トランプ大統領、国境の壁を黒く塗装するよう指示-高温で移民抑止
ノーム米国土安全保障長官は19日、トランプ大統領がメキシコとの南部国境の壁全体を黒く塗装するよう命じたと明らかにした。黒色にすることで表面が高温となり、移民が壁を登るのを防ぐ狙いだ。
ニューメキシコ州の国境付近で発言したノーム長官によれば、作業員らは高さ30フィート(約9メートル)の鋼鉄製支柱から成る壁の一部で塗装を始めている。ノーム氏はトランプ氏本人から直接指示されたとし、黒い塗装には2つの狙いがあると説明。1つは暗色にしてさびの進行を抑え、鋼材の寿命を延ばす点だ。もう1つは、砂漠の強い日差しを受けて極度に高温となり、移民が触れたりよじ登ったりできなくなるようにする狙いだという。
ノーム長官は記者団に対し「国境の壁全体を黒く塗装する予定だ」と語った。移民にとって過酷な環境をさらに厳しくするのではないかとの批判について問われると、「触らなければいい。人には選択肢がある」と答えた。
同長官は、この計画にかかる費用や完了までの期間については明らかにしなかった。ニューメキシコ州サンタテレサでの会見では、自らフェンスの一部に塗装を施す場面もあった。
現政権が取り締まりを一段と厳格化した結果、南西部国境では逮捕者数が数十年ぶりの水準に減少している。米税関・国境警備局(CBP)は移民が事前に情報を提供したり、予約したりすることができるアプリ「CBPワン」の機能を廃止している。
関連記事:トランプ氏、移民の強制送還と国境警備強化に向けた包括的措置を計画
テキサス州西部からニューメキシコ州全域を管轄するエルパソ管区の臨時チーフ国境警備官、ウォルター・スロサー氏によれば、直近7日間の逮捕者数は平均で1日約41人、さらに取り締まりを免れて越境する移民が1日9人ほどいるという。1年前の平均は約400人、2023年には約2300人に上っていた。
それでも政権は壁の建設を推し進めている。サンタテレサでは約7マイル(約11キロメートル)にわたる新たな障壁を設置し、空白を埋める工事が進んでいる。
トランプ氏による南部国境の壁建設計画は、長らく論争の的となってきた。1期目は、一部に有刺鉄線を設置したり、壁を黒く塗装する取り組みを進めたものの、最終的に建設された壁は当初の公約よりはるかに短かった。それでもトランプ氏は壁を移民政策の中心に据え、取り締まりの象徴として訴え続けている。
米議会は予算関連法案を可決し、国境の壁の建設・維持に向けて約470億ドル(約6兆9200億円)を計上した。
取り締まりの強化は砂漠地帯の各地で顕在化している。ニューメキシコ州サンランドパークでは、メキシコを見下ろす高台にストライカー装甲車が配備された。車両の後部には米国旗が掲げられ、周辺では国境警備隊員や軍関係者が巡回。北方軍の指揮下で数千人規模の現役部隊が動員されている。
この部隊には、新たに「国家防衛区域」と指定された国境付近で、移民を一時的に拘束・捜索する権限が与えられている。
この地域で簡素な住宅に暮らすリディア・ピニョン氏にとって、ストライカー装甲車の存在は日常風景となっている。「夜は光と騒音が絶えない」と話し、「あれは人々を威嚇するために置かれているのだと思う」と語った。
原題:Trump Orders Border Wall Painted Black So It’s Too Hot to Touch(抜粋)