「こうして私はテレビから消えました」ジャーナリスト・有田芳生氏が語る「旧統一教会を訴えた理由」(FRIDAY)

40年以上にわたり、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題を追及してきた衆議院議員でジャーナリストの有田芳生氏(73)。彼がここ数年、テレビから姿を消していることをご存じだろうか。 【戦慄】安倍晋三氏銃撃犯が事件前に試し撃ちをした旧統一教会の施設 テレビ局からの出演オファーが絶えた背景には「旧統一教会から起こされた裁判がある」と有田氏は言うのだった。 有田氏が訴えられたのは’22年10月。同年8月19日に放送された日本テレビ系の番組『スッキリ』での発言が名誉毀損にあたるとされたのだという。番組では、萩生田光一衆議院議員(61)と旧統一教会の関係が特集されており、有田氏はコメンテーターとして次のように述べた。 〈やはりもう、霊感商法をやってきた反社会的集団だってのは警察庁も、もう認めているわけですから〉(訴状原文ママ) 40分を超える特集の中の8秒の発言に対し、旧統一教会は有田氏と日本テレビに2200万円もの損害賠償を請求した。一審、二審ともに有田氏側が勝訴したが、 「訴えられた翌日から、テレビの出演依頼が本当にパタッと途絶えました。今に至るまで一本もありません」 と有田氏は嘆く。 「本人だけでなく、テレビ局も同時に訴えるのが彼らのやり方です。裁判の準備には膨大な時間と労力とおカネがかかります。忙しい番組担当者にとって、そんな手間は避けたい。だから『有田を出演させるとまた訴えられるからやめよう』となる。今回の訴訟で、教会は私をメディアから排除するという目的は達成できたわけです。これはまさに『スラップ訴訟』ではないか」 「スラップ(SLAPP、strategic lawsuit against public participation)訴訟」とは威圧目的で起こす訴訟を指し、「恫喝(どうかつ)訴訟」とも呼ばれる。求める賠償金が法外に高額なケースが多い。 有田氏が反撃を決意した理由 旧統一教会に訴えられたのは有田氏だけではない。安倍晋三元首相の銃撃事件以降、教団を批判した八代英輝弁護士、本村健太郎弁護士、紀藤正樹弁護士らも、テレビ局とともに高額な訴訟を起こされており、その多くが棄却されている。 そしてついに有田氏は反撃に出た。 ’25年1月、旧統一教会と田中富廣会長、一連の訴訟で旧統一教会の代理人を務める福本修也弁護士の三者を相手取り、1100万円の損害賠償を求める訴訟に踏み切ったのである。訴状にはこう書かれている。 〈『スラップ訴訟』の提訴は、被告とされる者に多大な応訴の負担を余儀なくされることを目的とした提訴として『裁判を受ける権利』の逸脱・濫用に当たる。 (中略)スラップ訴訟の違法の重大性は、単に被告とされる者のみならず、広く社会の同種言論の萎縮を余儀なくさせ、社会的に表現の自由を侵害するところにある。したがって、スラップ訴訟を違法とする本件訴えは、原告自身の損害の回復を求めるだけでなく、表現の自由を擁護するための訴えでもある〉 有田氏は「旧統一教会による言論弾圧は時代と共に進化している」と見ている。 ’70年代から’80年代初頭にかけては、批判記事の誤りを突き、謝罪や訂正記事を掲載させてきた。それらを「マスコミ謝罪集」としてまとめ、信者らに告知。「面倒くさい団体だ」とメディアに思わせることで、報道を自主規制させる一定の効果をあげた。 ’80年代半ば、朝日ジャーナルが教会を批判した際には、信者たちが一斉に抗議電話をかけ、朝日新聞社だけでなく近隣の国立がん研究センターや築地市場の電話回線までパンクさせた。有田氏によれば、「信者たちは10円玉を手に、特定の時間に一斉に電話せよと指示を受けていた」という。 ’92年にTBSが合同結婚式を批判した際には、一日で3万件もの抗議電話が殺到したという。 有田氏が訴訟を起こしたもう一つの目的 「電話攻撃のような直接的な嫌がらせは、教会のイメージを逆に悪化させる。だから、安倍元首相の事件後に旧統一教会への批判が再燃した今回は、ピンポイントでうるさい弁護士やジャーナリストを黙らせる裁判という合法的な手段で言論封殺を始めたわけです」(有田氏) 資金力や組織力を持つ団体が、批判的な個人やメディアを標的に訴訟を乱発するケースは後を絶たない。有田氏が続ける。 「日本でも当たり前のようにスラップ訴訟、嫌がらせ訴訟、口封じ訴訟が行われています。そんなことは許されないんだよ、ということを示す必要がある。今回の訴訟にはそういう目的もあるのです」 海外ではこうした「スラップ訴訟」を規制する「反スラップ法」の整備が進んでおり、言論の自由に反するとして抑止する州もあるが、日本には法規制はなく、野放し状態となっているのが現状だ。 フライデーデジタルの取材に、旧統一教会は次のように答えた。 ──有田氏を訴えたことに対して。 《警察庁が当法人を『反社会的集団』であると認めた事実はなく、当法人および教会員の名誉を著しく毀損するものであるため、当法人は提訴に踏み切りました。一連の裁判において、有田氏の当該発言が事実であるとは一切認定されていません》 ──「スラップ訴訟」だとして有田氏に訴えられたが。 《そもそも『スラップ訴訟』との評価が誤りです。当法人は、有田氏の根拠のない発言により、著しく名誉を傷つけられたのですから、名誉を回復するために裁判所に救済を求めるのは、当たり前のことであり、これが不当訴訟と判断される理由は全くありません。 むしろ、有田氏こそ、前件訴訟が不当訴訟の要件を充さないことを知りながら、世間の注目を集めるため、『スラップ訴訟の被害を受けた』などと主張して、本件訴訟を提起しており、この裁判こそが不当訴訟であると言えます》 有田氏が起こした訴訟は7月15日に東京地裁で第2回口頭弁論が開かれる。裁判の行方に注目したい。 取材・文:酒井晋介

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