スイスの防空システム導入が予想外の展開、イスラエルとフランスの一騎打ち
スイスはパトリオット納入遅延で第二の防空システム導入が急務になり、スイスメディアは「イスラエル製は政治的に不可能」と報じ、フランス製と韓国製の一騎打ちになると予想されていたが、連邦評議会は28日「選定対象をイスラエル製とフランス製に絞り込むことを決定した」と発表して予想外の展開になった。
参考:Système de défense sol-air de longue portée: le Conseil fédéral fixe les grandes lignes pour la suite 参考:Surprise en Suisse : le choix d’un second système de défense aérienne se fera entre le SAMP/T NG et le Barak MX israélien 参考:Das Militär würde in Israel kaufen – die Politiker eher nicht
スイスは米国の都合でパトリオットシステム導入が大幅に遅延し、その導入コストも最大3倍まで膨れ上がると予想されているが、署名してしまった有償軍事援助(FMS)契約をキャンセルしても支払った資金が戻ってくる保証がなく、スイスはパトリオットシステム導入を維持しながら第二の防空システム取得に動き出している。
出典:Lockheed Martin
スイスメディアのAargauer Zeitungは2026年5月「スイス連邦国防調達庁が追加の防空システム調達を検討するため4ヶ国(ドイツ=IRIS-T SLX、フランス=SAMP/T、イスラエル=ダビデ・スリング、韓国=L-SAM)に情報提供を要請した。この調達で重視されるのは納期、コスト、性能、欧州での生産もしくはスイスにおける共同生産だ」と報じ、スイス連邦評議会も2026年6月「第二の長距離地上配備型防空システム導入に向けて国防省が交渉を開始した」と発表したが、交渉対象にはフランス、イスラエル、韓国の名前だけしか含まれていなかった。
スイスの主要メディア=SRF、20Minuten、NZZなどは「イスラエルからの購入は政治的にほぼ不可能」「国際人道法を侵害している国から防空システムを買うことはできない」「イスラエル製を選べば左派がジェノサイドの棍棒だ(イスラエルのジェノサイドに加担しているという意味)と攻撃するだろう」と報じたため、消去法で「フランスのSAMP/Tと韓国のL-SAMの一騎打ち」となり、フランスの軍事ブログ=Zone Militaireも「政治的事情でイスラエル製の採用は可能性が低く、実質的にフランスと韓国の一騎打ちになるだろう」と言及。
出典:Hanwha Aerospace
スイスメディアのSolothurner Zeitungは9月4日「本紙が入手した情報によれば国防省はフランスのSAMP/T、イスラエルのダビデ・スリングとバラクMX、韓国のL-SAMを検討中で、欧州諸国から高い評価を受けているSAMP/Tは依然として最有力候補だが、国防省内ではL-SAMについても有望な選択肢として検討されている」「この検討結果は9月18日までに連邦評議会に提出される見込みで、国防省は年末までに契約を締結したい意向だ」と報じていたが、連邦評議会は28日「バラクMXとSAMP/Tの評価継続を国防省に指示した」と発表した。
連邦評議会はプレスリリースの中で「フランス企業、イスラエル企業、韓国企業の4社による入札を評価した結果、技術、軍事、軍備政策、安全保障政策上の考慮事項を踏まえ、選定対象をイスラエルのバラクMXとフランスのSAMP/T NGに絞り込むことを決定した」と明かし、Zone Militaireも「予想されていた一騎打ちにはならなかった」「驚くべきことに第二の防空システム取得はバラクMXとSAMP/T NGのどちらかになるという」と言及して「驚きの展開だ」と強調している。
出典:MBDA
SRFは今回の発表について「軍は価格やスイス産業界との協力を含むオフセット内容を高く評価し、さらに実戦で有効性も証明されているためバラクMXを推しているが、最終的な決定権は政治にある。イスラエルに批判的な左派は既に抗議活動を始めているが、議会は中道右派が多数を占めているためイスラエル製兵器の購入には左派の賛成票は必要ない。それでも左派が購入に反対する国民運動を起こせばどうなるだろうか?スイスが再び隣国からの購入を拒否したらフランスは反発するかもしれない」と指摘。
“スイスは次期戦闘機について長らく「ラファール選定で決着する」とフランスを信じ込ませてきた。財務省は政治的なオフセット取引に関してフランスと原則合意にまで達していたが、国防省は米国製のF-35Aを選定していた。もう誰もフランスとの失敗を繰り返したくはないのだ。スイスはイスラエルよりフランスとの利害関係の方が遥かに大きい。したがって今回も政治的なオフセット取引が絡む可能性が高い。そのため今回は前回のような二枚舌戦術を用いないように万全を期すべきだ”
出典:Israel Aerospace Industries
タブロイド紙のBlickは「ガザでのジェノサイド、レバノンやイランとの戦争があるのにイスラエル防衛産業との協力を検討するのはスキャンダルだ」と最も強烈に批判したが、スイスの主要メディアは概ね「軍はバラクMXを支持し、政治家はSAMP/T NGを支持している」と冷静に報じ、どちらを調達するかの決定は2027年初頭に持ち越されている。
国防省に決定権があるなら事前の予想を覆してバラクMXに決まるかもしれないが、政治的にバラクMXはハードルが高すぎるのでSAMP/T NGに決まる可能性が高い。
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※アイキャッチ画像の出典:Israel Aerospace Industries