米銀幹部の出国禁止理由、「刑事事件に関与」と中国-企業の不安拡大
中国当局は、同国からの出国を禁じた米銀ウェルズ・ファーゴのバンカーについて、刑事事件に関連していると説明した。グローバル企業が抱く中国での事業展開に対する懸念が増幅された格好だ。
中国外務省の郭嘉昆報道官は21日の定例記者会見で、「茅晨月氏は中国の法執行当局が現在処理している刑事事件に関与しており、法律に基づき出国制限を受けている」と述べた。「個別の司法案件だ」とし、詳細は明らかにしなかった。
「事件はなお捜査中であり、中国の法律に基づいて茅氏は当面出国できず、捜査に協力する義務を負う」と説明。「捜査を通じて茅氏の法的な権利と利益を保護する」と述べた。
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事件の性質は明らかでないが、今回の件は世界2位の経済大国である中国での事業展開に関する外国企業の信頼を一段と損ねる可能性がある。経済成長の鈍化や、米国との通商を巡る政治的緊張の高まりを受け、グローバルな銀行はここ数年、中国でのプレゼンスを縮小している。
米中ビジネス評議会(USCBC)のショーン・スタイン会長は「中国がこうした事案を明瞭にすることをわれわれは求めている。それによって企業や個人は、自身が出国禁止になるリスクを測ることができる」と話した。同評議会に加盟する企業の一部は、今回の件に関して、さらなる情報を求めて接触してきたという。
茅氏は国際ファクタリング協会(FCI)の会長に最近選出されるなど、金融業界で知名度が高い。FCIによれば、同氏はウェルズ・ファーゴで国際ファクタリング事業を率い、各国の顧客に戦略を助言してきた。
ウェルズ・ファーゴのウェブサイトによると、同社は北京と上海にオフィスを構え、法人および投資銀行業務における現地顧客を相手にしているほか、両都市に複数の支店も開設している。
同社は電子メールでの取材に対し、コメントを控えた。
これとは別にワシントン・ポスト紙は、米商務省で働く米国の民間人が数カ月にわたって中国で出国禁止状態にあると週末に伝えた。
同紙によれば、中国系米国人であるこの民間人は米国特許商標庁に勤務しており、親類に会うために中国を訪れた。事情に詳しい4人の関係者を引用している。関係者は微妙な問題だとして匿名で語ったという。
郭報道官は、この人物に関して共有すべき情報は持っていないと発言。「中国は法治国家だ」とし、「われわれは法に厳格に従い、関連事案を処理している」と述べた。
中国による出国禁止措置は、米中政府間の対立点になってきた。米国務省は「出国禁止関連を含む現地法の恣意(しい)的な執行」を挙げ、中国への渡航を再考するよう自国民に繰り返し勧告している。
原題:China Says Wells Fargo Banker ‘Involved’ in Criminal Case (3)(抜粋)