「スターになりたくて」 発多ヤマトの名付け親は大物音楽プロデューサー
◇国内男子◇中日クラウンズ 2日目(2日)◇名古屋GC和合C(愛知)◇6557yd(パー70)◇雨(観衆1725人)
人気選手、スター選手になりたかったんです――。発多ヤマト(はった・やまと)は、その一念でプロゴルファーとしての登録名を決めた。プロ転向に際して“芸名”を付けてくれたのは、芸能音楽事務所「ビーイング」の社長だった長戸大幸(ながと・だいこう)さん。ロックバンドのB'zや歌手の大黒摩季さん、ZARDといったアーティストを手掛けてきた大物プロデューサーだ。
本名は読み方こそ同じだが、漢字は八太大和。自身のゴルフの師匠だったティーチングプロが知り合いだった縁から、長戸さんに相談を持ち掛けた。「スターをどんどん作ってきた方なので。どういうことが大事ですか、と」。その答えが見せ方を含めた『ビジュアル』、そして『名前』だった。
周りから呼ばれることも多く、本人も愛着の強い「大和」をカタカナにしたのがひとつのポイントだとか。「長戸さんも、カタカナの『ヤマト』にパワーをもらえるとおっしゃっていた」。登録当初はしっくりこず、「『これでやるの?』って思いました。(頼んでおきながら)失礼なんですけど…」と笑う。それでも“デビュー戦”だった2023年「岐阜オープン」で石川遼らを抑えていきなり優勝と、最高の結果が出たから驚く。
昨年初めて進んだファイナルQTで4位に食い込み、待望のレギュラーツアー本格参戦。「まだ3試合目なんですけど、全然そんなふうに感じない」と濃密な日々の疲労感が心地良くすらある。ちょっとだけ寂しいポイントを挙げるとすれば、かわいがってもらってきた東北福祉大の1年先輩・金谷拓実が今季からPGAツアーに参戦していることかもしれない。
今も近況報告で頻繁に連絡を取り、中継映像に映った金谷のプレーについて質問をぶつける。一緒に行動した時間が長かった分、ゲン担ぎのルーティンも継承。金谷が日本ツアーの試合前によく足を運ぶハンバーグレストラン「びっくりドンキー」は、どんなに離れていても欠かせないらしい。「先週の『前澤杯』は2週間くらい『びっくりドンキー』でした。これはちょっとヤバいなと思って、今週は『松屋』に毎日通っています(笑)」
昨年は予選落ちと跳ね返された和合で連日の「69」をマーク。この日はボギーをすぐに取り返すたくましさがあった。ピンに近いガードバンカーからの寄せがオーバーした7番(パー3)でスコアを落としても、8番は左サイドの林の上から持ち球のフェードをかけてフェアウェイを捉え、2打目のウェッジショットをピンそば1.5mに絡めるバーディ。暫定首位と2打差の通算2アンダーで週末を迎える。
ベストフィニッシュは3週前の「東建ホームメイトカップ」の20位でも、上位争いに気後れはない。「チャンスはあると思う。ミスを減らしていって、自分のいいところを出していきたい」。気持ちが上がるお気に入りの曲はZARDの『負けないで』。スターになる夢を追いかけ、まずは今週72ホール目のゴールまで走り抜ける。(愛知県東郷町/亀山泰宏)
亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール
1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。