沖縄・石垣市長選「石破首相・玉城知事隠し」の選挙戦 2陣営、参院選苦戦で異例の判断
17日投開票の沖縄県石垣市長選は、前職の中山義隆氏(58)=自民、公明推薦=の陣営が自民党総裁の石破茂首相、新人の砥板芳行氏の陣営が「オール沖縄」勢力のリーダーである玉城デニー沖縄県知事のカラーを極力出さない選挙戦を展開している。異例とも言える「首相、知事隠し」の判断は、背景に自民と「オール沖縄」勢力がともに苦戦した参院選の教訓があるようだ。
中山氏は過去4回の市長選で、自公政権との太いパイプを強調。安倍晋三政権時代、自民は党本部から当時の石破幹事長、二階俊博幹事長らが来援するなど、挙党体制の応援を繰り広げるのが常だった。
しかし今選挙では、12日時点で党本部からの応援弁士はゼロ。総決起大会に東京から駆け付けたのは、以前から中山氏と親交がある国民民主党の山田吉彦参院議員で、告示日の出陣式では県内各市の市長らがマイクを握った。
選対事務所の壁に所狭しと掲げられた「為書き」にも、過去の市長選と異なり、石破首相をはじめとする政権幹部の名前は見当たらない。
「石破政権の幹部呼ぶのは逆効果」
こうした「石破隠し」の理由に挙げられるのが、自民党候補が敗北した7月の参院選だ。石破政権の不人気がたたり、自民党支持層の一部が参政党支持に流れたことが敗因とされる。
党本部の応援弁士が姿を見せないことについて、中山選対の幹部は「党本部から弁士を招くと手続きに時間がかかる」と説明。だが別の関係者は「今、石破政権の幹部を呼ぶのは逆効果」と表情を曇らせる。石破政権とのパイプを誇示すると、かえって支持離れを招きかねないという危惧があるとみられる。
中山氏が秋波を送るのは、自民党本部ではなく参政党だ。告示直前には中山氏が上京し、旧知の中である参政党の神谷宗幣代表と対談。神谷氏が中山氏支持を明言する動画をSNSで拡散し、参政党支持者へのアピールを強めた。
「オール沖縄」標榜せず
砥板氏の支持層は「オール沖縄」勢力の支持層と重なり、選対事務所には玉城知事の「為書き」も貼られている。だが、支持母体を前面に出さないのは砥板氏も同じだ。
砥板氏を擁立した市民団体は候補者選考に当たり、あらかじめ「オール沖縄」を標榜(ひょうぼう)しないことを組織内で確認した。
砥板陣営の関係者は「『オール沖縄』は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する勢力。辺野古移設は八重山では争点にならず『オール沖縄』を名乗る必要はない」と話す。
米軍基地がない八重山では、過去の選挙で「オール沖縄」のアピールが支持拡大につながってこなかった。参院選でも、八重山に限っては「オール沖縄」候補の得票は自民党候補に及ばず、かえって無党派層への浸透に課題を残した。
告示日、砥板氏の出発式には「オール沖縄」勢力の国会議員らが参加したものの、砥板陣営は2022年の前回市長選に続き、選挙期間中、玉城知事に来援を要請しない方針だ。
砥板氏もインタビューで、玉城知事の離島政策に苦言を呈するなど「オール沖縄」県政との距離感確保に腐心している。(八重山日報)