米企業決算シーズン本格化へ、株式市場の楽観を試す注目5テーマ

米株式相場は4月の劇的な急落からわずか3カ月で史上最高値圏へと急上昇した。今後始まる企業決算発表シーズンでは、株価に織り込まれた楽観が正当化されるかどうかが問われることになる。

  市場の期待は高くない。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによれば、S&P500種株価指数構成企業の4-6月(第2四半期)決算は前年同期比2.5%増益にとどまる見通しで、2023年半ば以降で最も低調な決算シーズンとなる可能性がある。11業種中6業種で減益が予想されており、S&P500全体の通期利益成長率の予想も、4月上旬時点の9.4%から7.1%に低下している。

  同指数は過去最高圏で推移しているが、利益見通しは軟化しており、企業はトランプ米大統領の貿易政策にも対応を迫られている。ただ、予想値が低い分、企業にとってはそれを上回ることが容易になる。BIのジーナ・マーティン・アダムス氏とウェンディ・スーン氏は、企業の最新の業績ガイダンスに基づけば、控えめな予想を容易に上回る可能性があるとみている。

  チャールズ・シュワブの上級投資ストラテジスト、ケビン・ゴードン氏は「企業が予想を上回るのは容易だが、注目されるのは粗利益率だ。関税の影響が出るとすれば、そこに表れるはずだ」と語った。

  決算発表は15日から本格化し、JPモルガン・チェース、シティグループ、ブラックロックなどの大手金融機関が先陣を切る。ネットフリックスといった主要企業も決算を発表する予定だ。

  決算シーズンで注目される五つのテーマを以下に挙げた。

関税の影響

  関税はサプライチェーンの混乱やコスト増を通じて米企業収益を圧迫すると市場関係者は予想しているが、第2四半期決算では影響はまだ顕著にはならないとみられている。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリスト、アンドルー・オービン氏が主導した最近の業界調査によれば、関税による実質的な需要減退の兆候は乏しく、厳しい関税が発表されて一時的に停止された後も、マクロ経済の大幅な回復は確認されていない。

  BIによれば、業績予想の修正動向(上方修正と下方修正の差)は、前回決算期に悪化した後、第2四半期には再び改善に転じている。

  S&P500構成企業の純利益率は、5四半期連続で上昇した後、24年1-3月(第1四半期)以来の低水準に落ち込む見通しだ。ただ、この減少は一時的とみられており、BIの分析では、来四半期以降26年末までは再び拡大が続くと予測されている。企業のコスト削減努力や人工知能(AI)導入の加速が必要になる可能性があるという。

テクノロジー大手はAI投資を継続

  貿易やマクロ経済の先行き不透明感にもかかわらず、米国のテクノロジー大手はAI製品開発で大型投資を継続している。

  ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均によると、マイクロソフトメタ・プラットフォームズアマゾン・ドット・コムアルファベットは26年度に約3370億ドル(約50兆円)の設備投資を予定しており、今年度の3110億ドルから増加する見通し。

  S&P500の利益の大半は、AIの恩恵を受けるとされる大手テクノロジー企業が引き続き占める見込み。アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、エヌビディア、メタ、テスラの「マグニフィセント・セブン」は第2四半期に14%の増益が予想されている。一方、この7社を除くと、S&P500全体の利益は0.1%の微減が見込まれている。

  ブラックロックのファンダメンタル・エクイティ・テクノロジー・グループを率いるトニー・キム氏は「AIは単なる流行語ではなく、最も持続的かつ支配的なテーマだ」と述べ、「これらの株はまだ割高とは言えず、上昇余地は大きい」と語った。

銘柄選別力

  S&P500構成銘柄の動きがばらばらになるとの見通しが強まっている。ブルームバーグがまとめたデータによれば、S&P500銘柄の1カ月先の期待相関は0.12に低下しており、過去10年間でこれを下回ったのはわずか3.2%の期間しかなかった。相関が1に近づくほど、銘柄の値動きが連動していることを意味する。

  モルガン・スタンレーのウェルスマネジメント部門最高投資責任者リサ・シャレット氏は「利益を得るチャンスはあるが、銘柄選別のスキルが必要だ」と指摘。収益やキャッシュフローで予想を上回る可能性がある企業を選ぶべきだと述べ、エネルギー、金融、医療の一部といったトランプ氏の大型減税・歳出法の恩恵を受けやすい分野を推奨した。

欧州の下方修正

  欧州では、トランプ氏による貿易戦争が利益率を圧迫するとの懸念から、アナリストが業績予想を相次いで引き下げている。シティグループの指数によれば、3月中旬以降、利益予想の下方修正が上方修正を上回る状況が続いている。

  ゴールドマン・サックスのストラテジストによれば、下方修正の対象は関税の影響を受けやすい自動車メーカーや鉱山会社、防衛関連企業などに集中しており、利益率の低下が主因。

  また、ユーロ高の影響も焦点となる。ユーロは年初以降、対ドルで13%上昇しており、17年以来最大の上昇率を記録しそうな勢いだ。輸出依存度の高い欧州企業の業績には逆風となる。

ドル安

  トランプ氏の貿易政策を巡る不確実性や米連邦準備制度理事会(FRB)に対する利下げ圧力により、ドルは下落基調にある。これは米国の輸出企業にとっては追い風だ。

  モルガン・スタンレーのストラテジスト、デービッド・アダムズ氏はドル安について、米国企業、特に海外売上高比率の高い大企業にとって、「過小評価された追い風だ」と述べた。

  ブラックロックのデータによれば、ドルは今年に入り10%下落しており、上期としては1973年以降で最低のパフォーマンスを記録した。ブラックロックはさらに下落余地があるとみている。

  メタやマイクロソフトなどの企業は前四半期、為替の影響で数億ドル単位で売上高が押し上げられる見通しを示していた。

原題:Five Themes for Investors to Watch as Earnings Season Kicks Off(抜粋)

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