「GPT-5は期待外れ、でも立ち止まれない…」AI開発の限界が囁かれる中、巨大IT企業たちが仕掛ける「最後の賭け」の行く末(小林 雅一)
今、株式時価総額(企業価値)で世界トップのNvidiaは先週月曜日(米国時間)、OpenAIに最大1000億ドル(15兆円前後)の巨額投資を行う計画を明らかにした。
OpenAIはこの膨大な資金を使って、今後Nvidia製の先端GPU(AI半導体)を大量に購入し、それを現行のGPTシリーズに続く次世代AIの開発・運用に投じる予定だ。
大量GPUの消費電力は東京都の総世帯分に匹敵
OpenAIがNvidiaから購入するのは(来年の下半期にも発売されると見られる)「Vera Rubin」と呼ばれる次世代GPUだ。これは現在、最新・最強のNvidia製GPU「Grace Blackwell」(GBシリーズと呼ばれる)の2倍以上の性能に達する見通しだ。
この「Vera Rubin」シリーズのGPUをOpenAIは実に400万~500万個も購入するという。ちなみに従来のChatGPTのベースにあるLLM(大規模言語モデル)の開発に使われたGPUの数は数万~十数万個程度と言われるから、この400万~500万個という数がいかに途方もない規模であるかが伺える。
OpenAIはこれら膨大な数の先端GPUを収納するデータセンターを、新たに数十棟も建設する計画とされる(個々のデータセンターではなく、数十棟全部を足して総計400~500万個のGPU(Vera Rubin)を収納するという意味だ)。
これらのデータセンター群が消費する電力量は少なくとも10ギガワット以上に達する見込みだが、これは一般家庭750万~800万戸分に相当するという。因みに東京都の総世帯数は2025年現在で約790万戸と見られており、10ギガワットのデータセンターはそれにほぼ匹敵する。思わず「正気か?」と耳を疑いたくなるような途方もない計画である。
Photo by gettyimages非現実的と見られる巨大プロジェクトに現実性を持たせる
このNvidiaによるOpenAIへの巨額投資が発表された翌日には、今度はOpenAIが実に4000億ドル(60兆円前後)を投じて、オハイオやテキサス州など全米5か所に新たなデータセンターを建築する計画を明らかにした。
ただ、この計画は今年1月にホワイトハウスで発表された最大5000億ドル(75兆円前後)の「スターゲイト計画」の一環である。では、なんで今頃、改めてそれを発表するかというと、その理由はどうやら、この途方もない計画に信憑性を持たせるためらしい。
確かにスターゲイト計画の背後には日本のソフトバンクなど大手のテック投資企業が控えているとはいえ、いくらなんでも「5000億ドル」に上る資金は「現実の企て」として見るには大き過ぎる。実際、投資業界の関係者の中には、「本当にそんな大金を調達できるのか?」と懐疑的な目で見る人も少なくない。
そうした中、今回あえて「実際に4000億ドルまでは調達する目途がつきました。データセンターの建設も具体化してるんですよ」というのを公式にアピールするのがOpenAIの主な狙いのようだ。
これに先立ってOpenAIは(スターゲイト計画の一環として)既にデータセンターの建設が始まっているテキサス州アビリーンに報道関係者を招いて、工事現場の様子などを具(つぶさ)に取材させているが、これも恐らく同じ目的だ。
https://gendai.media/articles/-/157828
また、本稿冒頭で紹介したNvidiaからOpenAIへの巨額投資計画も、(OpenAIにとっては)やはり同様の目的だろう。
つまり(最大5000億ドルの資金のうち少なくとも)1000億ドルをNvidiaが事実上保証することによって、「スターゲイト計画は決して絵に描いた餅ではなく、資金繰りの目途がついた現実的なプロジェクトだ」ということを、投資関係者をはじめ大勢の人々に信じて欲しいのだろう。