デモ拡大…死者数も情報錯綜 ネット遮断の裏で何が?イラン出身女性「祖父母と連絡が取れない」
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治安当局との衝突などで、死者は少なくとも2400人…イラン全土に広がった反体制デモ。トランプ大統領はデモ参加者と治安当局との衝突が激しくなる中、イランへの介入を示唆し、国民に対しては抗議デモを続けるよう呼びかけた。
そもそもの発端は急激な経済の悪化であった。先月28日、イランの通貨「リアル」が急落して過去最安値を更新。さらに激しいインフレもあり、首都テヘランなどで反体制デモが発生した。その後デモはイラン全土およそ180都市に拡大し、一部が暴徒化したため治安当局が徹底的な鎮圧に乗り出し、犠牲者が増え続ける事態となった。遺体安置所や医療当局の前には多くの遺体が運び込まれ、悲しみの中で身元確認が行われている。
これに対し、イランのペゼシュキアン大統領は「アメリカとイスラエルが、暴徒たちの背後で指示を出し、支援している」と主張。また、イラン当局がインターネットを遮断したとも言われていて、犠牲者の正確な数の把握は難しくなっている。イラン在住のジャーナリスト、フセイン・シャイトゥ氏はインターネットが通じる国境近くで「通信が遮断され、国民は1日に1時間放送されている国営メディアからしか情報を得ることが出来なくなっている」と国内の状況を報告した。中東情勢が緊迫する中、今イランで何が起こっているのか。専門家とともに『ABEMA Prime』で考えた。
■ なぜデモは拡大し、変質したのか
今回のデモが急速に拡大した背景について、慶應大教授、中東研究者の田中浩一郎氏は「経済問題という、全国に共通した意識を広げるだけの内容があったことは間違いない。しかし、それ以上に瞬く間に暴動にまで発展し、反体制的なスローガンに取って代わった。2025年はイラン人にとって水不足や、2024年6月のイスラエル、アメリカによる攻撃など、ろくなことがなかった。そこに通貨下落やガソリン値上げが重なり、経済的な不況をさらに苦しくするものだという受け止め方だった」と分析する。
また、2022年に女性がヒジャブを着用しなかったことで死亡した事件に端を発したデモと比較し、「今回は反体制のスローガンが叫ばれるまでの時間が圧倒的に短かった。また、デモ隊側にも武装していた人たちがいた。前回は女性の参加者が多かったが、今回は圧倒的に男性だ」との変化を指摘した。
イラン出身のロクサーナ氏は、「今回の件に関しては、もう本当に我慢の限界というか、国民の生命の限界が来ている上での大きな拡大だ。本来自分たちを守ってくれるはずの政府が、外交的に他国と仲良くできなかったから制裁で苦しめられている。規則も厳しく表現の自由もない。どっちに転んでも苦しめられている状況だ」との思いを語った。
デモ参加者は何を求めているのか。「国民の生活の安定と保障、そして生命の危機の回避が一番だ。外交のあり方や、誰と味方になるかなどは、正直イラン国民にとっては二の次でいい。今の経済状況を変え、人間としての人権が守られる状況を切望している」と答えた。
■ ネット遮断の狙い
イラン国内では政府によるインターネットの大規模遮断が続いている。田中氏はその狙いを2点挙げた。「1つはデモに参加するための横の連絡を絶ち、デモが成立しないようにするため。もう1つは外に情報が出ないように、あるいは外から情報が入ってこないようにするためだ」。
さらに、軍事力で弾圧する様子を外に漏らさない意図もあるとし、「解除した途端に情報が溢れ出てくるため、解除がしにくく、かなり長く続けるつもりだろう。現在、唯一繋がるのは最高指導者のウェブサイトだけだ」と話した。
1月4日を最後に祖父母らと連絡が取れていないロクサーナ氏は、「ネット遮断から一切連絡が取れなくなった。国内での動画をスターリンクなどを利用してSNSに上げている人もいるが、それ自体も妨害されて使えなくなっている」と、現地の過酷な情報環境を説明した。
■ 混迷する中東情勢と日本の役割
今後の中東情勢について、田中氏はアメリカの動向を「アメリカは西半球に専念したいと考えている。その代わりに、イスラエルのネタニヤフ首相が中東を作り変えると言っている。軍事的にイスラエルに太刀打ちできる国は地域にはいない。インドとイスラエルでイスラム圏を挟み込むような発想ではないか」と推測した。
コラムニストの佐々木俊尚氏は、「今の時代はトランプ氏やネタニヤフ氏、プーチン氏など、何を考えているかわからない強い人が山ほどいて、国際社会をイメージするのが非常に困難だ」。
その上で日本の立ち回りについて「なんでもかんでも敵味方で考えるのは良くない。イランの国民が何を求めているのかを理解し、判断することが大事だ。法の秩序の下で世界全体が平和であることを願う、イデオロギーに飲み込まれない視点が必要だ」とした。
ロクサーナ氏は「苦しい時こそ、物事を単純に『敵か味方か』で決めず、複雑にバランスを考えていく必要がある。これ以上犠牲者が増えないように、早く収束していい方向に向かってほしい」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)