トランプ米大統領、クックFRB理事の解任を求め最高裁に上告

トランプ米大統領は、クック連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を認めるよう、連邦最高裁判所に上告した。中央銀行の独立性に重要な意味を持つ係争に最高裁が直接関与することになり、その判断次第では米経済に重大な影響を及ぼす可能性がある。

  米司法省は18日、当面のクック氏の職務継続を認めた連邦高裁の判断を少なくとも一時的に差し止めるよう最高裁に要請した。

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  クック氏の弁護団は同日、法廷闘争中の職務継続の可否判断に先立ち、トランプ氏による即時解任の許可要請を退けるよう、最高裁に求める書面を提出。一時的であっても現状変更があれば、「米国の金融システムを不安定化させ、米経済に深刻な損害を与える恐れがある」と主張した。

  トランプ氏は先月、クック理事を解任すると発表。クック氏が2021年に住宅ローンを取得する際にミシガン州とジョージア州の住宅を「主たる居住地」と申告し、有利な条件を得た疑いがあるとするパルト連邦住宅金融局(FHFA)局長の指摘を受けて、講じた措置だとトランプ氏は説明した。クック氏は疑惑を否定し、現在も職務を継続。16、17両日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)会合にも出席した。

  FOMCの17日の政策決定でクック氏は、労働市場の減速を踏まえて0.25ポイント利下げを支持した多数派に加わった。反対票を投じたのはトランプ氏の側近であるマイラン理事のみで、同氏は就任2日目のこの会合で0.5ポイントの利下げを主張した。

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  司法省のサウアー訟務長官は18日に提出した文書で、下級審の判断は「またしても大統領の解任権限に対する不当な司法介入の事例だ」と主張した。

クックFRB理事解任を求めたトランプ大統領の連邦最高裁への上告に関するリポート

  最高裁は今年、トランプ氏による他の独立機関幹部の解任を巡る別の訴訟で、FRBについて「独自の構造を持つ準民間の組織」と位置付けていたが、サウアー氏は、大統領が「正当な理由」に基づいて理事を解任する場合、その判断理由を審査する役割を裁判所は持たないと主張した。

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  ワシントンの連邦高裁判事は15日遅く、クック理事が解任の無効を訴える訴訟が進行している間は職務を継続できるとの判断を賛成2、反対1で下した。高裁の判断は、クック氏に対する住宅ローン不正の疑惑そのものには触れていない。またパルト氏の主張とは異なり、クック氏がジョージア州の住宅ローン関連書類で金融機関に「別荘」と申告していたとする週末の報道についても言及していない。

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  保守派判事が過半数を占める最高裁は今年、総じてトランプ氏の主張を受け入れ、連邦当局者を解任する権限を認める判断を示してきた。しかしFRB理事職を巡る争いは前例がなく、米経済に極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。 

原題:Trump Asks Supreme Court to Let Him Fire Fed’s Lisa Cook (4)(抜粋)

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