諸国を攻撃し、ホルムズ海峡を効果的に封鎖する能力を誇示している。
トランプ米大統領は4月1日、イランに対してより激しく攻撃すると断言した。イラン側はこれに対し、米国とイスラエルを「より壊滅的な、かつ広範囲で破壊的な」攻撃が待ち構えていると警告した。
イランの現体制支持者たちは聖職者層の統治者に促されて毎晩、全土に爆弾が降り注いでいても、忠誠心を示すために公共の広場を埋め尽くしている。
アナリストたちは民間人の犠牲がイラン国民にとって大きな苦痛となっている時期に、体制側が攻撃の「政治的、評判的な」コストを高めようとしていると指摘する。ワシントンに拠点を置くシンクタンク「DAWN」のシニアアナリストのオミッド・メマリアン氏は「もしも支持者たちが公共の場に姿を見せなくなれば、統治能力や権威を誇示する能力は著しく弱まるだろう」と語った。
群衆の中には国営テレビの取材に対して、指導部に揺るぎない忠誠を誓う者もいれば、政治的な立場にかかわらず自国に対する爆撃に反対する者、さらに政府職員や学生など生活が体制と結び付いている利害関係者もいる。
ニューヨークに拠点を置くイラン人権センターのハディ・ガエミ代表は体制側がそのような忠実な群衆を人間の盾として利用し、どのような暗殺の試みがあってもその代償を高めるようとしていると指摘した。
ガエミ氏は「彼らは大勢の群衆の中にいれば保護を得ている。イスラエルと米国が攻撃すれば多大な犠牲を伴い世界中から同情を集めることになるからだ」と述べた。
<潜在的な抗議者、夜間外出せず>
イランは1979年、数百万人ものイラン国民の支持を得た革命によりイスラム共和国となった。しかし、数十年にわたる腐敗、抑圧、そして失政が続いた統治のために支持が後退し、多くの一般市民が離反している。
政府が鎮圧した今年1月のような反政府デモの兆候は今のところほとんどないが、体制側はどのような反発の火種も押さえ込むために逮捕や死刑執行、治安部隊の大規模出動のような強硬手段を講じている。
人権団体は米国とイスラエルの攻撃が始まってから少なくとも7人の政治犯が絞首刑に処されており「死刑執行を急ごうとする動き」があると警告した。
ガエミ氏は「潜在的な抗議者の多くは武装した男たちや暴力的な群衆が街頭に居座り続けていることに恐怖を感じ、日没の後は大半が自宅に引きこもっている」と述べた。
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