60代でも遅くない、認知症の発症リスクは生活習慣で低下可能-米研究

Michelle Amponsah

  • 2000人余りが2年間参加、鍵は運動・食生活のほかに人とのつながり
  • 認知加齢の進行、生活習慣の改善で遅らせられる-研究リーダー
Photographer: DjelicS/E+/Getty Images

認知症発症リスクの高い高齢者に良いニュースだ。心身ともに活発な暮らしを続けるシンプルな行動が、思考能力を改善し、アルツハイマー型認知症の発症を防ぐ効果があることが分かった。しかもその効果は比較的短時間に表れた。

  28日に発表された大規模な研究によると、運動と食生活の改善、精神的・社会的活動を増やすといった生活習慣の変化が、2年以内に有意な効果をもたらした。この研究の参加者は、偏った食事や運動不足といった脳機能低下のリスク要素を持っていることが条件とされ、一部はアルツハイマー型認知症と関連する遺伝子変異があった。

  脳機能は60代に入ると低下を始めるが、もっと遅い段階からであっても、生活習慣を見直すことで認知症の発症を遅らせる可能性があることが研究結果で明らかになった。この研究を中心的に進めたローラ・ベイカー教授(ウェイク・フォレスト大学)は、生活習慣の改善で認知加齢の進行を1年から2年遅らせられるようだと述べた。

  要点は「もっと動き、できるだけ座らず、食事に彩りを添え、新しいことを学び、人とのつながりを保つこと」だとベイカー教授はトロントで開かれたアルツハイマー型認知症協会国際会議で研究結果を説明。「日常的に実行することを自分自身に課してほしい」と述べた。

  研究結果は医学誌JAMAにも同時掲載された。

  「POINTER」と呼ばれるこの研究は、これまで米国で完了したアルツハイマー認知症関連の生活介入実験で最大規模となった。60歳から79歳までの成人2000人余りが参加し、体系的な支援を受けるグループと、自己主導型のグループに分けられた。 

  どちらのグループでも認知機能は改善したが、体系的な支援を受けたグループの改善度合いは、自己主導型のそれを大きく上回った。

  このプログラムでは、心臓や血管の機能を高める30分の運動を週4回と、塩分を控え、濃い緑色の葉野菜やベリー類、全粒粉、青魚といった脳に良い食品を中心にした食事を指導。体系的な支援グループの参加者は、週3回の「脳トレ」コンピューターゲームも実行した。

  このグループはまた、試験期間の2年間に38回、参加者同士のミーティングを開き、目標や進捗(しんちょく)状況を共有した。自己主導型グループも同じ情報を得られる集会を開いたが、2年間に6度しか開かれなかった。

  POINTER実験は、2015年にフィンランドで実施された実験「FINGER」の結果に基づき、より大規模で健康状態が良くない米国人に当てはまるかどうかを検証したもの。

原題:Dementia Study Shows Lifestyle Change, Even After 60, Cuts Risks(抜粋)

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