保育園でリンゴ詰まらせた男の子、意識不明のまま2年で体重は2倍に…両親が手記で「現実と向き合い進んでいくしかない」
愛媛県新居浜市認可の「新居浜上部のぞみ保育園」で、当時、生後8か月の田村康至ちゃん(2)が給食のリンゴを喉に詰まらせて意識不明になった事故から16日で丸2年となる。母の早希さん、父の敦さんが、読売新聞に手記を寄せた。
母・早希さんの手記
◇康至の様子
康至は事故後、身長は約15センチ伸び、体重は約2倍になり、しっかり成長しています。退院してからの約1年半、大きな急変もなく、落ち着いて家で過ごせています。リハビリの成果もあり、体の緊張は和らいできているように思います。
◇今の生活について
2歳の誕生日。室内を飾り付けて祝った(2024年8月31日撮影)夫と私が交代で24時間のケアをしています。2時間に1度の 痰(たん) 吸引のほか、健康維持や身体機能向上を目的に入院時から取り組んでいるリハビリは、週3回の訪問リハビリに加え、外来リハビリにも週2回通うようになりました。その合間に週3回の入浴、週1回の往診と訪問歯科、月1回の病院受診と予定が入っています。
毎週、毎月のルーチンが決まり、生活にも慣れてきました。日曜日は家族でゆっくり過ごす日にしています。お正月休みには、初詣やイルミネーション見物に行きました。最近は受診ついでに外食をしたり、お花見をしたりして、お出かけにも慣れてきました。
◇今後について
康至の容体が少しでも良くなるように、出来ることは全てしてあげたい。夫、長男との4人家族でやりたいことをしていきたいという思いも、以前から変わりません。
しかし、外出時間が長くなればなるほど、準備する持ち物の多さや、呼吸器の電源確保の面で大変です。
もうすぐ介護車両ができるので、夏は水上スポーツのSUP(サップ)をしに川や海に出かけたり、キャンプをしたり、冬はスノーボードをしに雪山に出かけたりと、事故前のように、四季を楽しみながら過ごしたいです。家族みんなでテーマパークに行き、思いっきり遊ぶことも目標です。
◇今の思い
ベッドの上で座位をとる康至ちゃん(2023年8月14日撮影)康至と同じ年頃の子を見たり、男の子の兄弟が騒いでいるのを見かけたりすると、「きっと康至もこんなふうに、元気に過ごしていたのかな」とほほえましい気持ちになると同時に、寂しさもこみ上げます。それでも、変わらない現実と向き合い、進んでいくしかありません。
康至が5日しか通えなかった保育園ですが、運営していくのであれば、より明確に組織・意識改革を行い、しっかりとした安全対策をとってほしいと思います。
二度と、私たちのような思いをする人がいなくなることを願い、これからも自分の言葉で伝えていけたらと思います。子どもに関わる全ての人に、今一度、何が大切かを見つめ直し、自分なら何が出来るかを考え、行動を起こしてほしいと思います。
最後に、康至のことをいつも応援してくださるみなさま、生活を支えてくださっているみなさま、関わってくださっている全ての方に心から感謝しています。いつも本当にありがとうございます。これからも、よろしくお願いいたします。
気持ちの面、支えに感謝
父・敦さんの手記
2年も 経(た) ったという感覚はなく、康至の日々の変化に順応していく毎日です。ケアの時間やタイミングも、その日の体調で微妙に変化しますが、対応にも徐々に慣れ、合間に他の用事をして過ごしています。
今は、たくさんの方々(相談員さん、訪問診療の先生、看護師さん、訪問看護さん、訪問リハビリさん、外来リハビリさん等)のおかげで、家族4人全員が安心して過ごすことができています。康至一人にたくさんの方々が関わってくださり、私たち家族は気持ちの面でも支えられています。大変感謝しています。
事故から半月後、ベッドで横たわる(2023年5月31日撮影)生活面では、康至の身につける服が市販の物だとなかなか使えず(ケアをする上でロンパースタイプが好ましいのですが、サイズが合わなかったり、見た目にカッコいい・かわいい物が少なかったり)、服を手直ししてくれる業者さんにお兄ちゃん(長男)のお下がりなどを持ち込んでいるのですが、どうしてもコスト面で負担になり、良い方法がないかと模索しています。
入院時から検討していた介護車両については、今年3月末にやっとワゴン車が購入でき、介護車両製作会社に改装をお願いしています。康至が退院してから、移動の際はバギー(ベビーカーの大きい物に呼吸器、吸引器、携帯用バッテリーなど計約30キロ)を夫婦で持ち上げて車に乗せて移動しているため大変で、リスクもあって神経を使います。
また、現在住んでいる場所は介護に不便な面があり、十分な介護ができるよう、住宅購入を検討しています。県内の金融機関には融資を断られ、非常に困っています。来春、3歳上のお兄ちゃんが小学生になります。早く解決したい気持ちと、今の状況をどうすればいいのか悩んでいます。
そうもしながら康至の変化に対応しつつ過ぎ去っていく日々に、将来の不安を抱きながら過ごしています。
◆保育事故は2023年5月16日に発生。康至ちゃんは同9日から「慣らし保育」で園に通い、同15日に離乳食の給食を始めたばかりだった。保育士から刻んだリンゴ(長さ7ミリ、幅2ミリ、厚さ3ミリ)二切れをスプーンで口に入れられ、様子が急変。意識不明の状態で病院に運ばれた。