広島ルーキーMF中村草太、4戦連続アシストも燃やし続ける向上心「もっと点を」「判断がまだ甘い」森保監督は攻守に高評価
MF中村草太
[6.22 J1第21節 横浜FC 0-4 広島 ニッパツ]
サンフレッチェ広島の明治大卒ルーキーMF中村草太が前半39分、ロングレンジの浮き球パスでDF新井直人のヘディングシュートを導き、J1リーグ戦4試合連続となるアシストを記録した。
起点となったのは右CKの二次攻撃。多くの選手がペナルティエリア内に攻め上がるなか、自陣寄りで味方のパスを受けた中村は、右足ダイレクトでピンポイントパスを送り込んだ。「ピッチもデコボコしていたし、(精度には)自分でもびっくりしたけど、狙い通りは狙い通り」。本職はアタッカーだが、ここ最近はウイングバックでの起用が中心。ダイレクトパスの選択は、ポジションゆえに求められるリスクマネジメントを踏まえたものだったという。 「あそこで不用意なプレーをして失ったり、カウンターを受けるよりはワンタッチで入れようと思った。止めていたらトラップミスをするかもしれないし、最悪ゴールキックになっても戻れるので、とにかくシンプルなプレーをしようと」。そうした緊迫感のなかでも、関東大学リーグで2年連続得点王・アシスト王に輝いたキックの精度は落ちなかった。 この日のアシストにより、5月25日のFC東京戦から4試合連続でのアシストを記録。今季のアシスト数はすでに6つを数え、MF相馬勇紀(町田)とMFファン・アラーノ(G大阪)と並んでリーグ2位タイに浮上した。 それでも中村に満足はない。「アシストもそうだけど、もっと点を伸ばしたい。リーグ戦ではまだ2点しか取れていないし、そこの貪欲さであったり、ゴールに向かっていくプレーはもっともっと増やさないといけない」。口にするのは大学からのキャリアを切り拓いた得点への渇望。「前線の3枚が収めてくれるので、自分の走力とポジショニングの良さを活かしてもっといい位置に入れたら」とさらなる意欲を燃やしている。 またそうした中村の向上心は攻撃だけでなく、ウイングバックでの守備にも向いている。 この日は献身的なプレスバックと粘り強い相手選手へのアプローチが光り、横浜FCの攻撃を無失点に抑えたが、試合後には反省点として「前半のファウルの回数、コーナーにした回数」に着目。「今日の相手はセットプレーが武器で、(キッカーの)福森選手もいるなか、判断のところがまだ甘かったところがある」と自身の伸びしろを見つめていた。 ウイングバック初先発で失点に絡んだ4月25日の第12節・浦和戦では、相手のカウンターをファウルで止めなかったことを悔やんでいた。そのことを思えば、効果的なファウルを繰り出せるようになった現状は次のステップとも言える。 しかし、それでもなおウイングバックの役割と「一本でもミスをしたら試合が終わってしまうポジションなのでまだまだ難しい」と謙虚に向き合い、さらに突き詰めようとしているようだ。そうしたウイングバックでの熟達において、頼りにしているのが左ウイングバック起用の際に背後で支えるDF佐々木翔の存在だという。
「翔さんがアドバイスというか、よく声をかけてくださるのでそこが一番大きい。また自分がもし抜かれても後ろに翔さんがいる心強さで、なんとかなるんだろうなというところがあって、チャレンジしやすい環境にいると思う」。35歳の今も圧倒的な対人能力を誇るベテランにも支えられながら、Jリーグでの存在感を着実に高めているようだ。そんな中村の攻守にわたるパフォーマンスには、この日の試合を視察していた日本代表の森保一監督も高評価を送った。
「非常に攻撃の局面を打開する能力があり、自分のスピードを生かしながら駆け引きと決定力がある選手で、攻撃の部分の良さを第一としている選手かなと思って見ていたが、守備の部分も含めてタスクをしっかりとこなせる選手ということで(見ている)。ここ最近はウイングバックでしっかり守備から攻撃に移るということもやっていて、自分の特徴を持ちながら、与えられた役割をしっかりこなせるクレバーな選手だと思います」 このまま結果を出し続けながら攻守のプレー水準をキープすれば、7月のEAFF E-1選手権での日本代表入りも大きく近づくはず。中村も「そういったところに選ばれたい気持ちはある」という意識は隠さない。 ただ、その大きな目標も広島でのプレーの延長線上にある。「まずはこの広島でポジション争いに勝ち続けて、試合に出るところが今は一番大事かなと思っている。ここからケガ人も帰ってきてポジション争いが激化してくると思うので、そこでしっかり勝ち抜きたい」。これまで長年続けてきたように、目の前のステップは着実に上っていく構えだ。 (取材・文 竹内達也)●2025シーズンJリーグ特集▶お笑いコンビ・ヤーレンズのサッカー番組がスタート!