法廷で土下座、車内に焼酎容器 暴走トラックが奪った「3世代の命」
女性はいつも3人の姿を思い浮かべている。
食器を洗えば、夫の分担だったと思い出す。
スーパーで買い物をすれば、2歳の長男の好物だったプリンに目が留まる。
義理の父は長男にいつも目尻を下げていた。
あの日、3世代の命は突然奪われた。暴走したトラックによって。
女性は車の運転でハンドルを握るたびに考える。3人はどんなに怖かっただろうか。
リビングに飾られた家族写真
「晴れの日がつらいんです」
女性は2月5日、取材で前橋市にある自宅を訪ねた記者に打ち明けた。
リビングには、夫の塚越寛人さんが長男の湊斗ちゃんと幸せそうに眠る写真が飾られている。ただ、そのそばには2人の遺影が置かれた仏壇がある。
交通事故が起きたのは2024年5月6日。ゴールデンウイーク最終日だった。
寛人さん(当時26歳)が運転する車には、湊斗ちゃん(同2歳)と隣の市に住む寛人さんの父正宏さん(同53歳)が乗っていた。埼玉県のレジャー施設に行った帰りに、群馬県伊勢崎市の国道でトラックに衝突された。
晴れた日はよく家族で遊びに出かけた。3人を失った今、天気が良いと女性はふと思いに襲われる。なぜ、私はどこにも行かないんだろうと。
腕の中で息絶えた長男
だんらんの中心はいつも湊斗ちゃんだった。
寛人さんの膝に乗って朝食のパンを食べ、女性がくしゃみをすれば「大丈夫?」と案じてくれた。
正宏さんは、寛人さんと競い合うように抱っこしていた。
女性のおなかには当時、新たな命が宿っていた。湊斗ちゃんは兄になる予定だった。
あの日、女性が仕事から帰宅しても夫の車はなかった。「まだ帰ってないんだ」と夕飯の準備をしながら待った。
救急隊から連絡があったのは午後5時ごろ。「3人とも意識がない」と告げられた。それぞれ別の病院に搬送されていたが、湊斗ちゃんがいる病院に向かった。
出発前、湊斗ちゃんは元気な声で歌っていた。だが、無言で横たわった顔は、一目で分からないほどに腫れていた。手のほくろから、確かに湊斗ちゃんだと分かった。
夫が即死したという連絡をこの間に受け、女性はパニックになり、泣き叫んだ。「おなかの赤ちゃんのために息を吸って」。病院関係者からなだめられた記憶がある。
「湊斗だけは生き残って」と願った。しかし、処置した医師は「手を尽くしたけれど助からない」と言った。女性は「まだ息をしていますよ」と声を振り絞ったが、腕の中で湊斗ちゃんは息を引き取った。
火葬までの5日間、寛人さんと湊斗ちゃんの間で眠った。夫の顔は傷だらけ。長男の小さな手を握り続けたが、柔らかな肌は徐々に色を失い、乾いていった。
2カ月後、女性は次男を出産した。新たな命を育むことに追われ、少しだけ事故のことを考えない時間もできた。
それでも抱きついてくる次男の仕草に湊斗ちゃんを思い出さずにはいられなかった。女性はうつ病と診断された。
飲酒運転は故意か、過失か
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