「同じ土俵に」山梨県知事、中韓産出回る海外で勝負を シャインマスカットは「日本の宝」

山梨県産の高級シャインマスカット=26日午後、国会内(奥原慎平撮影)

高級ブドウ「シャインマスカット」のニュージーランドでのライセンス展開(生産許可)を農林水産省が検討している問題を受け、生産地である山梨県の長崎幸太郎知事は26日、林芳正官房長官と国会内で面会し、国産品の輸出促進を優先すべきと要請した。日本が開発したシャインマスカットは中国や韓国産が東南アジアなどで確認されており、長崎氏は「同じ土俵に立たせてほしい」と輸出促進に向けた交渉加速を訴えた。

林氏も山梨知事に理解

「生産者の思いを理解してもらいたい。これが日本の宝になる」

長崎氏は林氏との面会を終え、国会内で記者団にこう述べ、日本の果実のポテンシャルの高さをPRした。

面会で林氏は長崎氏の要請に対し「まったくその通りだ」と理解を示したという。

取材に応じる山梨県の長崎幸太郎知事(中央)=26日午後、国会内

県は消費国ベトナムに対する輸出促進に取り組んできたが、国が交渉を所管する植物検疫のあり方が壁となって進んでいない。

一方、県に対し今月、農水省からニュージーランドでのライセンス展開の検討が伝えられ、長崎氏は25日、小泉進次郎農林水産相に抗議の思いを明らかにした。小泉氏も26日の記者会見で、海外のライセンス展開について「産地の理解がないまま進めることはない」と明言し、輸出促進を後押しする考えを示した。

小泉氏、生産許可は「日本の正当性」

シャインマスカットを巡っては、登録品種の海外持ち出しを制限する改正種苗法が令和3年に施行されるまでに苗木が海外に流出しており、中国や韓国で生産が拡大している。小泉氏は「適切な契約のもとでの海外ライセンスは日本のシャインマスカットの正当性を主張する一つの手段だ」と述べ、意義を強調した。

優良品種の海外ライセンス展開は4月に閣議決定された農政の中期的指針「食料・農業・農村基本計画」に盛り込まれ、「新たな稼ぎ」につなげていく方針が示されている。

ただ、長崎氏は記者団に「『匠』の生産者は高い技術を積み上げて製品を出している。仮にニュージーランドに持って行き、現地で技術指導しても、日本の農家がつくるものと同じにはならない」と疑問視する。

「産地の思い台無しにしないで」

「農水省は『ジャパンブランド』の名前で出すというが、国内の生産者が築き上げたブランド価値が毀損される。産地の思いの蓄積を台無しにすることになりかねない」と述べ、不信感をにじませた。

一方、小泉氏に対する要請活動を受けて、X(旧ツイッター)で「シャインマスカット」がトレンド入りするなど反響も寄せられている。

長崎氏は「国内生産者のシャインマスカットが輸出できないにも関わらず、海外産地を優遇することに『おかしい』という意識が共有されたのではないか」と語った。(奥原慎平)

シャインマスカットのNZ生産、山梨県「徹底抗戦だ」

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