シャインマスカット、農水省がNZ生産検討 輸出目指す山梨県「徹底抗戦だ」小泉氏に抗議
山梨県の長崎幸太郎知事は25日、高級ブドウ「シャインマスカット」について農林水産省が海外でのライセンス展開(生産許可)を検討していると記者団に明らかにした。一方、県はシャインマスカットの主要産地でベトナムなどへの輸出拡大を目指しているが、政府交渉はなかなか進まない。長崎氏は同日、小泉進次郎農水相に抗議し、小泉氏も「検討はするがゴーサインは出さない」と理解を示したという。
「日本の産地ファーストを」
「海外輸出ができない状態のまま、海外に生産させるのは、どこを向いて仕事をしているのか。農政は日本の産地ファーストでやってほしい」
長崎氏は国会内で小泉氏と面会後、臨時記者会見を開いて農水省の姿勢にこう苦言を呈した。
皮ごと食べられるシャインマスカットは農産物の品種開発を担う農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が30年以上かけて開発し、平成18年に品種登録した。
山梨や長野、山形、岡山などの農家がブランド価値の向上に取り組むが、海外展開は足踏みしている。
輸出展開は植物検疫が壁
主な理由は、輸出検疫・通関手続きでの条件が整わないためだといい、長崎氏は「植物検疫だけは国と国の問題なのでどうしようもない。特にベトナムとの間の植物検疫の問題を早く妥結してほしい」と訴える。
シャインマスカットを入れる木箱を手に取る小泉進次郎農林水産相(中央)「農家は賢明な努力を行っており、産地として海外輸出の条件さえ整えてもらえれば、海外生産許諾も恐れる話ではない」とも語った。
小泉氏「産地の理解を得ねば進めない」
同省によると、ライセンス展開を検討する相手国はニュージーランド。日本企業が同国での生産を目指しており、同省は今年に入ってから検討を進めたという。担当者は「シャインマスカットの市場拡大が進むとともに、非正規品の流通を抑えることができる」と語る。
ライセンスフィー(使用料)は新品種の開発に充てるというが、小泉氏は長崎氏に対し、「産地の理解が得られない状況で進めることはない。輸出が重要だということはよくわかった。全力を尽くす」と計画を再考する考えを示した。
「海外産の味はショックを受ける位…」
シャインマスカットを巡っては、種苗の海外流出が問題となっており、中国や韓国で栽培され、一部は東南アジアに輸出されている。中国への流出だけでも年間100億円以上の損失が発生しているとされる。
長崎氏は会見で、「中国ではほぼ全省でつくっている。韓国に至っては、シャインマスカットを作ったのは日本だが世界に広めたのは俺たちだと言っているくらいだ」と述べつつ、「ベトナムでも韓国産のシャインマスカットを売っているが、われわれからすればショックを受けるくらいおいしくない。輸出さえさせてもらえれば十分戦える」と自負をにじませる。
その上で、「海外ライセンスは徹底抗戦だ。全国の産地を糾合してでも抗議活動する。海外産地を優遇して、国内産地をないがしろにするのはあり得ない」とクギを刺した。(奥原慎平)