中間選挙、民主党で土壇場の造反 上院奪還に暗雲 原因は対イスラエル政策

中間選挙の投票直前、激戦州のミシガンで突如、共和党の上院候補支持に転じた民主党のスティーブンス下院議員(11月1日、ミシガン州デトロイト)Zach D Roberts via Reuters Connect

※トランプ大統領の再就任で、アメリカはどこへ向かうのか。連載「トランプのアメリカはどこへ向かう」では、11月の中間選挙をはじめ、国内政治から経済、外交・安全保障まで、トランプ政権の動向と世界や日本への影響を読み解きます。 

自撮りで「造反」をSNSに投稿した民主党のヘイリー・スティーブンス下院議員

民主党のヘイリー・スティーブンス下院議員は11月1日、ミシガン州の連邦上院選で共和党候補のマイク・ロジャースを支持すると表明した。上院の多数派を左右しかねない重要な選挙を目前に控え、民主党候補のアブドゥル・エルサイードに大きな打撃となった。エルサイードはエジプト移民の息子で、医師出身の進歩派政治家。当選すればアメリカ史上初のイスラム教徒の連邦上院議員となる。イスラエルへのアメリカの軍事援助停止を訴え、予備選では親イスラエル派のスティーブンスと激しく対立した。スティーブンスは8月の民主党予備選でエルサイードに僅差で敗れ、その後はエルサイードを支持していた。だが、イスラエルをめぐる両者の対立が選挙戦の終盤に激化し、民主党の結束をアピールする選挙イベントから外された。そのわずか数時間後、スティーブンスはデトロイトの教会にロジャースとともに現れ、支持を表明した。民主党が上院の多数派を奪還するには、ミシガン州は落とすわけにいかない州の1つだ。現在、上院の議席数は共和党53、民主党系47。民主党が過半数の51議席を獲得するには、今回改選される13議席をすべて守り、共和党から4議席を奪う必要がある。現在民主党が保持するミシガン州で敗れれば、共和党から奪うべき議席は5つに増える。エルサイードはスティーブンスの支持変更を意に介さない姿勢を示し、政治的な駆け引きよりも政策論争に集中したいと記者団に語った。「結局のところ、私はヘイリー・スティーブンスのことなど考えていない。政治的な駆け引きより、政策そのものに関心がある」民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務は、スティーブンスの決断を「卑劣な裏切り」と非難し、上院民主党は引き続き結束してエルサイードを支持すると表明した。また、共和党によるエルサイードへの攻撃は「人種差別的でイスラム嫌悪に基づくものだ」と批判した。一方、スティーブンスはロジャース支持の決断を擁護した。「ある時点で、誰が国のために立ち上がっているのかを見極めなければならない」と記者団に語り、「私が投じる票の90%は民主党候補へのものになるだろう」としながらも、上院選ではロジャースに投票すると明言した。ロジャースはスティーブンスを称賛し、両者が手を組んだ理由の1つは、ミシガン州で広がる反ユダヤ主義に対抗することだと説明した。「憎悪の声があまりに大きくなり、この州の一部の住民の安全が脅かされることがある」とロジャースは述べ、嫌がらせを受けているユダヤ系学生の問題を指摘した。「もう行き過ぎている」

11月1日、アイオワ州ダビュークで行われた共和党の選挙集会に現れたドナルド・トランプ大統領もスティーブンスの決断を称賛し、共和党に加わるなら歓迎すると語った。


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スティーブンスとエルサイードの決裂は、今年の民主党予備選以来、ミシガン州の党内でくすぶってきた路線対立を浮き彫りにした。8月の予備選では、エルサイードが得票率48.4%でスティーブンスの47.6%を上回り、1万4000票未満の僅差で勝利した。スティーブンスは民主党主流派の多くから支持を受けていたのに対し、エルサイードには全国的に知られる進歩派の有力者が支持を寄せていた。両者の対立点の1つとなったのが、中東へのアメリカの関与、とりわけガザでの戦争をめぐる外交政策だった。選挙戦の最終盤、エルサイードを支持する独立系政治活動委員会「リベリオンPAC」が資金を提供した広告をきっかけに、対立が再燃した。広告には、スーパーで買い物をする夫婦が登場する。2人は卵のパックを棚に戻しながら、「パレスチナ人を殺すために、その7ドルを取っておかなければならないからだ」と話し、ガザで戦争を続けるイスラエルへのアメリカの軍事支援を批判する。ユダヤ系団体の名誉毀損防止同盟(ADL)は、この広告を「反ユダヤ主義の典型例」と非難。スティーブンスもエルサイードに対し、広告を明確に非難するよう求めた。エルサイードはこの広告の制作にも承認にも関わっておらず、PACの主張とは距離を置く姿勢を示した。10月31日には記者団に対し、広告には一切関与していないと改めて説明し、それ以上のコメントを控えた。

また、イスラエルへの批判が反ユダヤ主義に当たるとの指摘も否定し、「ユダヤ人の安全は、自分の子供たちの安全と同じくらい大切だと考えている」と述べた。


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一方でスティーブンスは、自分が民主党員であることに変わりはなく、これまで掲げてきた政策的な立場も維持すると強調した。ロジャースはスティーブンスの支持を得られたことを「光栄に思う」と述べ、今回の支持表明は党派的な対立ではなく、憎悪に立ち向かうためのものだと説明した。「これは何よりも、憎悪に対抗して団結し、この州と国の未来を守ろうとする意思表示だ」スティーブンスの決断に、民主党内から激しい反発が巻き起こった。本人のスタッフからも辞任者が相次ぎ、エルサイードへの支持を表明した。スティーブンスの首席補佐官ジャスティン・ジャーマンは、自分を含む複数のスタッフが、ロジャース支持の表明を受けて辞任したと明らかにした。「スティーブンス議員がマイク・ロジャースを支持するという決断を下したことに、私たちは衝撃を受け、深く心を痛めている」とジャーマンは述べた。さらに、「今朝の時点で、私を含む多くのスタッフが辞任した」と説明し、ミシガン州の有権者にエルサイードへの投票を呼び掛けた。ミシガン州民主党委員長のカーティス・ハーテル・ジュニアもスティーブンスの決断を批判し、州民主党は引き続き結束してエルサイードを支持すると強調した。

全国レベルでも批判が広がった。民主党上院選挙委員会の委員長を務めるキルステン・ギリブランド上院議員は、エルサイードへの支持を改めて表明し、ロジャースが当選すればトランプの政策を支持することになると警告した。


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最近の世論調査では、おおむねエルサイードがロジャースをリードしている。ただし、リードの幅は調査によって異なる。CNNと調査会社SSRSが10月20~27日に実施した世論調査では、投票する可能性が高い有権者の支持率はエルサイードが49%、ロジャースが42%だった。一方、10月15~18日に実施されたマリスト大学の調査では、エルサイードが50%、ロジャースが48%と接戦になっている。2ポイントの差は誤差の範囲内だ。それ以前に実施されたユーガブの調査でも、エルサイードが49%、ロジャースが48%と、わずか1ポイント差だった。いずれの調査もスティーブンスがロジャースへの支持を表明する前に実施されたものだ。投票直前の突然の支持変更が有権者の判断にどのような影響を与えるかは、まだ分からない。

ヘスス・メサ(政治担当)

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