ソニー「ブラビア」を引き継ぐ中国TCL、日本で「アートテレビ」を投入
2026年1月、ソニーがテレビやホームオーディオなどのホームエンタテインメント事業をTCLとの合弁会社に移管すると発表し、業界に衝撃が走った。出資比率はTCLが51%、ソニーが49%。2027年4月の事業開始を目指し、合弁会社の製品には「ソニー」「ブラビア」のブランドが引き続き使われる。3月末を期限に確定契約の締結に向けた協議が進んでいる。
ブラビアの行く先を握るTCLとは、どのようなメーカーなのか。TCLは中国・広東省に本拠を置く総合家電メーカーで、テレビの世界出荷台数はサムスンに次ぐ2位。2025年12月にはサムスンを抜いて月間出荷で首位に立つ場面もあった。
同社の強みは、傘下のパネル製造会社TCL CSOT(華星光電)にある。中国・深圳と恵州に大規模な製造拠点を持ち、液晶パネルの開発から生産までを一貫して手がける。いわゆる垂直統合型の事業モデルだ。ソニーをはじめ他社メーカーがパネルを外部調達に頼る中、TCLはパネルの内製によるコスト競争力を武器に、ここ数年で急速にシェアを拡大してきた。Mini LEDテレビやGoogle TV搭載テレビの出荷台数でも世界首位を確保している。
日本市場には2019年から本格参入した。BCNランキングの2025年年間集計によると、液晶テレビのメーカー別販売台数シェアはTVS REGZAが26.0%で首位、シャープが19.0%、ハイセンスが17.6%と続き、TCLは10.8%で4位につけた。2021年時点の5.3%から着実にシェアを伸ばしているが、上位3社との差はまだ大きい。
そのTCLが3月16日、日本市場で新しいコンセプトのテレビを発表した。4K Mini LEDテレビ「A400 Pro NXTVISION TV」シリーズだ。量販店ではなく、クラウドファンディングプラットフォーム「GREEN FUNDING」を通じたテストマーケティングという手法を選んだ。
A400 Proのコンセプトは「テレビを絵画へ」。ベゼルにライトウォールナットの木目仕上げを採用し、本体の厚さは約4cm。一般的なテレビを壁掛けすると壁から10cm程度の隙間ができるが、A400 Proは約3mmに抑えた。発表会で登壇したTCL Japanマーケティング戦略本部長の久保田篤氏は「壁掛けしても壁から相当前に出てしまい、ユーザーにとってメリットになっていなかった。フラットデザインでどこまで壁掛けが受け入れられるか検証したい」と語った。
映像には量子ドット(QLED)とMini LEDバックライトを組み合わせた。DCI-P3色域カバー率は93%で、ローカルディミングは75V型が240分割、55V型が112分割。低反射のマットHVAパネルはIPSパネルの約3倍の光透過率を持ち、輝度を下げても映像が見やすい。リフレッシュレートは55V型以上が144Hz対応で、43V型は60Hzにとどまる。
テレビを使っていない時間帯に絵画を表示する「アートギャラリーモード」には86種類の有名絵画を収録した。ゴッホの「ローヌ川の星月夜」に花火が打ち上がったり、モネの作品の人物が動いたりと、BGMや効果音付きの演出がある。テイストやキーワードを選ぶとAI生成されたイラストをダウンロードできる機能や、スマートフォンの写真をアップロードして表示する機能も備えた。音響はONKYOとの共同開発で、スピーカーを側面中間に配置してDolby AtmosとDTS-Xに対応する。
価格は43V型が8万9800円、55V型が14万9800円、75V型が27万8000円。3月19日から5月8日までGREEN FUNDINGで支援を受け付ける。壁掛け用金具は付属し、別売のフロアスタンド(税込4万2800円)は55V型と75V型向けに用意する。久保田氏はターゲットについて「インテリアを大事にする人。テレビがインテリアを壊しているという声がある」と話し、40代を中心とした層を想定していると明かした。
A400 Proが搭載するマットHVAパネルや量子ドット技術は、いずれもTCL CSOTが開発したものだ。2027年に発足する合弁会社がブラビアブランドのテレビを開発・製造する際、こうしたTCL側の技術がどこまで共有されるのかは気になるところだ。
発表会後の質疑応答で、筆者はこの点を久保田氏に尋ねた。まず合弁会社との関係について、久保田氏は「合弁会社とTCL Japanはまったく別の組織であり、独自にそれぞれ進めていく」と明言した。連携の方針についても「基本的にはない」という。
続けてマットディスプレイや量子ドットなどの技術を合弁会社側に提供する可能性を聞くと、「まだ未定で、回答できない状況」だと答えた。合弁の確定契約が3月末に迫る中、両社の間でどのような技術の線引きが行われるのか、現時点では固まっていないようだ。
ソニーのブラビア事業を取り込む一方で、TCL Japanは自社ブランドでインテリア志向の新市場を切り拓こうとしている。クラウドファンディングというスモールスタートの結果が、パネルメーカーを抱える世界2位のテレビメーカーの日本戦略にどう跳ね返るのか。実機は二子玉川 蔦屋家電「蔦屋家電+」とSHIBUYA TSUTAYA内「GREEN FUNDINGタッチ&トライ」で3月20日から4月18日まで展示される。
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