なんとトヨタが米国で値上げ敢行!? 大胆な行動の背景に見えるモノ

/ コラム

 2025年7月から、日本円で平均およそ4万円の値上げに踏み切った米国トヨタ。これは例の「関税」の影響による値上げか? と思いきや、国沢光宏氏によると、どうやら関税とは無関係だという。アメリカのクルマの価格設定はどうなっている!?※本稿は2025年7月のものです文:国沢光宏/写真:米国トヨタ

初出:『ベストカー』2025年8月10日号

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トヨタ カムリ。日本では2023年に生産終了したカムリだが、北米ではモデルチェンジした新型が販売されている

 米国トヨタが2025年7月1日に平均270ドル(3万9000円)の値上げをしたと報道された。「関税による値上げではない」と言っている。このあたりの事情を深掘りしてみたい。

 まずトランプ大統領は「関税を理由に値上げしたら許さない!」という姿勢。値上がりしたら「関税分は米国民が実質的な負担をしている」と国民にバレるからだ。そもそも関税は270ドルなんて低い金額じゃない。

 2万ドルのクルマでいえば関税だけで5500ドル(80万円)。270ドルの値上げなど焼け石に水である。したがってトヨタの主張は間違っていないと思う。じゃなぜニュースに?

 こらもうアメリカの事情をまったく知らない日本の記者さんたちが、勝手に関税と結びつけたからだ。アメリカでの自動車価格、関税と関係なく物価上昇分くらいの値上がりをしている。270ドルくらいならいつもどおり。

 日本にいると物価の上昇に敏感。というか日本のメディアは値上がり=悪と位置づけている。「値上げしちゃいかん」と思っているらしい。

 翻って世界を見ると、日本程度の物価上昇なら話題にもならない。日本の記者さんたちがアメリカに行くと、1年中値上がりの記事を書き続けたくなるだろう。ということでトヨタに限らず、すべての自動車メーカーが毎年値上げしているのだった。

 関税による値上げはないのか? 遠からず始まると思う。前述のとおり27.5%の関税は大きい。

 日本勢だけでなくアメリカの自動車メーカーも海外生産車をアメリカで販売しており、関税を取られている。短期間なら値上げしないで辛抱しただろうけれど、4月3日の関税開始からすでに3カ月。皆さん辛抱できない。さまざまな理由をつけ、大幅な値上げに踏み切るんじゃなかろうか。

 もちろんトランプ大統領の意に反することながら、背に腹は代えられまい。大赤字垂れ流しのまんまクルマを売ることなどできないですから。

 もちろんアメリカ工場の生産分もあるため、関税の対象はアメリカで販売している3分1くらいか。それだって平均すれば20万円前後の値上げ圧力になると思う。そうなるとアメリカ国民も関税の意味がわかるかもしれません。

 ここまで読んで「値上がりするまでアメリカ人はわからないの?」と思うだろうけれど、わからないのだろう。日本人だって中国に対する日本の甘過ぎる対応を看過している。

 いや、一部の人は問題意識あるけれど、国民の代表である国会議員がまったく動かない。アメリカからすれば「なんで対応しないの?」。世の中、そんなモンです。

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