『悪魔城ドラキュラ』~月下の覚醒~」レポート:アルカードの長剣を駆使したアクションも披露。永久輝せあさん・星空美咲さんが出演

シリーズ1作目が発売されてから来年で40周年を迎える、コナミデジタルエンタテインメントのゴシックホラー・アクションゲームの『悪魔城ドラキュラ』。それを舞台化した宝塚歌劇団花組公演「『悪魔城ドラキュラ』~月下の覚醒~」が、8月16日(土)から9月28日(日)まで、東京・有楽町にある東京宝塚劇場にて上演される。同公演は、6月から7月にかけて宝塚大劇場でも行われていた。

なお、この東京公演では、ミュージカルロマン「『悪魔城ドラキュラ』~月下の覚醒~」、まさに宝塚歌劇団!なショーが繰り広げられるロマンチック・レビュー第23弾『愛, Love Revue!』の二本立てになっており、それぞれ全く異なるステージが楽しめるところも魅力だ。

この東京公演の開演に先駆けて、前日の8月15日に通し舞台稽古が行われた。こちらでは、その中から、「『悪魔城ドラキュラ』~月下の覚醒~」を中心にステージの模様をレポートする。

後半では、主演を務めた花組トップスターの永久輝せあさんと花組トップ娘役の星空美咲さんに、今回の公演に関するお話をお伺いしてきたので、そちらもあわせてご覧頂けると幸いだ。

文・取材/高島おしゃむ編集/anymo

目次

『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』を「宝塚」で上演。長剣を駆使したアクションが見所

本公演のベースとなったのは、1997年に発売された『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想』。そのため、主人公はヴァンパイアハンターではなく、ドラキュラ伯爵と人間との間に生まれた「アルカード」こと、アドリアン・ファーレンハイツ・ツェペシュだ。

物語はゲームと同じように、5年前の出来事からスタートする。若きヴァンパイアハンターのマリア・ラーネッドと、リヒター・ベルモンドによって討伐された悪魔城の城主・ドラキュラ。ドラキュラの復活をたくらむ一味による不穏な空気が流れる。

何百年もの間眠りと目覚めを繰り返しながら人里離れた森で暮らしていた主人公のアルカードは、実の父であるドラキュラ伯爵と対峙しなければならないという宿命を背負いながら生きてきた。

そんな中、年に一度行われる聖霊祭の準備をしていたマリアとアルカードが出会う。マリアは、5年前にドラキュラ伯爵を倒した後行方不明になった、ベルモンド家の末裔リヒターと、その恋人であり自身の姉のアネットを探す旅に出ていた。このマリアとアルカードの出会いをきっかけに、物語が大きく動き出していく……というのが、大まかなあらすじだ。

1時間半ほどの上演時間の間、次々とテンポ良く場面が切り替わっていくことにくわえて、ゴシックホラーな雰囲気の場面もあれば、華やかな歌声が響き渡る場面もあるなど、シーンごとにさまざまな濃淡がつけられており、あっという間に時間が過ぎ去った。

また、元がアクションゲームということもあり、想像以上にアクションシーンが多かったところも驚いたポイントだ。とくに主人公である永久輝せあさん演じるアルカードは、日頃から長剣を身に付けているというスタイルのキャラクターであり、長剣を駆使して戦う場面が多数用意されていた

さらに、舞台が回転したり、登場人物が徐々に下に落ちていくような仕掛けが施されていたりするなど、演劇ならではの凝った演出も楽しむことができた。

ゲームでおなじみのサウンドが生演奏と生歌唱で楽しめる

実は、筆者は今回初めて宝塚歌劇団の公演を観劇したのだが、驚いたのはその舞台の作りだった。メインとなるステージの手前側に窪みがあり、そこにオーケストラが演奏するスペースが用意されていた。さらにその窪みと観客との間に銀橋(ぎんきょう)と呼ばれるせり出した通路があり、そちらも活用して演者たちが縦横無尽に動き回っていた。

このオーケストラは演技に合わせて生で演奏が行われるのだが、観客からはほとんど見えない。そのため、音の迫力はそのままに、演者による芝居に集中できるようになっていたのである。

ゲームファン的に聴き入ってしまうのはなんといっても、この生演奏による楽曲たちだ。

まず、冒頭に本作の概要が紹介されるなかで物語が始まっていくのだが、そのときに演奏されていた楽曲が『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』のBGMでもある「月下の夜想曲」であった。もう、この時点でかなり気分が上がってしまう。その後次々と場面が展開されていくのに合わせて、おなじみの楽曲たちも演奏されていく。「月下の覚醒」や「月の調べ」、「Bloody Tears(血の涙)」、「失われた彩画」といった楽曲たちは歌唱つきだ。

また、公演自体が2本立てになっているところも、宝塚初心者としては非常に「お得」に感じた。思う存分『悪魔城ドラキュラ』の世界に浸った後に、ラインダンスなどを含むまさに「宝塚!」な艶やかなショーが楽しめるのだ。

アルカードは“優しさと強さと両方持った人物”──永久輝せあさん&星空美咲さんインタビュー

──人気ゲームの舞台化ということで、原作ファンからの注目も集まっています。おふたりは、作品の世界観とそれぞれの役をどのように楽しんでいますか?

永久輝せあさん:私は『悪魔城ドラキュラ』というゲームはプレイしたことがありませんでしたが、向き合うことで作品を知っていきました。本当に魅力的で、長く愛されている理由を毎日実感しております。

アルカードは原作ファンの方の中でもすごく人気のあるキャラクターです。ヴァンパイアの血と人間の血の両方が流れている青年で、ロマンも詰まっておりますし、優しさと強さと両方持った人物なので、私自身もとても魅力的な方だなと思っております。

星空美咲さん:私は、個人的に原作があるものを演じるということが初めての経験だったので、化粧前にマリアさんの写真を飾って、それを見ながら化粧しています。心強さも感じながら、日々演じています。

マリアは、明るく活発ですごく心優しい部分があります。そんな彼女の優しさに、私自身もたくさんの勇気と力をいただきながら、これからも公演を重ねてまいりたいなと思っております。

──ゲームの舞台化ということで、新しいお客さんや宝塚らしい素敵なレディがいらっしゃいました。

永久輝せあさん:舞台で立ちながら客席を拝見していて、男性のお客様がとても多いなというのをすごく実感しました。風の噂では、男性用のお手洗いに行列ができたという(笑)。宝塚の公演ではなかなか珍しいのではないかなと、とても嬉しく思いました。

そして初めて宝塚をご覧になる方にも、宝塚ってこういうものだよ、ということを100パーセントお伝えできる「愛, Love Revue!」との二本立てというところも私自身とても幸せです。

新しい場面も、そして再演する場面もたくさん盛り込まれており、私たちも演っていて、どの場面もそれぞれ魅力があって、どんどん引き込まれます。そして、宝塚らしく男役は格好よく、娘役は可憐に。この世界がとても表現されているというのがこの作品の魅力だと思います。

星空美咲さん:宝塚の公演中に、自分も宝塚に憧れた頃を思い出すような瞬間がたくさんありました。「愛, Love Revue!」を観た方に宝塚を「素敵だな」と思っていただけたり、小さな子たちが「宝塚に入りたい」と思ってもらえたりしたら、それがどんどん繋がっていくのかなと思います。

──本作に宝塚ならではの味付けがされたところはありますか?

永久輝せあさん:まず、ゲームから舞台に持ってくるという点で、ゲーム中には描かれていなかった部分をお芝居として作っていかなければなりません。稽古中はどんな思いを抱えている人物なのか、なぜ悪魔城にいるのか、どういう思いで父と対峙するのか、内面的な部分を考えるのが、アルカード役を演じるにあたってとても大変でした。

立ち回りの振付を覚えて実践するのも、とても難しい時間ではありました。ですが、舞台として成立するためにも、そういう内面的な部分を埋めること、表現することを意識しています。

──さらに美しい立ち回りが仕上がってきましたか?

永久輝せあさん:そうですね。マントを持ちながら、通常より長いアルカードの剣を持っています。なので、お稽古場からマントを使い、同じくらいの長さのものを用意していただいて、毎日剣を持って振り回して練習していました(笑)。

星空美咲さん:マリアとしてもそうですが、その前に娘役であったり、自分自身を磨くということを意識したりしながら取り組んでいます。

──ゲームが題材の作品ですが、ヴァンパイア物はこれまでいろいろな形で取り上げられてきた題材でもあります。その題材の魅力はどのように感じていますか?

永久輝せあさん:ヴァンパイアという存在は、ちょっと妖しくもあり、そして儚さもあり、美しさもあり……という、謎めいているところが宝塚の持っている魅力にとてもぴったり合うのではないかとすごく思いました。

今回はその優しさではなく、ヴァンパイアの強さや、人間対ヴァンパイアの戦いが描かれているので、今まで宝塚で扱ってきたヴァンパイア作品とは違った面白さがあるのかな、と感じています。

星空美咲さん:私は小さい頃からヴァンパイアが大好きというか、ヴァンパイアが題材の小説がすごく好きでよく読んでいたので、今回はすごく嬉しかったです。

宝塚の男役さんが舞台上でヴァンパイアとしていらっしゃるのを見ると、本当に人間じゃないように見える……人ではない、人外感がすごく宝塚と相性がいいなと思います。

──ゲーム音楽を歌唱するときに、どのような思いで歌われていたのかお聞かせください。

永久輝せあさん:私たちが一緒に歌う「失われた彩画」が、ファンの方にとても人気のある楽曲だと演出の鈴木先生もおっしゃっていました。

本楽曲をふたりで歌うという演出にしてくださったのですが、メロディとしてはすごく美しいのですが、歌うとなると音域が広く音の上下も激しくて、なかなか苦戦しました(笑)。

でも本当にメロディが神秘的で荘厳で、お芝居の世界に自分も没入できる感じが素敵だなと思って曲の力をお借りしております。

星空美咲さん:歌詞がなくても音楽だけでたくさんの方に愛されているということもあって、「失われた彩画」の前奏を聴くだけでスッと曲の物語の中に入っていけるような感覚があります。そこにこの歌詞があることを、自分の中でどんどん深めているので、すごくワクワクします。

ライター

ライター/編集者。コンピューターホビー雑誌「ログイン」の編集者を経て、1999年よりフリーに。 現在はゲームやホビー、IT、XR系のメディアを中心に、イベント取材やインタビュー、レビュー、コラム記事などを執筆しています。

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