ロシアの逆鱗に触れる? 独新首相がついにウクライナ供与を表明した「虎の子ミサイル」とは 日本も無関係じゃない
ドイツの次期首相はロシアの侵略を受けるウクライナに対して、空中発射型巡航ミサイル「KEPD350」を供与する考えを明らかにしました。同ミサイルはこれまでウクライナへの供与が見送られてきましたが、一体どんな性能を持っているのでしょうか。
ドイツは慎重、でもイギリスは供与支持
ドイツの新首相就任が予定されている、キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首は2025年4月13日、ウクライナが長らく求めていた空中発射型巡航ミサイル「KEPD350」を供与する考えを明らかにしました。
ドイツ空軍のトーネード攻撃機とKEPD350(画像:MBDA)。ウクライナはフランスとイギリスから、空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドウ/スカルプEG」の供与を受けています。ウクライナはドイツに対して「KEPD350」の供与を求めていましたが、ウクライナ領空から発射してもロシア領内に届いてしまう射程の長さなどを理由に、オラフ・ショルツ社会民主党党首を首班とする現政権は供与を拒否していました。
メルツ党首はウクライナへのKEPD350の供与は、同国を支援している各国の合意を前提とすると述べていますが、2025年4月16日付のイギリスの新聞「テレグラフ」は、政府関係者の話として、イギリスが以前からドイツがウクライナにKEPD350を供与することを支持しており、新首相がその決断を下すのであれば、その動きを支持すると報じています。
その一方でロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ロシアの重要な輸送インフラに対してKEPD350による攻撃が行われた場合、ウクライナ紛争へのドイツの「直接的な」関与とみなすと警告しています。また、CDUと連立して内閣を組織する見通しの社会民主党のマティアス・ミアシュ氏はドイツのテレビ局のインタビューで、「我々は紛争の当事者になるつもりはない」と述べており、現政権と同様、ウクライナへのKEPD350の供与には慎重な姿勢を示しています。
ドイツがウクライナへの供与を躊躇し、ロシアが供与に神経を尖らせるKEPD350とは、どのような兵器なのでしょうか。
●発射後、翼がにゅ~んと伸びて飛翔
KEPD350はMBDAのドイツ法人MBDAドイッチュラントと、現在はスウェーデンのサーブの一部門となっているサーブ・ボフォース・ダイナミクスが共同で設立した企業のタウルス・システムズによって開発されました。動力源にはウィリアムズWJ38-15ターボファン・エンジンを使用しており、最大速度マッハ1.0で飛翔します。発射母機から投下後は主翼を展開して飛翔する仕組みとなっており、最大射程は500km以上と発表されています。
KEPD350は用途に応じた弾頭を弾体中央部に搭載できますが、その一つで「メフィスト」(Multi-Effect Penetrator Highly Sophisticeted and Target Optimised)という名称の500kg弾頭は、前方に配置された成型炸薬弾頭と後方に配置されたやや細めの弾頭で構成されています。前方の成型炸薬弾頭が地下施設や強固な防護力を持つ指揮所などに穴を開けた後、後方に配置された弾頭により内部を破壊する仕組みで、厚さ5m以上の鉄筋コンクリート構造物を貫通する能力があると言われています。
またエアバースト(空中炸裂)モードを備えた弾頭を使用すれば、屋外に露天駐機された航空機はもちろん、レーダーや地対空ミサイルなどにより構成される敵防空網を面制圧することもできます。