“絶滅”とされた「トカゲ」、およそ半世紀ぶりに再発見―― 繁殖成功で81匹の子どもも誕生、野生の個体群定着には課題も【海外】
すでに絶滅したと考えられていたオーストラリア固有の爬虫類、「ビクトリア州草原耳なしトカゲ(Victorian grassland earless dragon)」。生態学者が別の調査を進めていた最中に偶然、その姿を発見し、半世紀以上ぶりに生存が確認されました。
現在は秘密の場所で保護・繁殖プログラムが進められており、新たな命も着実に生まれています。
画像は「Colossal Foundation」からの引用ビクトリア州草原耳なしトカゲ(学名:Tympanocryptis pinguicolla)は、オーストラリア南東部の草原に生息する小型の爬虫類です。
1969年を最後に記録が途絶え、長らく「絶滅した種」と考えられてきました。しかし2023年、メルボルン郊外で住宅開発が計画されていた土地を調査していた生態学者が、偶然にも生きた個体を発見。その後の調査により、わずかながら野生個体群が生き残っていたことが確認されました。
かつてはメルボルン周辺の広い草原に分布していましたが、都市開発や農地の拡大によって生息地が急速に減少。現在、本来の草原はわずか0.5%ほどしか残っていないとされています。
画像は「agriculture.gov.au」からの引用再発見を受けて始動したのが、ビクトリア州動物園協会とコロッサル財団による保護・繁殖プロジェクトです。メルボルン動物園内には専用施設が設けられているものの、野生個体の保護を最優先するため、その詳細な場所は公開されていません。
施設内では、生きた植物や人工の巣穴を備えた環境のもと、個体ごと、あるいはペアごとに丁寧な管理が行われているとのこと。遺伝的多様性を維持するため、繁殖ペアの組み合わせにも慎重な調整が行われているそうです。
これまでに野生で確認された39匹のうち、11組の繁殖ペアが誕生。すでに81匹の幼体がふ化し、絶滅したと思われていた種の未来に希望をもたらしています。
さらに研究チームはゲノム解析を進めており、個体同士の遺伝的な関係性を明らかにすることで、より安定した保全繁殖の仕組みづくりを目指しています。
一方で、野生の状況は依然として極めて不安定です。
現在確認されている最後の野生個体群は、メルボルン西部の一つの私有放牧地のみ。土地所有者が長年にわたって草原を丁寧に維持してきたことが、生存につながったと考えられています。
専門家は、このまま1つの場所だけに頼る状況は非常に危険だと指摘してきました。病気や山火事、捕食者の増加など、たった一度の出来事で野生個体群が失われる恐れがあるためです。
メルボルン大学のブレンダン・ウィントル教授は、「成功とは動物園で飼育することではなく、保全繁殖によって野生で複数の個体群を定着させることだ」と説明。さらに、最後の生息地を恒久的に保護するため、政府が土地を取得し、自然保護区として管理すべきだと訴えています。
動物園では将来的に500匹以上の飼育個体を確保し、野生への再導入につなげる計画が進行中です。
半世紀以上もの間、絶滅したと思われていた小さなトカゲ。その再発見は、失われた種を守るためには、生息地の保全と継続的な保護活動の両方が欠かせないことを改めて示しています。