宝塚月組「ガイズ・アンド・ドールズ」鳳月杏と天紫珠李「時代に合った作品に」一問一答
宝塚歌劇団月組のトップコンビ、鳳月杏(ほうづき・あん)と天紫珠李(あまし・じゅり)が東京宝塚劇場(東京都千代田区)での公演初日を翌日に控えた3日、囲み取材に応じた。上演されるのは、宝塚でも繰り返し上演されてきた米ミュージカル「GUYS AND DOLLS(ガイズ・アンド・ドールズ)」(以下、ガイズ)。今回、稲葉太地が脚色・演出・訳詞を見直し、鳳月が「今の時代に合った、月組の新作品」と名作に新たな息吹を吹き込む。
作品の舞台は1948年ごろのニューヨーク。ギャンブラーのスカイ(鳳月)が、とある理由から堅物の救世軍軍曹サラ(天紫)を、口説き落とそうとすることから始まるコメディーだ。名曲ぞろいで、宝塚の男役ならではのスーツの着こなしの美しさも見どころ。舞台稽古後の一問一答は以下の通り。
鳳月「(宝塚)大劇場から東京に向けブラッシュアップし、新しいガイズをお届けできたらなと思っております」
天紫「東京のお客さまにも、月組らしい新しいガイズをお届けできるよう、精進して参りたいと思います」
「月組の新作品」
--新演出、どう楽しんでいるか
鳳月「宝塚歌劇でも何度も再演されている作品で、作品ファンの方も多くいらっしゃるので、その方たちが大事にされてきたことや、先輩方から受け継がれてきた初演からのガイズも大切にしつつ、現代の皆さまに親しみを持っていただける新演出になっていると思います。今の時代に合った、月組の新作品ができるのではないかな、と思っています」
天紫「なじみのある楽曲や、印象的なセリフのファンも多いと思いますが、稲葉先生が月組バージョンで新たに演出してくださったので、自分たちの色を出しつつも、大切な伝統的作品を継承できるように。楽しんで、新鮮に作る気持ちで臨みたいです」
--2人で大事にしたことは
鳳月「私も個人的に宝塚のガイズのファンで、自分の中にイメージがずっとありました。それを忘れて、自分らしく演じることが難しいこともあったのですが、今回、私たちに合った言葉遣いを稲葉先生が考えてくださって、すごく話しやすいと感じます。あと公演前、イギリスで作品を拝見し、作品をすごく近くに感じることができました。皆さまも、この作品の中に登場しているかのような近い感覚で、愛していただけるようにと心がけて、自分らしく演じようとお稽古しました」
天紫「私もイギリスで拝見したとき、とてもエネルギッシュな印象を受け、昔の作品ではありますが、今の時代に合っているし、月組にピッタリの作品だと思ったので、変化を恐れず、自分らしく演じたいと思ってお稽古しています」
目線を交わしながら、囲み取材に応じる宝塚歌劇団月組トップスターの鳳月杏(左)と、天紫珠李=10月3日、東京都千代田区(相川直輝撮影)男役の神髄、スーツ
--宝塚のガイズはスーツの着こなしが美しい
鳳月「スーツ姿が、実は男役にとっては一番難しいんですね。学年を重ね、ただ立っているだけでも着こなせるようになるまで、下級生時代から色々な研究が必要なコスチュームの1つだと思っているので、そういう意味でも、下級生にも勉強してもらういい機会。
あとギャンブラーの格好良さも捨てきれない宝塚のガイズ、っていうところがあります。でも、ギャンブラーって自信があって、それぞれが粒立ってみえる役どころだと思うので、そこを男役としての自信につなげられるよう、一人一人ができたらいいのではないかと思っています」
公演前に、英国で作品を鑑賞してきたと話す宝塚歌劇団月組トップスターの鳳月杏(左)と天紫珠李=10月3日、東京都千代田区(相川直輝撮影)--初演から75年経っても変わらぬ作品の魅力は
鳳月「時代背景は変わるけれども普遍的なテーマ、人間の心のつながりや愛の形など、70年以上前の作品と思えないくらい、親しみを持てるところがすごくいい所だと思うので、楽しんでいただきたいなと思います。あと音楽のアレンジも今回、かなり変わって、色々なジャンルの曲がちりばめられているので、今までとは違ったアレンジを楽しんで頂けたらいいと思います」
--お互いの役の魅力は
鳳月「サラは娘役の繊細な部分プラス、自立しているところや大胆さ。アメリカのハッピーミュージカルだからこそ、頭で考えて小さくまとまるのではなく、感情をぶつけ合えるところが魅力だなと思うので、しんみりならないように。お互い、勢いを持ったお芝居ができて今回、すごく勉強になっていると思います」
天紫「スカイは舞台上に出てずっと話しているわけではなく、歌っていない所や、周りの人が(場面を)動かしているのを客観的に見ているのが印象的(な役)だと思うんですが、そこが自然だけれどもストーリー性を感じます。先ほどスーツの着こなしのお話もありましたが、(鳳月さんは)本当にスカイそのもので、そこがいつも素敵だなと思います」
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鳳月杏
千葉県出身。平成18年、「NEVER SAY GOODBYE」で初舞台を踏み、月組に配属。花組を経て月組で令和6年8月、全国ツアー公演「琥珀色の雨にぬれて」「Grande TAKARAZUKA 110!」でトップスターに就任。芝居、歌、ダンスと、三拍子そろった誰もが認める実力派。
天紫珠李
東京都出身。平成27年、「1789-バスティーユの恋人たち-」で初舞台。最初は男役だったが、3年目に娘役に転向。大輪の花のような存在感で、鳳月の相手役に就任。
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東京宝塚劇場公演は10月4日~11月16日。問い合わせは宝塚歌劇インフォメーションセンター(0570・00・5100)。