トランプ氏と習氏が電話会談、貿易や台湾について協議 お互いを招待も
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は5日、中国の習近平国家主席と電話で会談した。会談後には、中国を訪問する意向を記者団に示した。
トランプ氏は「非常に良い会談だった」と述べ、主席をホワイトハウスに招待したと明らかにした。ただし両政府とも、それぞれ首脳の訪問日程については正式に認めていない。
両首脳の電話会談は、トランプ氏が2025年2月に中国との貿易戦争を開始して以来、初めてだった。中国国営メディアは、この電話会談がホワイトハウスの要請によって実現したと報じている。
トランプ氏はソーシャルメディアに、約1時間半にわたる会談の主な議題は貿易問題で、「両国にとって非常に前向きな結論に至った」と投稿した。
トランプ氏はこの日、ホワイトハウスの執務室でドイツのフリードリヒ・メルツ首相と会談した際、習主席との電話会談について「彼が私を中国に招待し、私も彼をここに招待した」と記者団に述べた。
さらに「お互いに招待を受け入れた。私は近いうちにファーストレディーとあちらに行くつもりだ。彼もこちらに来るし、できれば中国のファーストレディーと一緒に来てもらいたいと思う」と話した。
一方、中国側が発表した会談要旨では、習氏がトランプ氏を招待したことへの言及はあったものの、アメリカ側からの招待については触れられていない。
新華社通信によると、習氏はトランプ氏に対し、アメリカが「中国に対して講じた否定的な措置を撤回すべきだ」と述べたとされている。
習氏はまた、「中国は常に約束を守ってきた」と述べ、両国が合意に達した以上、その内容を順守すべきだと強調したという。これは、最近ジュネーヴで締結された米中間の合意を指しているとみられる。
この合意は、貿易関税の大幅削減を目的としたもので、トランプ氏は「完全なリセット」と表現していた。しかし、両国は互いに相手の合意違反を主張しており、緊張が再燃している。
この合意に先立ち、トランプ氏は複数の国からの輸入品に対して関税を引き上げたが、特に中国に対しては最高水準の関税を課した。これに対し中国もアメリカ製品に対する関税を引き上げ、報復措置の応酬が続き、関税率は最大145%に達した。
5月に暫定的な「休戦」が成立し、アメリカは中国製品への関税を30%に引き下げた。一方、中国はアメリカ製品への関税を10%に引き下げるとともに、自動車やコンピューターの製造に不可欠な希土(レアアース)の輸出障壁を撤廃すると約束した。
この合意では、90日以内に最終的な貿易協定を締結することが目標とされていたが、両国は互いに合意違反を主張し、交渉は停滞している。
アメリカは、中国が自動車やコンピューター産業に不可欠なレアメタルやレアアースの輸出を再開していないと非難している。
一方で中国商務部はアメリカの主張を否定し、アメリカが半導体に関する新たな規制を導入し、合意を損なっていると反論している。
こうした中でトランプ氏は先に、半導体設計ソフトウェアの輸出規制を新たに導入したほか、中国人留学生のビザ(査証)を取り消す方針を発表している。
これについてトランプ氏は、習氏との電話会談後、「レアアース製品の複雑さについて、もはや疑問の余地はないはずだ」と記者団に述べた。
トランプ氏はさらに、「中国人留学生は来ても構わない。まったく問題ない。正直に言えば、彼らを迎えるのは光栄なことだ」とした上で、「ただし、我々は彼らをチェックしたい」と話した。
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中国国営メディアは、習氏がアメリカに対し、台湾問題を「慎重に扱う」よう警告したと報じた。アメリカのピート・ヘグセス国防長官は先に、中国が台湾に対して「差し迫った」脅威をもたらしていると発言している。
ヘグセス長官は、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、「中国は軍事力を行使して勢力均衡を変えようとする現実的な準備を進めている」と述べた。
中国政府は台湾を「最終的に統一されるべき分離した省」と見なしており、統一のための武力行使も排除していない。一方、アメリカは台湾を軍事的に支援しているものの、「一つの中国」政策に基づき、公式には国家として承認していない。
中国メディアに提供された6日電話会談の要旨によると、習氏はアメリカに対し、「台湾問題を慎重に扱い、台湾の少数の独立派が中国とアメリカを危険な対立と衝突の状況に引き込むことを防ぐべきだ」と述べたという。
トランプ氏と習氏の電話会談は、両首脳の間で数カ月にわたって沈黙が続いた後、ようやく実現した。ホワイトハウスは、トランプ氏の就任初週から両者の会談の可能性を示唆していたが、今週初め、トランプ氏はソーシャルメディア上で不満をあらわにした。
トランプ氏は「私は中国の習主席が好きだ。これまでも、そしてこれからもそうだ。だが彼はとても手強く、交渉をまとめるのが極めて難しい相手だ!」と投稿した(編中:太字は原文では全て大文字)。
トランプ氏は、交渉に自分が直接関与するのを好むと明示しているが、中国側の交渉スタイルはこれとは異なる。
中国政府は通常、信頼のおける高官を交渉団の責任者に任命する。首脳同士の電話会談や会談は事前に綿密に計画され、あくまでも取り決めに沿って行われる。
また、中国政府は、アメリカの要求に屈したと見なされることを避けるものと予想される。