ニセコ4000人分の水源ピンチ?17年前の所有者と土地めぐり敗訴 町が異例の署名活動

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 北海道のニセコ町で、市民生活の水源となっている土地の所有を巡って争いが起きています。ニセコ町が10年以上前に購入した土地について、17年前までの土地の所有者であるA社がB社との売買について「第三者が無断で行った」と明らかにしたのがきっかけで、A社はニセコ町に対し、土地の返還を求める裁判を起こしました。1審ではニセコ町が敗訴し、町が裁判所に訴えかける署名活動を始めました。

ニセコ町の水源巡り訴訟 署名で訴え

 25日まで受け付けている署名活動。地方自治体が自ら署名を集める異例の展開です。22日、北海道・ニセコ町の山本契太副町長が取材に応じました。

山本副町長 「公共の町民の生命を守るための水源を守る。そのために買った土地だということを十分に理解いただきたい」
羊蹄山のふもとにある広さ16万平方メートルを超える土地

 問題になっているのは、羊蹄山のふもとにある広さ16万平方メートルを超える土地です。人口のおよそ8割にあたる4000人に給水するために欠かせない水源で、ニセコ町が開発されるのを防ぐため2013年に取得しました。ところが。

4代前の所有者(町によると) 「不正に売買が行われた。売ったつもりはない」

 訴えを起こしたのは、ニセコ町からさかのぼって4代前の所有者、A社です。土地の登記簿上は、17年前にA社がB社に売却したとなっています。

 そのあと、C社、D社、そしてニセコ町へと所有が移っています。ところがA社は、第三者が土地を無断でB社に売り払ったと主張し、土地の返還を求めています。 

山本副町長 「何をおっしゃっているのかという正直そんな感じでした。ちょっと信じられない状況ですね。私どもは何を信用して土地を購入したんだっていうところで、その辺についてはどうしても納得がいかない」
売買の正当性をニセコ町が証明できなかったことが敗訴原因と町は分析

 ニセコ町からすれば、正当な取引のもとで取得した土地でしたが、去年9月、札幌地裁はA社の主張を認め、ニセコ町は敗訴しました。1963年の最高裁の判例が採用され、A社からB社への売買の正当性をニセコ町が証明できなかったことが敗訴の原因だったと町は分析します。

山本副町長 「最高裁の判例は、AからBに所有権が渡った時に、登記なり何なりが正しいか正しくないかはBが証明するという必要があるというような判例だった」

 ニセコ町は控訴し、来月高裁判決が下されます。集まった署名は裁判所に提出し、町にとっていかに大切な土地か、理解を促したいと考えています。

山本副町長 「町民の命と暮らしを守る土地なんだということを、町民の皆さんと一緒になってそういう土地だよということを、裁判所にもご理解いただきたいとそういう思いでやっています」

 ニセコ町の主張が通る可能性があるのか、若狭勝弁護士は次のように話しました。

「1審ですでにA社が勝っているとすると、高裁でひっくり返る可能性としては、決して高くはないですね。取得してから10年以上経っているわけだから。10年も、本当に自分のものだと思って、管理していたということだと、取得時効だという主張はかなり言えることは言えると思う」

(「グッド!モーニング」2025年8月23日放送分より)

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