日経平均に過熱シグナル?移動平均線かい離率10%超えの警戒ポイント(窪田真之)
10月最終週(営業日10月27~31日)の日経平均株価は、1週間で3,111円(6.3%)上昇して5万2,411円となり、史上最高値を大幅に更新しました。三つの強材料が重なって、日経平均急騰につながりました。
【1】高市首相の外交手腕に高い評価、高市政権への期待高まる
10月28日、迎賓館赤坂離宮で行われた日米首脳会談で、高市早苗首相はトランプ米大統領の心をつかみ、日米の強固な同盟関係を再確認できました。日中・日韓首脳会談、アジア太平洋経済協力(APEC)会議でも、高市首相は高度な外交手腕を発揮し、最初の外交日程を成功裏に収めました。これにより、高市氏の外交手腕および成長戦略への期待が一段と高まりました。
【2】AIラリー続く、日米でAI関連株が続急騰
アマゾン・ドット・コム(AMZN)、エヌビディア(NVDA)など米国でAI関連の半導体株・ハイテク株の好決算を好感して、AIラリーが続いています。これを受けて、ソフトバンクグループ(9984)、アドバンテスト(6857)など日本のAI関連株が急騰して、日経平均急騰のけん引役となりました。ただし、AI関連株は過熱感が高まっていることが懸念されます。
【3】米利下げ実施、日銀は利上げ見送り
10月29日に米連邦準備制度理事会(FRB)は0.25%の利下げを実施しました。一方、日本銀行(日銀)は10月30日の金融政策決定会合で利上げをしませんでした。日米とも緩和的状況が続くと期待され、株式市場に追い風となりました。また、日銀が利上げしなかったことを受けて1ドル=154円台へ円安が進んだことは、日本株にプラス材料となりました。
日本株の過熱感が高まる
政治経済両面から、日本株に好材料が続きましたが、日経平均の上昇ピッチがやや速すぎることを受けて、日経平均にはテクニカルに過熱感が強まっています。
<日経平均と13週移動平均線:2023年12月末~2025年10月末>
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成
日経平均は、13週移動平均線よりも、上に飛び出したり下に飛び出したりしながら、長期的に13週移動平均線の周りで推移しています。
【1】13週移動平均線からの上方かい離率が10%を超えたら短期「過熱」の可能性
短期的に上昇ピッチが速すぎる時は、移動平均線からの上方かい離率が拡大します。私は、13週移動平均線からの上方かい離率が10%を超えたら、注意が必要と考えています。日経平均の13週移動平均線からの上方かい離率は、10月末で15.13%も開いており、過熱感が高まっています。
【2】13週移動平均線からの下方かい離率が10%を超えたら短期「売られ過ぎ」の可能性
2024年8月・2025年4月に日経平均が暴落した時、下方かい離率はマイナス18%台まで広がり、テクニカルに「売られ過ぎ」となりました。その後、日経平均は急反発しました。
日経平均の移動平均線からのかい離率の長期推移
それでは、日経平均の13週移動平均線からのかい離の長期推移を見てみましょう。
<日経平均と13週移動平均線からのかい離率:2012年1月4日~2025年10月31日>
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成
上のグラフの「かい離率」をご覧ください。0%とプラス10%とマイナス10%に線を引いています。日経平均はかい離率マイナス10%からプラス10%の範囲にほとんど収まっていますが、たまに10%より上に出たり、下に出たりしています。
そこが、「過熱シグナル」「売られ過ぎシグナル」です。10%を超えてからすぐに反転するわけではありませんが、しばらくしてから相場反転が始まることがよくあります。
このように、移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られ過ぎ」の警戒シグナルとして有用です。ただし、実際にどう使うかは、難しいところです。以下2点に注意が必要です。
【1】かい離率が10%を超えたところから、相場が加速することもある
13週移動平均線のかい離率10%超えは、「過熱」「売られ過ぎ」の警戒シグナルとして有用ですが、10%超えですぐに売ると、大失敗することもあります。というのは、上方かい離率が10%を超えたところから上昇が加速してかい離率が20%近くまで拡大してから反落することもあるからです。
下方かい離率の見方も同じです。10%を超えたところから下落が加速することはよくあります。かい離率が何%まで拡大したら反転するという、一般的な法則はありません。
【2】かい離率10%超えはあくまでも短期的なシグナル
上方かい離率10%超えは、短期的に相場が過熱しているシグナルですが、あくまでも短期的なシグナルです。短期的に反落した後、さらに上昇トレンドが続くこともあります。例えば、2020年6月5日は、コロナ後の急反発で上方かい離率が16.6%まで拡大しました。その後、日経平均は一時反落しましたが、スピード調整を終えた後、さらに上昇トレンドが続きました。
もちろん、短期的な過熱シグナルから反落し、結局そこが大天井で、下降トレンドが始まるという例も過去にはあります。
移動平均線からのかい離は短期的な相場の動くスピードが速すぎることを示唆しているだけで、長期的なトレンドがどうなるかは、ファンダメンタルズの変化を見て判断する必要があります。
高市ラリー過熱、アベノミクス・ラリーと少し似ている
高市ラリーの過熱に、少し2013年5月のバーナンキ・ショック直前のアベノミクス・ラリーの過熱と似たところがあるのが気になります。
<日経平均と13週移動平均線:2012年末~2015年末>
出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成
2013年1月から5月にかけて、日経平均は急騰しました。二つの要因がありました。
【1】アベノミクス・ラリー:2012年末に発足した第2次安倍政権の経済政策への期待 【2】米国で大規模金融緩和が続くことへの期待:2008年のリーマンショック後、米国はなりふりかまわぬ大規模金融緩和をやって危機を乗り越えました。2013年時点で量的緩和第3弾(QE3)が続けられていました。
2013年5月には、一時日経平均の13週移動平均線からのかい離が20%まで拡大しました。10%を超えることもまれですが、20%のかい離はめったに起こることではありません。投機筋の先物買いによって、異常なまで、相場が世界中で過熱していました。
2013年5月に、バーナンキ・ショック【注】と呼ばれるショック安が起こりました。日経平均は高値から安値まで22%も急落しました。
【注】バーナンキ・ショック 2013年5月、当時FRB議長であったベン・バーナンキ氏が、「将来、金融緩和の縮小が必要になる」と発言したことを受けて、世界中で株が暴落しました。これをバーナンキ・ショックと言います。実際に、FRBは、その次の年、2014年の1月に量的金融緩和の縮小を始め、2014年10月に量的緩和を終了しました。
2013年中は、世界経済になんら悪材料はありませんでした。世界的に株が大きく上昇して、過熱感があったために、バーナンキ・ショックは大きな下落となりました。
高市ラリーも少し似ています。日経平均の13週移動平均線からのかい離は15%まで拡大しています。短期的には、ショック安が起こっても不思議のないところです。
日本株の投資判断
日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと判断しています。ただし、短期的には反落する可能性があることを意識した方が良いと思います。
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