「意識が足りない」痛恨の走塁ミス 感じた焦り…首脳陣が笹川吉康へ残した"言葉"

 悔やんでも悔やみきれないミスとなってしまった。ゲームセットから約3時間後――。多くの選手やコーチ、スタッフらが帰路に就く中、最後に姿を見せたのは笹川吉康外野手だった。硬い表情のまま球場を後にした背中が、プレーの重さを物語っていた。

 21日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)、1点差に迫った9回1死二塁の場面だった。柳町達外野手が放った大飛球を、左翼手の中川がフェンスに激突しながら好捕。三塁を回っていた二塁走者の笹川は帰塁が間に合わず、試合終了となった。

 ベンチから見守ったナインも頭を抱え、小久保裕紀監督も「ワンプレーがどれだけ大切なのかを感じているんじゃないですか」と語った。ペナントレースも終盤を迎えた中で、起きてはいけなかった大きなミス――。試合後、大西崇之1軍外野守備走塁兼作戦コーチがはっきりと厳しい言葉を残した。

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続きの内容は

・指揮官が送った「厳しくも温かい言葉」 ・大西コーチ明かした痛恨ミスの原因

・悔しさ乗り越え… 未来担う若鷹の決意

「抜けると自分で勝手に決めつけたこと。あとは捕球するところをしっかり見てなかったこと。その2つが一番の原因やね」

 自身が生還すれば同点の場面、外野はやや前進守備を敷いていた。そして特大飛球に本拠地ファンから割れんばかりの大歓声も轟いた。冷静な判断が難しいケースではあったが、「上がった打球が捕球されたかされていないか、そこの瞬間を見ておかないと。1アウトで(外野を)抜けるかどうかの打球が上がった場合はハーフウェイ優先で、抜けたのを確認してホームに返るのが基本」。大西コーチが口にしたのは、1軍で当たり前にできなければならない“基本中の基本”だった。

 優勝争いも佳境に入り、1試合の勝敗、1つのプレーが順位に直結する重要な局面を迎えている。「本人もわかっていると思うし、その中での必死のプレーなんだけど」とした上で、「そのワンプレーに対する意識が足りない」ときっぱり言い切った。

 笹川の脚力なら、打球が抜けるのを確認した後にスタ-トを切っても十分に生還できる打球だった。それでも大西コーチは「『抜けるだろう、(ホームに)返らなきゃ』っていう焦りもあったんやろな」と胸中を推し量った。

「もう戻ってこない」厳しい言葉の中に込めた思い

 ゲームが終わると、2人で時間を作って話したという。「反省するしかない。起こったことはもう戻ってこない。きょう1日反省して、あしたまた試合があるわけやから。強い気持ちでもう1回グラウンドに来なあかん」。厳しい言葉の中にも、この失敗を乗り越え、翌日に向かって欲しいという大西コーチの思いが込められていた。

 試合後、笹川は取材に対して「あしたでも良いですか。きょうは……」と小さく答え、球場を後にした。ホークスの未来を担う“希望の星”であることは間違いない。この悔しさを力に変え、また1つ大きな選手へと成長してくれるはずだ。

(森大樹 / Daiki Mori)

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