宝塚ボーガン4人殺傷事件 重傷負った被告の叔母がコメント 無期判決に「彼の希望は通りませんでした」
兵庫県宝塚市で親族4人をボーガン(クロスボウ)で撃って殺傷したとして、殺人や殺人未遂の罪に問われた無職、野津英滉被告(28)の裁判員裁判の判決公判が31日、神戸地裁で開かれ、松田道別裁判長は無期懲役を言い渡した。求刑は死刑だった。
この事件で自身もボーガンで撃たれ重傷を負った伯母が判決を受けコメントを発表した。
コメントの内容は次の通り。
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まず、この判決に関わられた裁判官、裁判員の方々にお礼を申し上げます。
本当に大変なご負担だったと思い、ただただ頭が下がります。
死刑になりたいという、彼の希望は通りませんでした。
■「心の奥で罪悪感から逃げられないでいる」
当たり前ですが、法律や裁判は、彼の道具ではありません。
彼は犯した罪に向き合い、後悔し、反省しなければなりません。その機会が与えられた、命ぜられたという事だと思います。
彼が事件まで、強迫障害などで辛い日々を過ごしてきていたことは、側で見ていた私たちも少しはわかっているつもりです。
でも、裁判での彼は、自分の考えをしっかり述べることができていました。そして、心の奥底では罪悪感から逃げられないでいることもわかりました。
■「命が尽きるまで罪と向き合うこと願う」
事件当時の精神状態がどれだけ辛かったとしても、事件後に心に蓋をしてきたとしても、自分の罪がどんなに許されないことか、目を背けず向き合うことのできる心を取り戻すことができると思います。その命が尽きるまで、真摯(しんし)に罪と向き合える事を信じて、願っています。
殺された3人の命は、未来はとり戻せない。苦楽を分かち合ってきた家族は突然すべてを奪われ、皆、互いにどれだけ悔しかっただろうと、無念だっただろうと思わずにいられません。
そして、生き残った私が、これだけは言っておきたいことがあります。
3人は殺されてしまったがために、自分達の言い分を述べることができず、裁判の資料は、そのほとんどが彼の説明によるものでした。その結果、彼が家族に苦しめられていたということが過剰にフォーカスされてしまっていました。
■「あたたかさのない家庭では決してなかった」
でも、私は、1週間から10日に1度は彼らを訪問して、買い物の手伝いや、その他、家族の生活と大きく関わってきました。意見陳述でも申し上げましたが、家族は、決して彼を阻害していたのではありません。彼の母が食事を用意しなかったと言うことは決してなくて、彼の弟のメニューを作る時に、当たり前のように2人分を作っていました。家族からのコミュニケーションを拒絶してしまったのは彼の方で、それでも家族は彼を心配し、しんどい時には懸命に手伝おうとしていたのであって、彼が言うような、暖かさのない家庭では、決してありませんでした。
■「彼も大切な家族の一人」
一方で、殺された3人同様に、彼も私の大切な家族の1人でした。
大切な家族が、大切な家族を殺し、殺しかけたという事実、そして一生刑務所で過ごすということは、私にとってあまりに複雑で、表現し難い辛い心境です。
そんな中、罪と向き合わせることで償わせるという裁判所のご判断は、私にも響きました。
この事件をきっかけとして、ボウガンの扱いに関して、法律や条例にも影響与えてしまいました。本来は趣味として楽しんだり、真剣に競技として使用される物であったのに、世間をお騒がせし混乱させてしまった事は、とても心苦しく思います。
■「3人は障害抱え必死に食らいついて生きていた」
一方で、悪用されると極めて危険な面があることは確かだと思いますので、二度とこのような事件が起こらないことを切に願います。
最後に、この裁判では、発達障害や自閉スペクトラム症等のことが多く取り上げられましたが、決して、障害や特性を持つ方は危険であるということではありません。彼に関しては非常に残念でしたが、犠牲になった3人は、それぞれ障害などを抱えながらも、誰かに当たったりせず、必死に頑張って社会にくらいついて、それぞれの人生を生き抜きました。どうか、障害や特性について誤解がなされないように願いたいです。